
目次
〜下まぶたのたるみ(クマ)治療のリスク・注意点と正しい受け方〜
「目の下のクマが気になる」
「疲れて見られるのをなんとかしたい」
「ヒアルロン酸で手軽にクマが消えるって聞いたけど、大丈夫…?」
そんなお悩みをお持ちの方へ。
下まぶたのたるみ(クマ)=Tear Trough(ティアトラフ)は、ヒアルロン酸注入で自然にふくらみを補うことで、若々しく見せることができる治療法として注目されています。
しかしその一方で、SNSなどでは見えにくいリスクや、数か月後に起こりうるトラブルも存在します。
この記事では、最新の医学レビュー論文をもとに、「下まぶたのたるみ(クマ)へのヒアルロン酸注入を後悔しないための知識」を、専門クリニックの立場からお伝えします。
「Tear Trough(ティアトラフ)」とは?
Tear Troughとは、目頭の下から頬にかけて伸びる“目の下のくぼみ”のこと。
加齢とともに皮膚が薄くなり、脂肪が減少し、骨の形が目立ちやすくなります。
これが「影クマ」「黒クマ」の原因となり、実年齢より老けて見える原因にも。
見た目に加え、以下のような症状で悩まれる方が多いです
- 「常に疲れて見える」
- 「朝はマシだけど、午後になるとくっきり影が出る」
- 「化粧で隠れない」
- 「左右差が気になる」
このくぼみにヒアルロン酸を注入してふくらみを持たせることで、影が薄くなり、若々しく健康的な印象を取り戻すことができます。
「涙袋」との違いに注意!
混同されやすいのが、“涙袋”と“Tear Trough(クマ)”。
涙袋は笑ったときに下まぶたがふっくらと盛り上がる「可愛らしさの象徴」ですが、Tear Troughはそのすぐ下、目の下の骨のくぼみ部分です。
涙袋への注入と、ティアトラフへの注入では、狙う層・治療目的・リスクすべてが異なります。
美容に詳しい医師であっても、目元の解剖を熟知していないと判断が難しい領域です。
知っておきたい“遅発性合併症”
「注入直後は満足。でも、数か月後に片目だけふくらみが…」
「突然、涙袋の下にしこりのようなものが出てきた…」
「注入したことを忘れたころに、腫れやむくみが…」
こうしたトラブルの多くは、“遅発性合併症”と呼ばれるもの。
注入直後ではなく、数週間〜数ヶ月経ってから突然起こるため、気づかない方も少なくありません。
主な遅発性トラブル
報告されている発生率は全体の約3〜4%といわれていますが、決してゼロではなく、“だれでも起こりうる”という認識が必要です。
ヒアルロン酸ならどこでやっても同じ?
そう思ってしまうのは無理もありません。
最近は美容皮膚科などで気軽に受けられる印象もあります。
しかし、Tear Troughは非常に繊細でリスクの高い部位です。
その理由は…
- 眼窩動脈・神経が集中する「危険エリア」
- 万が一血管内に注入すると失明や脳梗塞のリスクも
- 解剖学的構造が個人差大=“万人に同じ治療”は通用しない
特に視神経に近い場所への誤注入は一生に関わるリスクを伴います。
信頼できる医師のもとで、構造をしっかり把握したうえで行うことが必須です。
どんなときに“注入NG”なの?
すべてのクマがヒアルロン酸で改善できるわけではありません。
以下に当てはまる方は、注入より他の治療が適している場合もあります。
注入が適さないケース
- 下まぶたの脂肪が大きく前に出ている(=“たるみ”が強い)
- 涙袋と下まぶたのたるみ(クマ)が混在し、形が複雑
- 過去に眼瞼手術(脱脂・ハムラなど)を受けたことがある
- アレルギー・結膜炎・ドライアイなど慢性眼症状がある
- 「即効性」を過度に求めている(仕上がりは2週間ほどかけて落ち着きます)
こうした場合には、ハムラ法・裏ハムラ法などの手術、あるいはレーザー治療との併用を検討することになります。
安心して受けるためのポイント3つ
-
眼球の状態を診断できる医師を選ぶ
眼形成外科・眼科などのバックグラウンドがある医師が理想です。
「注入すべきか、手術が適しているか」を総合的に診断してくれる医師こそ信頼できます。 -
使用するヒアルロン酸と溶解剤の常備を確認
製剤は信頼できるメーカーの正規品か?
万が一のトラブル時に備えてヒアルロニダーゼ(溶解剤)を常備しているかも要チェックです。 -
治療後のサポート体制も重要
施術後に腫れや左右差が気になるとき、どこまで対応してくれるのか?
リタッチの有無、医師による再診の頻度など、アフターケアも治療の一部と考えましょう。
かつむらアイプラストクリニックのスタンス
当院では、構造的な診断+安全な施術+キレイな仕上がりを大切にしています。
- 施術前には「注入の必要があるか?」からしっかり検討
- 眼形成外科の専門知識で、ヒアルロン酸と手術の両面から最適なご提案
- 万が一の腫れや違和感にもすぐ対応できる体制
「ヒアルロン酸が向いていない」と判断した場合には、はっきりとその旨をお伝えするのも、私たち専門医師の責任だと考えています。
最後に:本当に大切なのは「納得して受けること」
下まぶたのたるみ(クマ)へのヒアルロン酸注入は、確かに手軽でダウンタイムも短く、魅力的な選択肢です。
しかし一方で、目元というデリケートな場所だからこそ、「誰が、どこに、どう入れるか」が仕上がりと安全性を左右します。
「とりあえずヒアルロン酸で…」という気持ちのまま治療を受けてしまうと、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔してしまうことも。
だからこそ——
まずは一度、目元の構造とリスクを理解した専門医に相談してみてください。
かつむらアイプラストクリニックでは、下まぶたのたるみ(クマ)治療カウンセリングを丁寧に行っています。
美容だけでなく、機能や将来のリスクもふまえて、あなたにとって最善の選択をご提案します。
参考文献
Lily Nguyen Trinh et al: Delayed Complications following Dermal Filler for Tear Trough Augmentation: A Systematic Review. Facial Plast Surg. 2022 Jun;38(3):250-259.