
「目の下のふくらみが気になって、クマ取りを調べていたら『ハムラ法』という言葉が出てきた」「脱脂とハムラ法は何が違うの?」——そう感じている方も多いのではないでしょうか。
目の下の治療は術式の名前が多く、しかも「表ハムラ」「裏ハムラ」「脱脂」「脂肪注入」と似た言葉が並ぶため、混乱しやすい分野です。この記事では、JR浦和駅西口で眼形成を専門とするかつむらアイプラストクリニックの院長・勝村宇博が、「ハムラ法とはそもそも何をする手術なのか」に絞って解説します。
当院は眼瞼下垂やクマ取りなど、まぶたの手術と年間2000件前後向き合っており、すべての手術を手術用顕微鏡下で行っています。術式の違いを正しく理解したうえで、ご自身に合う治療を選ぶための参考にしていただければ幸いです。
ハムラ法とは?

ハムラ法とは、目の下のふくらみの原因である眼窩脂肪(がんかしぼう)を切り取るのではなく、下方のくぼみに移動させて固定する手術です。ふくらみを減らすと同時に、その下にある「くぼみ」を埋めることで、目の下の段差をなだらかにします。
「眼窩脂肪を取らずにくぼみへ滑らせて移動する」という考え方を最初に報告したのは、ブラジルの形成外科医 Raul Loeb 医師で、1981年に「fat pad sliding(脂肪の移動術)」として発表しています¹。その後、1995年にアメリカの形成外科医 Sam T. Hamra 医師が、眼窩縁の靭帯(arcus marginalis)を解除して脂肪を温存・再配置する術式を体系化して報告し²、この術式が世界的に広まりました。それまでの下まぶたの手術は「余った脂肪を取り除く」ことが主流でしたが、Hamra 医師は脂肪を取りすぎると目の下がくぼみ、かえって疲れた印象になることを指摘しています。
日本では Hamra 医師の名前をとってこの術式が「ハムラ法」と呼ばれ、現在では下まぶたの手術の代表的な選択肢のひとつになっています。正式には「下眼瞼形成術」に含まれる術式で、皮膚側から行う表ハムラ(経皮的下眼瞼形成術)と、まぶたの裏側から行う裏ハムラ(経結膜的下眼瞼形成術)の2つに分かれます。
なぜ脂肪を「取る」のではなく「移動」するのか?

目の下のふくらみとくぼみは、実は同じ構造変化から生まれています。眼球を支えている眼窩脂肪が、加齢などで隔膜(脂肪を押さえている膜)がゆるむことで前方に押し出され、これが「ふくらみ」になります。一方、そのすぐ下では骨のふち(眼窩縁)に沿って靭帯が皮膚を引き込んでおり、ここが「くぼみ(涙袋の下の溝)」として影を作ります。
つまり目の下のクマは、「ふくらみ」と「くぼみ」の高低差が影を生んでいる状態です。脂肪を取るだけの手術(脱脂)はふくらみを減らせますが、くぼみはそのまま残ります。もともとくぼみが目立つ方や、皮膚が薄くなり始めた30代後半以降の方では、脱脂だけでは段差が十分に改善しないことがあります。
ハムラ法は、押し出された脂肪をくぼみの側へ移動して固定することで、「山を削る」のではなく「山の土を谷に移す」ような考え方で高低差をならします。脂肪を温存するため、術後に目の下がくぼんで見えるリスクを抑えられる点が、脱脂との最も大きな違いです。
脂肪の移動先(骨膜の上か下か)については複数の方法が報告されていますが、いずれも眼窩脂肪をくぼみに再配置するという原理は共通しています³⁴。
表ハムラと裏ハムラの違いは?

どちらも「脂肪を移動する」点は同じで、違いはどこから切開してアプローチするかです。
| 表ハムラ (経皮的下眼瞼形成術) |
裏ハムラ (経結膜的下眼瞼形成術) |
|
|---|---|---|
| 切開する場所 | 下まつ毛のすぐ下の皮膚 | まぶたの裏側(結膜) |
| 皮膚のたるみ | 余分な皮膚を切除できる | 改善できない |
| 眼窩脂肪の移動 | できる | できる |
| 視野の取りやすさ | 広く確保しやすい | 限られる |
| 腫れの程度 | やや多め | 少なめ |
| 皮膚の傷跡 | 下まつ毛の際に残る(数ヶ月かけて目立たなくなっていくが個人差あり) | 表面にはない |
| 向いている方 | 皮膚のたるみもある方、仕上がりを重視する方 | 皮膚のたるみが少ない比較的若い方 |
裏ハムラ(経結膜的下眼瞼形成術)は皮膚を切らないため腫れが少なく、ダウンタイムを短くしたい方には魅力的です。ただし皮膚のたるみ自体は改善できないため、たるみがある方に行うと、脂肪が減った分だけ皮膚の余りが目立つことがあります。
表ハムラ(経皮的下眼瞼形成術)は下まつ毛の際を切開するため視野を取りやすく、脂肪の移動・靭帯の処理・皮膚の切除を一度に行うことができます。当院では、皮膚のたるみを伴う方や、仕上がりのきれいさを重視される方には表ハムラをおすすめしています。表ハムラの術後経過については、クマ取り手術のダウンタイムを解説した記事で詳しく紹介しています。
ハムラ法が向いている人・向いていない人は?
目の下のクマ・たるみの原因は大きく3つに分けられます。①皮膚や眼窩隔膜・靭帯のゆるみ、②眼窩脂肪の前方への突出、③骨の萎縮(ほほ骨のくぼみ)です。どの原因が強いかによって、適した術式が変わります。
| 主な原因 | 脱脂 | 裏ハムラ | 表ハムラ |
|---|---|---|---|
| ②脂肪の突出のみ | ◎ | ○ | ○ |
| ②脂肪の突出+くぼみ | △ | ◎ | ◎ |
| ①皮膚のたるみを伴う | × | × | ◎ |
| ③骨の萎縮が強い | × | △(脂肪注入の併用を検討) | △(脂肪注入の併用を検討) |
ハムラ法が向いているのは、ふくらみとくぼみの両方がある方です。特に「脂肪を取ったら目の下がくぼみそう」と心配される方や、涙袋の下に溝ができ始めた方には、脂肪を温存できるハムラ法が適しています。
一方、20〜30代前半で皮膚のたるみもくぼみもほとんどなく、単純にふくらみだけが気になる方であれば、脱脂で十分なことも多いです。また、骨の萎縮が強く、頬全体がこけている方の場合、移動できる脂肪の量には限りがあるため、ハムラ法だけでは改善しきれないことがあります。
これらは診察で目の下を実際に触れ、写真撮影を行ったうえで判断します。術式ごとの違いは目の下のたるみ取り手術の種類を解説した記事でも紹介しています。術式に優劣があるわけではなく、「その方の原因に合っているかどうか」がすべてです。
脂肪注入との違い・併用はできる?

ハムラ法と脂肪注入は、どちらも「くぼみを埋める」目的で語られるため混同されがちですが、まったく別の手術です。ハムラ法はもともと目の下にある脂肪を移動する手術で、脂肪注入は太ももやお腹など別の場所から採取した脂肪を足す手術です。
「表ハムラ=脂肪注入も含む」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。表ハムラ(経皮的下眼瞼形成術)は脂肪の移動と皮膚の切除までであり、脂肪注入は必要に応じて同時に行う追加施術です。
脂肪注入を併用するのは、原因③の骨の萎縮が強く、移動できる眼窩脂肪だけではくぼみを埋めきれない場合です。注入した脂肪の生着率は30〜80%程度と報告に幅があり⁵⁶、まれではあるものの脂肪塞栓による重篤な合併症も報告されています⁶。当院では硬結などの合併症を避けるため、成長因子を添加せず、精製・フィルター処理した脂肪を使用しています。脂肪注入の詳細は下眼瞼たるみ治療のご案内ページをご覧ください。
ハムラ法のリスク・合併症は?

どのような手術にもリスクはあります。ハムラ法で知っておいていただきたいのは、主に以下の点です。
- 下まぶたの後退(scleral show)
表ハムラのように皮膚側からアプローチする場合、皮膚を切除しすぎたり、術後の瘢痕が下まぶたを引き下げたりすると、下まぶたが下がって白目が多く見える状態になることがあります。これは経皮法で最も注意すべき合併症で、下まぶたを外側に吊り上げる処置(タルザルスリング/カンソペキシー)を併用することで予防します⁷。当院でも下まぶたの支持を確認しながら、必要に応じてこの処置を行っています。 - 内出血・腫れ
腫れや内出血は2〜3週間で落ち着くのが一般的ですが、数ヶ月かけて徐々に落ち着いていく部分もあり、非常に個人差が大きいところです。 - 左右差・脂肪の凹凸
移動した脂肪の固定位置や量によって、左右差やわずかな凹凸が出ることがあります。腫れが引くとともに目立たなくなることが多いですが、6ヶ月以上経過しても気になる場合には修正を検討します。 - 一時的な違和感・感覚の変化
術後しばらく、下まぶたのつっぱり感やしびれ感が出ることがあります。多くは時間とともに改善します。
こうしたリスクを減らすために、当院では手術用顕微鏡下で靭帯や脂肪の位置をミリ単位で確認しながら手術を行っています。
術後の過ごし方は?

ハムラ法は日帰り手術で、局所麻酔で行います。術後の過ごし方の目安は以下のとおりです。
なお、上まぶた(眼瞼下垂など)の手術を同時に希望される場合は、同じ日には行わず、3ヶ月ほど期間を空けて別日に行っています。
かつむらアイプラストクリニックのハムラ法に対する考え方

当院では、脱脂・裏ハムラ・表ハムラのいずれかを最初から決めているわけではなく、診察でクマの原因(①皮膚・靭帯のゆるみ、②脂肪の突出、③骨の萎縮)を見極めたうえで術式を提案しています。
院長は眼科専門医として眼球そのものの構造・働きを熟知しており、下まぶたの手術においても、まぶたの形だけでなく眼球への影響(下まぶたの位置が変わることによるドライアイや閉瞼の変化など)まで考慮して計画します。万が一、術後に眼球に何らかのトラブルが起こった場合も、当院で診察・診断のうえ治療まで一貫して対応できます。
まぶたの手術と年間2000件前後向き合ってきた経験をもとに、脂肪の移動量や固定位置は手術用顕微鏡下で緻密に調整しています。術後の調整が必要になった場合は最低6ヶ月以上経過してから検討し、写真撮影をもとに計画を立てています。
目の下の治療で迷われている方は、まずは診察でご自身のクマの原因を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。詳しくは当院ウェブサイトをご覧ください。
よくある質問(FAQ)

- ハムラ法とクマ取りは同じものですか?
- 「クマ取り」は目の下のふくらみ・クマを改善する手術の総称で、ハムラ法はその中の術式のひとつです。ほかに脱脂(脂肪を取るだけ)や脂肪注入があります。どの術式が「クマ取り」として案内されているかはクリニックによって異なるため、カウンセリングで確認することをおすすめします。
- ハムラ法と脱脂はどちらが良いのですか?
- 優劣ではなく、原因によって使い分けます。ふくらみだけが原因で皮膚のたるみもくぼみもない方には脱脂で十分なことが多く、くぼみを伴う方には脂肪を温存できるハムラ法が向いています。
- 裏ハムラは傷が残らないと聞きましたが、デメリットはありますか?
- 皮膚に傷は残りませんが、皮膚のたるみは改善できません。たるみがある方に裏ハムラを行うと、脂肪が減った分だけ皮膚の余りが目立つことがあります。
- ハムラ法で移動した脂肪は、また戻ってしまいますか?
- 移動した脂肪は骨膜付近に固定するため、元の位置に戻ることは基本的にありません。ただし加齢による変化は続くため、数年〜十数年の単位で新たなたるみが生じることはあります。
- 保険は適用されますか?
- ハムラ法は整容目的の手術であるため、原則として自費診療です。費用の目安は料金表をご覧ください。
- 40代でも受けられますか?皮膚のたるみが気になります。
- はい、受けられます。皮膚のたるみを伴う方には、脂肪の移動と皮膚の切除を同時に行える表ハムラ(経皮的下眼瞼形成術)が適していることが多いです。診察で皮膚のたるみの程度を確認したうえでご提案します。
参考文献
- 1. Loeb R. Fat pad sliding and fat grafting for leveling lid depressions. Clin Plast Surg. 1981;8(4):757-776.
- 2. Hamra ST. Arcus marginalis release and orbital fat preservation in midface rejuvenation. Plast Reconstr Surg. 1995;96(2):354-362.
- 3. Goldberg RA. Transconjunctival orbital fat repositioning: transposition of orbital fat pedicles into a subperiosteal pocket. Plast Reconstr Surg. 2000;105(2):743-748.
- 4. Yoo DB, Peng GL, Massry GG. Transconjunctival lower blepharoplasty with fat repositioning: a retrospective comparison of transposing fat to the subperiosteal vs supraperiosteal planes. JAMA Facial Plast Surg. 2013;15(3):176-181.
- 5. Glasgold MJ, Glasgold RA, Lam SM. Volume restoration and facial aesthetics. Clin Plast Surg. 2015;42(1):1-15.
- 6. Yu NZ, Huang JZ, Zhang H, et al. A systemic review of autologous fat grafting survival rate and related severe complications. Chin Med J (Engl). 2015;128(9):1245-1251.
- 7. Pascali M, Botti C, Cervelli V, Botti G. Vertical midface lifting with periorbital anchoring in the management of lower eyelid retraction: a 10-year clinical retrospective study. Aesthet Surg J. 2015;35(3):258-269.




