
目次
まぶたのたるみは、加齢とともに進行していきます。
原因は、以下になります。
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眼窩脂肪(目の下の脂肪)の前方突出
- 眼窩内の脂肪は、本来「眼窩結合組織ネットワーク」によって支えられています。
- しかし、このネットワークが加齢によってゆるむと、上部の脂肪が下方へ移動し、下部の脂肪が前方に押し出されることで、クマが形成されます。
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眼窩隔膜(脂肪を支える膜)の菲薄化
- 眼窩隔膜は脂肪の前方突出を防ぐ最初のバリアです。
- 加齢とともにこの膜が薄くなることで、脂肪を支えきれなくなり、たるみが進行します。
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眼輪筋と皮膚の変化
- 眼輪筋は目の周りを囲む筋肉で、加齢とともに菲薄化(薄くなること)します。
- さらに、皮下組織の減少やコラーゲンの減少によって、皮膚のハリが失われることで、たるみが目立つようになります。
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骨の萎縮
- クマの下の骨が委縮して凹むことで、ふくらみが強調されるようになります。
たるみが少しずつ進行して気になり始めるのは、大体40歳前後からだと思います。
まずは、内服やマッサージなどで進行予防をしていただくのが良いかもしれません。
(内服やマッサージの詳細は、医療コラムの他の項目を参照ください。)。
しかし、たるみの進行を完全に遅らせることはできませんから、たるみの程度に応じて治療をした方がよいこともあります。
今回は、かつむらアイプラストクリニックで行っている年間1800件前後の手術の中から6例を選び、ダウンタイムの画像も含めた治療法の選択肢を解説していきます。
ご自身がどの例に似ているのか、イメージしながらお読みください。
①40代 皮膚のたるみが少ない場合
年齢 | 40代 |
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術前の悩み | 徐々にクマが目立つようになってきた |
治療法(術式) | 裏ハムラ+脂肪注入 |
施術の選択理由
- クマは軽度
- ご本人は、皮膚を切開する手術に抵抗がある
- ダウンタイムをなるべく短くしたい
→これらの理由により、皮膚を切開しない術式である裏ハムラを選択しました。 - 加齢(体質)によるほほ骨の凹みが少し目立つ
→凹みをカバーするため、脂肪注入も行いました。脂肪はおなかから吸引し、両側で3.8cc注入しています。
術後の経過
術後、結膜下出血が生じました。これは、術後にいきむと出ることがあります。
術後数日~3週間ほどで自然に消失します。点眼等の治療は必要ありません。
術後1週間。白目(結膜)の外側が内出血し赤くなっています。
ダウンタイム
術後1週間
全体的に腫れていますが、クマは改善しています。
術後3週間
腫れは9割ほど改善し、いわゆる「ダウンタイム」が終わった頃でしょうか。結膜下出血もほぼ消失しました。
術後5週間
わずかな腫れやむくみも無くなり、完成した状態です。
担当医からのアドバイス
40歳前後で皮膚のたるみが多くない場合は、皮膚を切らない、いわゆる「裏ハムラ」の適応があります。
しかし、ほほ骨の凹みが徐々に目立ってくる年齢でもありますので、よりきれいな結果を出すには、ほほ骨の凹みを改善させる「脂肪注入」も行った方が良い結果が出やすいです。
- 治療内容
- 下眼瞼形成術(経結膜)
- 治療期間・回数
- 術後6カ月で5~7回の通院(状態により変わります)
- 費用
- 両下眼瞼形成術(経結膜)44万円
- リスク・副作用
- 再手術、術後腫脹、睫毛内反、結膜浮腫など
②40代 40代でも表ハムラを行うことで、きれいな曲線を作れた場合
年齢 | 40代 |
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術前の悩み | クマが出てきたので気になる。できれば涙袋も欲しい。 |
治療法(術式) | 表ハムラ+脂肪注入 |
施術の選択理由
- 目の下のふくらみ(脂肪)は、それほど出ていないが、皮膚のたるみは進行し始めている。
→ 裏ハムラだと皮膚のたるみが残りそうなので、皮膚を切開する表ハムラを選択しました。 - ほほ骨の凹みがある。
→ できれば涙袋もほしいとのことで、脂肪注入までしっかりと行い、きれいな曲線を作るようプランしました。脂肪はおなかから吸引し、両側で2.0cc注入しています。
術後経過
明らかな合併症もなく、経過は良好でした。涙袋を強調するため眼輪筋弁をしっかり引っ張って固定するなど、表ハムラつまり「切る手術」だからこそできる工夫をしています。
ダウンタイム
術後1週間
腫れや内出血はそれなりにありますが、マスクで隠れる部分かと思います。
術後3週間
内出血(黄色いアザ)も薄くなり、目元の腫れも引いてきています。
術後6週間
腫れはほとんど引いてきていると思います。
術後2カ月
腫れは引き、涙袋もできています。
担当医からのアドバイス
世間的には「切らない手術」である裏ハムラが流行しています。
裏ハムラを推す先生は、表ハムラを以下のように述べ、患者さんにお勧めしません。
「ダウンタイムが長い」
「外反(まぶたが外を向く、いわゆる「あっかんベー状態」のリスクがある)」
しかし、裏ハムラは「逆さまつげ」のリスクがありますし、涙袋を作成するための「眼輪筋弁の引っ張り具合の調節」など、細かな部分を作りこむことができません。
私は、長期的にみると、40代以降の方は、皮膚を切開する「表ハムラ」をお勧めしています。
- 治療内容
- 下眼瞼形成術(経皮)+脂肪注入
- 治療期間・回数
- 術後6カ月で5~7回の通院(状態により変わります)
- 費用
- 下眼瞼形成術(経皮)+脂肪注入 66万円
- リスク・副作用
- 再手術、術後腫脹、眼瞼外反、結膜浮腫 など
③50代 皮膚のたるみが出てきているが、ほほ骨の凹みが少ない場合
年齢 | 50代 |
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術前の悩み | クマがお化粧でカバーできなくなってきた。 |
治療法(術式) | 表ハムラ |
施術の選択理由
- 目の下のふくらみ(脂肪)は、結構出ている。
- 皮膚のたるみも進行し始めている。
→ 裏ハムラだと皮膚のたるみが残りそうなので、皮膚を切開する表ハムラを選択しました。 - ほほ骨の凹みは強くない
→ 脂肪注入までは必要ない。
術後の経過
術後に白目のむくみ(結膜浮腫)が軽度認められましたが、術後1カ月程度で落ち着いています。
ダウンタイム
術後1週間
全体的に腫れていますが、それほど強くはありません。軽度の結膜浮腫を認めています。
術後3週間
わずかな腫れはありますが、ほとんど目立っていません。結膜浮腫もほぼ消失しています。傷あとも、かなり目立たなくなっていると思います。
術後6週間
腫れも無くなり、傷あともほとんど分からないと思います。
担当医からのアドバイス
裏ハムラでは皮膚のたるみが残りやすいため、私は40代半ば以上の方は表ハムラをお勧めしています。
たるんだ皮膚を切除し、他にもたるみを解消する手技を使用することで、きれいな涙袋もできました。
また、皆さんが一番気にされている「傷あと」も目立っていないのではないでしょうか?
- 治療内容
- 下眼瞼形成術(経皮)
- 治療期間・回数
- 術後6カ月で5~7回の通院(状態により変わります)
- 費用
- 下眼瞼形成術(経皮) 55万円
- リスク・副作用
- 再手術、術後腫脹、眼瞼外反、結膜浮腫など
④50代 目の下のふくらみが強く、ほほ骨の凹みもある場合
年齢 | 50代 |
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術前の悩み | 下まぶたのたるみが気になる。メイクでもカバーできない。 |
治療法(術式) | 表ハムラ+脂肪注入 |
施術の選択理由
- 皮膚が薄く、たるみを解消するには皮膚切除が必要
- 目の下のふくらみ(脂肪)が多い
→ 皮膚も切除できる表ハムラを選択しました。 - ほほ骨の凹みが少なくない
- 目の下のふくらみは多めで、表ハムラでの脂肪移動でほほ骨の凹みはある程度改善されそう。
→凹みをカバーするため、脂肪注入も行いました。脂肪はおなかから吸引し、両側で2.0cc注入しています。
術後の経過
特に明らかな合併症は起こらず、経過は順調でした。
ダウンタイム
術後1週間
腫れが目立ちます。
術後3週間
腫れはだいぶ引きましたが、傷あとが残っています。
術後6週間
腫れはほぼなくなりました。
術後3カ月
傷あとも目立たなくなりました。
担当医からのアドバイス
皮膚が薄い方は、皮膚のたるみが出やすいです。
そのため、加齢と共に皮膚のたるみが出るのが早く、「脱脂」「裏ハムラ」のように脂肪だけ取る手術だと、術後に、遅かれ早かれ皮膚にたるみが出ます。
そのため、皮膚のたるみも同時に切除できる「表ハムラ」をお勧めします。
また、個人的な印象として、皮膚が薄い方はほほ骨が凹んでいる方が少なくないと思います。
そのため、この方のように、脂肪注入も行うことをお勧めしています。
- 治療内容
- 下眼瞼形成術(経皮)+脂肪注入
- 治療期間・回数
- 術後6カ月で5~7回の通院(状態により変わります)
- 費用
- 下眼瞼形成術(経皮)+脂肪注入 66万円
- リスク・副作用
- 再手術、術後腫脹、眼瞼外反、結膜浮腫 など
⑤60代 目の下のふくらみは強くはないが、ほほ骨の凹みが強い場合
年齢 | 60代 |
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術前の悩み | 下まぶたのたるみ、クマが気になる。疲れた印象を持たれてしまう。 |
治療法(術式) | 表ハムラ+脂肪注入 |
施術の選択理由
- 皮膚が薄く、たるみを解消するには皮膚切除が必要
→ 皮膚も切除できる表ハムラを選択しました。 - ほほ骨の凹みが強い
- 目の下のふくらみは少なく、ハムラで目の下の脂肪を移動させても凹み部分が解消されづらいため、多めの脂肪注入が必要。
→凹みをカバーするため、脂肪注入も行いました。脂肪はおなかから吸引し、両側で3.8cc注入しています。
術後の経過
わずかな出血が続いていたため、術翌日に片側を再手術しました。それ以降の経過は順調でした
ダウンタイム
術後1週間
腫れや内出血があります。
術後3週間
腫れはだいぶ引きました。
術後6週間
傷あとはまだありますが、腫れはほとんどありません。
術後6週間
傷あともだいぶなじんできました。
担当医からのアドバイス
ひとくちに「クマ」といっても、様々なタイプがあります。
この方のように彫りが深めの、いわゆる「奥目」の方は、どちらかというと「下まぶたのふくらみを取る」というよりも、「ほほ骨の凹みを改善する」という方が大事です。
表ハムラだけでは改善しないため、脂肪注入は必須だと思います。
- 治療内容
- 下眼瞼形成術(経皮)+脂肪注入
- 治療期間・回数
- 術後6カ月で5~7回の通院(状態により変わります)
- 費用
- 下眼瞼形成術(経皮)+脂肪注入 66万円
- リスク・副作用
- 再手術、術後腫脹、眼瞼外反、結膜浮腫 など
⑥70代 目の下のふくらみも、ほほ骨の凹みも強い場合
年齢 | 70代 |
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術前の悩み | クマが気になる。加齢によるたるみを何とかしたい。 |
治療法(術式) | 表ハムラ+脂肪注入 |
施術の選択理由
- 皮膚が薄くたるみも強いので、皮膚切除も必要
- たるみが強いので、眼輪筋弁を作成ししっかりと引き上げることが必要
→ 皮膚も切除できる表ハムラを選択しました。 - ほほ骨の凹みが強い
- 目の下のふくらみが多く、ハムラによる脂肪移動でほほ骨の凹みはある程度解消されそうなため、おなかからの脂肪はそれほど多くは必要なさそう。
→凹みをカバーするため、脂肪注入も行いました。脂肪はおなかから吸引し、両側で2.0cc注入しています。
術後の経過
たるみの改善目的に様々な工夫をしたため、術後の腫れは若干強めでしたが、術後3週間でかなり落ち着き、最後はしっかりきれいになったと思います。
ダウンタイム
術後1週間
腫れが強く内出血もしっかり出ています。
術後3週間
腫れや内出血がだいぶ引きました。
術後6週間
傷あとはまだありますが、腫れなどはほとんど引きました。
術後3カ月
完成形といってよいくらいになりました。
担当医からのアドバイス
70代になるとたるみやほほ骨の凹みが強いので、表ハムラ+脂肪注入は必須です。
その中でも、おなか(もしくは太もも)の脂肪をどれくらい注入すればよいか、というのが、きれいなまぶたを作るキーポイントになります。
多すぎても少なすぎても良くありません。
若い方の手術に比べて、繊細な調整が必要になるのがシニアの手術です。
- 治療内容
- 下眼瞼形成術(経皮)+脂肪注入
- 治療期間・回数
- 術後6カ月で5~7回の通院(状態により変わります)
- 費用
- 下眼瞼形成術(経皮)+脂肪注入 66万円
- リスク・副作用
- 再手術、術後腫脹、眼瞼外反、結膜浮腫 など
まとめ
当院では、すべての手術において手術用顕微鏡を使用し、「明日の満足より、3年後の美しさを」を目指し、正しい手術を丁寧に行っています。
下まぶたのたるみ(クマ)が気になる方は、一度ご相談ください。