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切る?切らない?おすすめのクマ取り手術法とは?ハムラ法などの術式のメリットとデメリットを、まぶたの専門医師が解説します。
まぶたの手術と涙の治療を専門とし、2021年9月に浦和で開院した「かつむらアイプラストクリニック」。
開院3年目は2000件を超える手術と向き合いましたが、その中でも増えているのが、下まぶたのたるみ取り、いわゆる「クマ取り手術」「脱脂手術」と呼ばれる手術です。
大手美容チェーンが火付け役となりブームをけん引しており手術の認知度が高まっているようで、当院を受診される患者さんの中にも「かつむらアイプラストクリニックでクマ取り手術を受けたい」という方が多数来院されます。
しかし、弊害も見られるようになっています。
- クマ取り手術を受けたけど、まぶたのたるみが残っている
- 脂肪だけ取られ、まぶたの凹みが目立つようになった
- 手術を受けて眼球にトラブルが生じ、術者に相談したところ『眼科に行ってくれ』と言われた
こんな相談が後を絶ちません。
クマ取り手術の現在の主流は、皮膚を切らない、通称「裏ハムラ」と呼ばれる術式です。 この術式は、「皮膚を切らない」「腫れが少ない」というポイントから、多くの施設(特に大手チェーンクリニック)で行われています。
確かに良い面もある術式です。 しかし、デメリットもいくつかあります。 そのため、当院では、本当に向いている方のみ「裏ハムラ」をおすすめしています。
「他のクリニックで説明を受けたが、どの手術法が良いのか分からない」
そういった声に応えるため、そして、1回目の手術をきちんとしたクリニックで受ける方が増えるよう、今回は、それぞれの術式のメリットデメリットをお伝えします。
なお、当院では、レーザーやヒアルロン酸など、手術以外の治療法も行っておりますが、クマ(たるみ)が軽度の方のみお勧めしています。
詳細はこちらをご覧ください。
下まぶたのたるみ取り(クマ取り)手術の術式はいくつあるのか?
巷では「○○式たるみ取り」のように、あたかも自分の術式が「他と違うオリジナルの術式です」と謳っている場合が少なくありません。
しかし、細かな部分が違っていたとしても、下まぶたのたるみ取り(クマ取り)手術は以下の3つに分けることができます。
- 脂肪を取るのみの「脱脂」
- 脂肪を移動させる、いわゆる「ハムラ」
- おなかや太ももから脂肪を採取して注入する、「脂肪注入」
一つずつ説明していきます。
脱脂
眼球は脂肪に囲まれており、脂肪は、眼球を守るクッション材として働いています。
この脂肪は「眼窩脂肪」といいます。
皮膚や眼窩隔膜などの「壁」により、通常眼窩脂肪は前に出てこないようになっています。
しかし、加齢によりこれらの「壁」がゆるんでくると、眼窩脂肪が前に押し出され、下まぶたが膨らみます。これが「クマ(下まぶたのたるみ)」の正体です。
そして、この、膨らんだ(たるんだ)眼窩脂肪を減量し、膨らみ(たるみ)を目立たなくするのが「脱脂(だっし)」です。
手術時間が短めで、術後の腫れが他の術式より少ないのがメリットです。
しかし、デメリットも少なくありません。
例えば、この手術は脂肪を切除するのみであるため、靭帯のゆるみを改善させることはできません。
また、下まぶたのたるみ(クマ)の大きな原因である「骨の萎縮」を改善させることも出来ません。
「骨の萎縮」とは?
「骨の萎縮」とは、ほほ骨が加齢とともに萎縮し凹んでくることを指します。
そして、骨の萎縮によりたるみ(クマ)がより一層顕著になり、目立つようになります。
脱脂は、目もとのふくらみを凹ませることはできますが、脂肪を取るだけの手術のため、ほほ骨の凹みを治すことはできません。
そのため、脱脂は、骨の萎縮が少なくかつ靭帯のゆるみも少ない30代前半までの方くらいにしかお勧めしておりません。
そして、「骨の萎縮」を治療するのが、おなかや太ももから脂肪を採取して注入する、「脂肪注入」です。
脂肪注入
脂肪注入は、おなかや太ももに3mmほどの穴を開け、そこから脂肪を液体状にして採取し、精製した後に凹んだ部分に注入します。
つまり、凹みを自分の脂肪で改善させます。
メリットは、脂肪を採取する場所も注入する場所も針穴の傷だけで済むため、傷あとが目立たないことです(顔に傷あとが残ることは、ほぼありません)。
デメリットは、脂肪の定着量は約半分。つまり、半分は無くなってしまいます。
また、脂肪が一時的に硬くなることや、場合によっては石灰化することもあるようですが、臨床的に問題となることは非常に少ないと考えています。
そして、脂肪注入のみでは目もとの膨らみ部分を改善させることができず、いわゆる「over filled syndrome(入れすぎて顔が全体的にパンパンな状態)」になってしまいます。
さらに、脂肪注入は、脱脂同様靭帯のゆるみを治療することはできません。
そのため、脂肪注入は、脱脂や、以下に記す、靭帯のゆるみも治療できる「ハムラ法」といわれる手術法と組み合わせて治療に用いられることがほとんどです。
ハムラ法
ハムラ法は、目もとの膨らんだ部分の脂肪をほほ骨の萎縮により凹んだ部分に移動させる術式です。その際、ゆるんだ靭帯を切り、靭帯のゆるみも治療できます。
ハムラ法のメリットは、以下を同時に行えることです。
- 目もとの膨らんだ部分の脂肪を減量
- ほほ骨の萎縮による凹みを改善させる
- 靭帯のゆるみを治す
つまり、靭帯のゆるみがない20~30代の方でしたら脱脂でも良いかと思いますが、靭帯や皮膚のたるみがある40代以降の方はハムラ法をお勧めします。
さらに、ハムラ法でも、皮膚を切らない「裏ハムラ」と皮膚を切る「表ハムラ」があります。
裏ハムラ
裏ハムラには、「皮膚を切らないため、皮膚に傷がつかない」というメリットがあります。
また、表ハムラは術後に外反(あっかんベー状態になること)する場合がありますが、裏ハムラは外反しないメリットもあります。
これらの点を強調し、裏ハムラをメインの手術にしているクリニックは少なくなりません。
しかし、裏ハムラは皮膚を切開しないため、皮膚のたるみは残ります。
追加で皮膚切除をすることも出来ますが、その際には皮膚に傷あとが残りますので、表ハムラと同じ傷あとになります。
また、外反はしませんが内反(逆さまつげ)になることがあります。
そして、裏ハムラは術者にとって視野が狭いため、表ハムラ(次にお話しします)より細かなところまで作業することができません。
以上より、「どうしても皮膚を切りたくない30代の方」に裏ハムラをおすすめしています。
表ハムラ
まつ毛の下の皮膚を切開し、眼窩脂肪を移動する術式です。
皮膚を切りますし、手術時間も長め(当院では、約2時間半)です。
「まぶたが外反する(あっかんベー状態になることがある)」「腫れる」「皮膚に傷あとが残る」等、表ハムラのデメリットを並べて裏ハムラをおすすめしているクリニックも一部にありますが、しっかりとした手術をすればこれらのデメリットを予防することはできます。
また、術者にとって視野が広く繊細な手術が可能なため、他の術式では得られない素晴らしい結果をもたらすことができます。
以上より当院では、たるみが強くなってくる40代以降の方には基本的に表ハムラをおすすめしています。
最後に、裏ハムラと表ハムラの比較表を載せておきます。
当院での術式
上記をまとめると、以下になります。
※横スクロールできます。
術式 | メリット | デメリット |
---|---|---|
脱脂 |
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脂肪注入 |
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裏ハムラ |
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表ハムラ |
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そして、それぞれの術式に向いている方は、以下の通りです。
- 脱脂:30代前半までの方で、目もとのふくらみが強くほほ骨がしっかりしている方。
- 脂肪注入:ほほ骨の萎縮が強く、脱脂やハムラ法をしただけでは凹みが改善しない方。
- 裏ハムラ:どうしても皮膚を切りたくない30代の方。
- 表ハムラ:40代以降のたるみが気になる方。
つまり、当院ではほとんどの患者さんに表ハムラをすすめ、ほほ骨の萎縮が強い方は表ハムラ+脂肪注入をおすすめしています。
最後に
他の美容外科と比べた当院の特徴は、以下になろうかと思います。
- 20~30代の若年者ではない、40代以降の患者様の割合が多い。
- 短時間で終わり手術直後のことしか考えていない術式ではなく、長期的に考え、患者様・にとって最も良い手術をおすすめしている。
他のクリニックとはお話の内容が違い戸惑ってしまうかもしれませんが、私は長期的な、機能面審美面の両面から見た治療を行っております。
ご興味がありましたら、当院へお問い合わせください。