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「まぶたが重く感じる」「視界が狭くなってきた」「おでこにシワが増えた」——40代以降になると、このような悩みを同時に抱える方が少なくありません。
上まぶたの余った皮膚を切除する眉下切開と、眉毛ごと引き上げる前額リフトは、どちらも上まぶたの重みを軽くする手術ですが、仕組みも適応も大きく異なります。
この記事では、かつむらアイプラストクリニックの院長である私が、両手術の違い・選び方・エビデンス(データ)をわかりやすく解説します。
眉下切開か前額リフトか迷っている方、あるいは「眉毛の位置まで考えて選びたい」という方の判断材料になれば幸いです。
眉下切開と前額リフト、何が違う?

どちらもまぶたの重みを改善する手術ですが、アプローチする「場所」と「組織」がまったく異なります。
眉下切開(眉毛下皮膚切除術)は、眉毛のすぐ下の皮膚をラグビーボール状に切除し、上まぶたのたるみを引き上げる手術です。
切開線は眉毛の下縁に隠れるため、傷跡は目立ちにくくなります¹。余分なまぶたの皮膚を直接取り除き、まぶたの厚みや重みを軽くすることが目的です。
一方、前額リフト(おでこリフト)は、髪の生え際を切開し、皮下と前頭筋の間を剥離して、眉毛ごと上方へ引き上げる手術です。
当院では生え際を切開する術式である「生え際切開前額リフト(pretrichial forehead lift)」を基本術式として採用しており、皺眉筋・鼻根筋・眉毛下制筋を顕微鏡下で確実に処理します²³。
手術時間は3時間前後かかりますが、眉毛そのものを持ち上げるため、まぶたの重みだけでなく「眉毛が下がって険しく見える」「額のシワ」「目と眉の距離が近い」といった上顔面全体の悩みに対応できます。
まとめると、「上まぶたのたるみをとる」という点では同じですが、眉下切開は「まぶたの皮膚を取る」、前額リフトは「眉毛を引き上げる」手術。目的とする変化のレイヤーが違うということが、選び方の出発点になります。
▶ 前額リフトの術式や適応の詳細は、前額リフト(おでこリフト)とは?をご覧ください。
眉下切開が向いているのはどんな方?

眉下切開の最も良い適応は、「眉毛の位置は下がっていない、かつ、まぶたのたるみがある」方です。具体的には次のような方におすすめしています。
- 40〜50代で、まぶたの皮膚がたるんで視界にかぶさってきた
- 眉毛自体の位置は比較的保たれている(指で眉毛を引き上げても、それほど位置が変わらない)
- まぶたの厚み(ROOFと呼ばれる眼輪筋下の脂肪³⁴)が気になる
- 傷跡を眉毛のラインに隠したい
Qiuら(2021年)の報告³では、眉下切開とROOF切除を併用した67例において、まぶたの重みと皮膚のたるみの両方が改善され、傷跡も目立ちにくかったと記載されています。
Cuiら(2025年)の前向き研究⁴でも、眉下切開は中等度の上まぶた皮膚弛緩に対して安定した改善が得られると示されています。
ただし注意点として、眉下切開を行うと眉毛の位置はむしろ下に引き下げられます。
「眉毛の位置は変わらない」という説明は不正確です。眉毛下垂がすでにある方に眉下切開を行うと、眉毛がさらに下がり、結果として顔つきが険しく(男性的に)見えてしまうことがあります。
前額リフトが向いているのはどんな方?

前額リフトの適応は、「まぶたのたるみがあり、かつ眉毛そのものが下がり眉毛の位置を積極的に引き上げたい」方です。具体的には次のような方におすすめしています。
- 眉毛が下がって、まぶたにかぶさるように感じる
- おでこの横ジワが深い(常に前頭筋を使ってまぶたを持ち上げているサイン)
- 目と眉の距離が近く、表情が険しく見える
- まぶたの厚み(ROOFと呼ばれる眼輪筋下の脂肪³⁴)が気になる
重要なのは、眉毛下垂がある程度進んでいる場合、眉下切開はむしろ逆効果になる可能性があるという点です。
Parkら(2023年)は518例の検討から、眉下切開や眼瞼下垂手術で皮膚のたるみを処理すると、前頭筋を使ってまぶたを持ち上げていた代償的活動が低下し、「隠れていた眉毛下垂」が顕在化することを報告しています⁵。
つまり、眉毛下垂が強い方に眉下切開を行うと、眉毛の重みでまぶたの厚みが十分改善されないばかりか、顔全体の印象が重くなってしまうのです。
このような方には、眉毛ごと引き上げる前額リフトが適しています。
額の余った皮膚を直接切除し、眉毛を固定することで、まぶたの重み・眉毛の位置・額のシワを同時に改善することが可能です。
深く刻まれた横ジワは完全には消えないこともありますが、余剰皮膚を切除して眉毛が引き上がった状態で固定されるため、多くの方で明らかな改善が得られます。
▶ 上まぶたの手術と眉の位置変化の関係については、上まぶたの手術後の眉の位置変化とそのリスク要因もあわせてご覧ください。
生え際切開 vs 内視鏡下——当院が生え際切開を選ぶ理由

前額リフトには主に「生え際切開(pretrichial)」と「内視鏡下(endoscopic)」の2種類があります。
Gargら(2025年)の比較研究²では、両術式の術直後の挙上量は内視鏡下の方が大きいものの、長期(平均429日)では同等の効果に落ち着き、しびれ・血腫・瘢痕などの合併症率にも有意差はなかったと報告されています。
重要なのは「生え際の位置や額の長さによって術式を選ぶべき」という結論です²。
当院が生え際切開を基本術式として採用している理由は以下のとおりです。
- 直視下で確実な操作が可能 — 皺眉筋・鼻根筋・眉毛下制筋を確実に処理できる
- 余剰皮膚を直接切除できる — 確実な挙上効果が得られる
- 額の幅が狭く保たれる — 内視鏡下では生え際が後退し、額が広くなることがある
余った皮膚を切除する生え際切開の方が、組織の固定のみに頼る内視鏡下より長期効果が優れる可能性があります。
ただし、しわ改善度を直接比較した研究はPubMedに見当たらず、この点は、私の臨床経験と解剖学的理論に基づく見解です。
眼瞼下垂との併施は?

「眼瞼下垂の手術と、眉下切開や前額リフトは一緒に受けられるの?」というご質問もよくいただきます。
答えは「併施は可能ですが、同じ日にまとめて行うことはお勧めしていません」です。
眼瞼下垂(挙筋腱膜の機能低下)が主な問題でも、同時にまぶたの皮膚がたるんでいたり、眉毛が下がっていたりすることは珍しくありません。
ただし、これらの手術を同じ日に重ねて行うと、先に行った手術の影響で術中からまぶたや額が腫れ始め、後から行う手術のデザインや挙上量を正確に判断できなくなってしまいます。
そのため当院では、複数の手術が必要な場合は同日にまとめず、段階的に分けて行うことをお勧めしています。
手術の順番は「まつ毛から遠い部位から先に」が原則です。眉毛の位置が決まることで、その下の手術のデザインが変わるためです。
具体的には、前額リフト → 眉下切開 → 眼瞼下垂手術の順に、それぞれ3カ月以上の間隔をあけて行います。
前の手術の腫れが完全に引き、まぶたや眉毛の位置が安定してから次の手術を計画することで、一つひとつの手術を正確にデザインでき、最終的な仕上がりも安定します。
当院では写真とブージーシミュレーションを用いて、どの手術をどの順番で行うのが最適かを術前に慎重に評価します。
▶ 眼瞼下垂手術と眉下切開のどちらを選ぶべきかは、「眼瞼下垂手術」と「眉下切開」どちらを選択すべきか?でも詳しく解説しています。
▶ 眼瞼下垂の治療について詳しくは、眼瞼下垂の治療をご覧ください。
術後のダウンタイムの違い

まぶたの手術と前額リフトは、術後の経過に共通点と相違点があります。
| 項目 | 眉下切開 | 前額リフト |
|---|---|---|
| 抜糸 | 術後6〜12日目(術式により異なる) | 術後6〜12日目 |
| デスクワーク復帰 | 術後3日目から可能 | 術後3日目から可能 |
| メイク | 術後1週間〜 創部以外/術後3週間〜 創部上 | 術後1週間〜 創部以外/術後3週間〜 創部上 |
| 腫れのピーク | 術後2〜3日 | 術後2〜3日 |
| 手術時間 | 60〜90分 | 3時間前後 |
▶ 眉下切開の詳しいダウンタイムについては、別記事で解説予定です(今後公開予定)。
まとめ:判断に迷ったら、まずは眉毛下垂の評価を

眉下切開と前額リフトは、似ているようでまったく別の手術です。選び方のキーポイントは次のとおりです。
- 眉毛下垂が軽度で、まぶたの皮膚だけがたるんでいる
→ 眉下切開 - 眉毛下垂がある程度進んでいる、または額のシワ・眉の位置も改善したい
→ 前額リフト - 眼瞼下垂もある
→ 挙筋前転術を含めた段階的な手術を検討
かつむらアイプラストクリニックでは、年間約1,800件の眼瞼手術経験をもとに、患者さまお一人おひとりに最適な術式を提案しています。
すべての手術は手術用顕微鏡下で行い、j極限まで細かく丁寧に手術を行っています。
まぶたの重みや眉毛下垂でお悩みの方は、まずは診察でご自身の状態を評価することから始めてみてください。
参考文献
- 1. Dutton JW, Chang IA, Zins JE. The Hairline Brow Lift. Clin Plast Surg. 2022;49(3):349-356. DOI
- 2. Garg N, Alnemri A, DeKloe J, et al. A Comparison of Brow Elevation and Complications: Endoscopic Versus Pretrichial Brow Lift. Laryngoscope. 2025;136(4):1741-1748. DOI
- 3. Qiu Y, Shen Y, He J, et al. Sub-brow skin excision Combined with retro-orbicularis fat resection: A Technique for upper eyelid bulkiness and laxity correction. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2022;75(4):1431-1437. DOI
- 4. Cui J, Zhang Y, Cang Z, et al. Effect of Orbicularis Oculi Muscle Suspension Combined With Overlap in Modified Sub-Brow Blepharoplasty: A Prospective Study. J Cosmet Dermatol. 2025;24(3):e70103. DOI
- 5. Park NS. Choosing Upper Blepharoplasty, Infra-brow Lift, and Forehead Lift in Asians: An Algorithmic Approach from Personal Experience. Aesthetic Plast Surg. 2024;48(4):644-651. DOI
- 6. Minehart BR, Barrera JE. The Functional and Cosmetic Brow Lift. Otolaryngol Clin North Am. 2025;58(5):831-844. DOI




