一重の方を二重にするには、この「穿通枝」を作成する必要があります。
この「穿通枝」を作成する手術が、いわゆる「二重整形(二重切開)」手術です。
筋肉を作り出すことはできないため、糸で「前葉」と「後葉」を縫い合わせて「穿通枝」を作成して「前葉」と「後葉」を一体化させます。
術式ですが、皮膚を切開しない「埋没法」と皮膚を切開する「切開法」の2つに分けることができ、糸をかける位置によりさらに細かく分類されます。
埋没法
埋没法は、皮膚を大きく切開せずにまぶたの中に糸を入れることで前葉と後葉を一体化させて二重を作成する術式です。
一旦外に出た糸も最終的には皮膚の中に埋め込まれ外からは見えません。
そして、入れる糸の本数により、それぞれ「2点留め」「3点留め」「4点留め」と呼ばれます。
「当院オリジナルの○○埋没法」とうたっているクリニックは少なくありませんが、基本は上記のやり方をわずかに変えたものです。
糸を入れる本数が多いと、持続力が増えますが術後の腫れも増えます(一本の糸で4点留めを行う術式もありますが、持続力や術後の腫れが変わることはありません)。
また、糸を通す位置により「瞼板法」と「挙筋法」に分けることができます。
「瞼板法」は瞼板に、「挙筋法」は挙筋腱膜やミュラー筋に糸を通します。
これらの特徴ですが、以下になります。
挙筋法 |
挙筋腱膜やミュラー筋の動きが悪くなり眼瞼下垂になるリスクはあるが、眼球を傷つけにくい。 |
瞼板法 |
眼瞼下垂になるリスクは高くないが、眼球を傷つけるリスクは高くなる。 |
切開法
文字通り皮膚を切開し前葉と後葉をつなげる穿通枝を糸で作成して二重をつくります。
糸をかける場所ですが、「前葉」と「後葉」でそれぞれ選択肢があります。
- 前葉:a. 皮膚 b. 真皮
- 後葉:α.挙筋腱膜 β.瞼板 γ.眼窩隔膜
これらの組み合わせ、つまりざっくりいうと約6通りの作成方法があります。
前葉、後葉それぞれに糸をかける場所による分類とそれぞれのメリットとデメリットを以下に記していきます。
前葉への糸をかける場所による分類
a.皮膚(外縫い)
皮膚を縫う際に後葉の一部を一緒に縫い、二重を作成する術式です。
通称「外縫い」といいます。
外縫いの特徴は、以下になります。
メリット |
デメリット |
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- 二重がとれやすい
- まつげの向きをコントロールできない
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b.真皮(内縫い)
前葉である真皮と後葉の縫合とは別に皮膚を縫合します。
通称「内縫い」といいますが、正式な術式名はHotz変法(ホッツへんぽう)です。
内縫いの特徴は、以下になります。
メリット |
デメリット |
- 二重が取れづらい
- 挙筋腱膜に糸をかける際に糸をかける位置を調節してまつげの向きや二重のくい込みの強さを(ある程度は)調節できる。
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- くい込みが強くなりやすい
- 丁寧な手術が必要で、手術時間が長い
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後葉への糸をかける場所による分類
α:挙筋腱膜
天然の二重も、挙筋腱膜から伸びた「穿通枝(筋肉の枝)」が皮膚に付いているため、解剖学的には最も自然に近い方法です。二重を作成する前に挙筋腱膜を瞼板と縫合して固定するため、いわゆる「眼瞼下垂手術(挙筋腱膜前転術)」と全く同じ術式になります。
メリット |
デメリット |
- まぶたの開きを良くすることができるため、目力をつけることができる。
- 眼瞼下垂の治療も可能
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- 挙筋腱膜やミュラー筋を瞼板と縫い合わせて固定する必要があるため、時間がかかる。
- 挙筋腱膜やミュラー筋などまぶたを上げる筋肉を調整するために、まぶたの開きに左右差が出ることもある。
- 筋肉を操作するため、術後の腫れが強めに出る。
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β:瞼板
挙筋腱膜やミュラー筋とくっついているまぶたの縁の硬い板「瞼板」と縫合します。
メリット |
デメリット |
- 二重が取れづらい
- くい込みが弱め(埋没法よりはくい込みが強めになります)
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γ:眼窩隔膜
眼窩隔膜とは、挙筋腱膜が瞼板近くで折れ返り膜状になった構造物のことを指します。
以上の内容を表にすると、以下のようになります。
私が二重切開(二重整形)で用いている術式とは
糸をかける場所によりそれぞれ特徴がありますが、どのやり方が良いのでしょうか?
私が最も大事にしているポイントは、「二重が取れづらいかどうか」です。
天然の二重は、穿通枝が挙筋腱膜の枝、つまり筋肉であり伸び縮みするためにまぶたを開けた時だけ適度に皮膚(前葉)が引き込まれます。
一方、手術で作成した二重ですが、手術した部分は術後に瘢痕となり硬くなるため、手術で作成した穿通枝(前葉と後葉のつながり)は伸び縮みしません。
そのため、手術で作成する二重は、引き込まれる力が強い、つまり、長持ちする二重ほどくい込みが強くなります。
この、いわゆる「くい込み」に対し、非常にマイナスな印象を持っている方が少なくありません。
しかし、先程の「くい込み」ができる原理から考えると、くい込みを弱くしたい場合は、二重の固定力を弱くする、つまり取れやすい二重をわざと作る必要があります。
いくら手術直後は良い二重が作れても、長期的にみると、取れやすい二重は全く患者様のためになりません。
その中でも、
以上より、当院で行っている二重の術式は、以下の2つです。
- しっかり長持ちする二重にしたい方やまぶたの開きを改善させたい方
→ b-α:真皮と挙筋腱膜に糸をかける術式(=眼瞼下垂手術)
- くい込みを少しでも弱くしたい方
→ b-β. 真皮と瞼板に糸をかける術式
「どうしてもくい込みを弱くしたい」という希望の方には、取れる可能性を十分にお伝えした上で、くい込みが弱くなる「a-α. 皮膚―挙筋腱膜」「b-ɤ. 真皮―眼窩隔膜」の方法で二重を作成しています。