
「眼瞼下垂の手術を受けると、目元がすっきりするのは分かるけど、下まぶたにも影響が出るの?」
「上まぶたの手術をするだけで大丈夫?下まぶたのたるみも一緒に治したほうがいいの?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
実は、眼瞼下垂手術は上まぶただけでなく、下まぶたの位置や形にも影響を与えることが研究で明らかになっています。
特に、手術後に「下まぶたが持ち上がる」「目の縦幅が狭くなった」「目元の印象が変わった」と感じる方もいらっしゃいます。
そこで今回は、眼瞼下垂手術と下まぶたの位置の関係について詳しく解説し、適切な手術の選択肢について考えていきます。
1. 眼瞼下垂手術とは?
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眼瞼下垂とは
眼瞼下垂(がんけんかすい)とは、まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)の機能が低下し、目が十分に開かなくなる状態のことです。
原因はさまざまですが、主に加齢、コンタクトレンズの長期使用、遺伝などが関与します。症状としては、次のようなものが挙げられます。
- 目が開きづらくなる
- まぶたの重さを感じる
- おでこにシワが寄る(額の筋肉でまぶたを持ち上げようとするため)
- 視界が狭くなり、物が見えづらい
このような症状を改善するために行われるのが眼瞼下垂の手術です。
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眼瞼下垂手術の種類
眼瞼下垂の手術にはいくつかの方法がありますが、主に以下の2つがよく行われます。挙筋腱膜前転術
(LAA:Levator Aponeurosis Advancement)伸びた腱膜を短縮し、まぶたを適切な高さに調整する手術。
→ しっかりとした効果が期待でき、術後の安定性が高い。ミュラー筋
タッキング
(EMMT:External Müller’s Muscle Tucking)ミュラー筋を短縮して固定し、まぶたの開きを改善する手術。
→ 手術時間が短く、ダウンタイムが比較的少ない。どちらの手術も、上まぶたの開きを改善し、視界を広げることが目的ですが、実は 下まぶたの位置にも影響を与えることが分かっています。
2. 眼瞼下垂手術後に「下まぶたの位置」が変わる理由
眼瞼下垂手術を受けた後、下まぶたの位置が上がる(MRD2の短縮)ことが研究で明らかになっています。
MRD2とは?
「MRD2(Marginal Reflex Distance 2)」とは、瞳孔の反射光点から下まぶたの縁までの距離のことを指します。
この距離が短くなると、下まぶたが上がる(リバース眼瞼下垂)状態になります。
なぜこのような変化が起こるのでしょうか?
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上まぶたの手術が下まぶたに影響を与える
上まぶたと下まぶたは密接に連携しており、上まぶたを大きく持ち上げると、下まぶたがそれに追従して持ち上がることがあります。
また、手術によって眼輪筋(まぶたを閉じる筋肉)のバランスが変わることで、下まぶたの位置が変化することも報告されています。 -
リバース眼瞼下垂(Reverse Ptosis)
眼瞼下垂の手術後、下まぶたの位置が意図せず上がりすぎてしまう状態を「リバース眼瞼下垂」といいます。
この状態になると、目の縦幅が狭く見えたり、涙の流れが悪くなったりすることがあります。リバース眼瞼下垂の原因
- 眼輪筋のバランス変化
- まぶたの腫れや組織の癒着
- 皮膚の収縮や硬化
このような変化を予防するために、下まぶたの調整手術を併用する場合があります。
3. 眼瞼下垂手術と「下まぶたの手術」を併用するケース
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ハムラ法(Hamra法)
ハムラ法は、下まぶたの脂肪を適切に移動させ、目の下のたるみやクマを改善する手術です。
眼瞼下垂の手術と同時に行うことで、目の下の老化も一緒に改善できます。適している人
- 目の下の膨らみやクマが気になる
- 目元を若々しく見せたい
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眼瞼外反の治療
眼瞼外反とは、下まぶたが外側に反り返る状態です。
眼瞼下垂手術でまぶたの開きが大きくなると、下まぶたが緩み、外反しやすくなることがあります。
この場合、canthoplasty(下まぶたの引き締め手術)を併用することで、バランスの取れた目元を作ることができます。適している人
- 下まぶたのゆるみが気になる
- 目の開きを整えたい
4. まとめ
- 眼瞼下垂手術後、下まぶたの位置が変わることがある
- 上まぶたの手術で下まぶたが上がる「リバース眼瞼下垂」が発生することも
- 下まぶたのたるみや外反が気になる場合、ハムラ法やcanthoplastyを併用するのがおすすめ
かつむらアイプラストクリニックでは、患者様一人ひとりに最適な目元の治療をご提案しています。
目元のお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- Joohyun Kim et al: Intraoperative Significance of Lower Eyelid Positions in Levator Advancement to Prevent Overcorrection. J Craniofac Surg. 2022 Jul-Aug;33(5):1563-1565
- Kim J et al: Changes in Lower Eyelid Positions After Blepharoplasty and Levator Advancement Surgery. J Craniofac Surg. [IF: 1.05], 2022 Sep 1;33(6):e626-e628.
- Park J et al: The Effect of Upper Aging Blepharoplasty on Upper and Lower Eyelid Position. J Craniofac Surg. [IF: 1.05], 2018 May;29(3):747-750.