
「眼瞼下垂の手術を受けたら、何年くらい持つのだろう」「せっかく保険で手術をしても、また下がってきたら意味がないのでは」。眼瞼下垂(がんけんかすい)の手術を検討している方から、効果がどのくらい続くのかというご質問をよくいただきます。
結論からお伝えすると、眼瞼下垂の手術で得られた「まぶたの開き」は、多くの方で長期にわたって維持されます。ただし、まぶたの加齢は手術のあとも続きますし、眼瞼下垂の原因となった生活習慣が続いていれば、再び下がってくることもあります。「また下がってきた」と感じたとき、その理由は手術の効果が切れたからとは限りません。
この記事では、JR浦和駅西口のかつむらアイプラストクリニック院長・勝村宇博(眼科専門医)が、眼瞼下垂の手術は何年持つのか、再発の確率はどのくらいか、そして「また下がってきた」と感じる理由と対処法について、研究データを交えて解説します。
眼瞼下垂の手術の効果は何年持つ?

眼瞼下垂の手術(挙筋腱膜前転法)は、まぶたを持ち上げる筋肉の腱(挙筋腱膜)がゆるんでずれてしまった状態を、本来の位置に固定し直す手術です。固定そのものは長期にわたって維持され、「何年で効果がなくなる」という性質のものではありません。当院では、術後6ヶ月で仕上がりが安定したあと、そのまま長く経過される方が大半です。
研究データを見ると、大人の眼瞼下垂手術を受けた122名(152眼)を中央値で約3年追跡したイタリアの研究では、再発は全体の23%にみられましたが、加齢などによる腱膜性の眼瞼下垂(日本で手術を受ける方の大半がこのタイプです)は、先天性や筋肉の病気によるものに比べて再発が有意に少なく、再発を左右するのは手術の技術よりも「眼瞼下垂の原因」であったと報告されています¹。
一方で、術後1年以内に高さの調整(修正手術)が必要になる割合は、577名を対象にしたアメリカの報告で13%程度とされています²。これは「再発」ではなく、術後の腫れが引いたあとに左右差や開きの不足が分かり、早い時期に調整するケースです。当院では術後2週間の診察で上がりすぎ(過矯正)の有無を確認し、必要があればその日のうちに調整しています。
つまり、眼瞼下垂の手術の持続性は「術後半年までの調整期間」と「それ以降の長期の安定期」に分けて考えると分かりやすく、長期の安定期に入ったあとに再び下がってくるかどうかは、この先で解説する「原因」と「生活習慣」によって決まります。
眼瞼下垂の手術で「直るもの」と「直らないもの」

「何年持つか」を正しく理解するには、眼瞼下垂の手術が何を直し、何を直さないのかを知っておくことが大切です。
手術で直るものは、挙筋腱膜のゆるみ・ずれです。腱膜を瞼板(まぶたの芯になる軟骨のような組織)に固定し直すことで、まぶたを持ち上げる力が再び伝わるようになり、目の開きが改善します。
手術で直らないものは、主に3つあります。ひとつはまぶたの皮膚のたるみです。眼瞼下垂手術では二重のライン上で余分な皮膚を切除することもありますが、眉毛に近い厚い皮膚のかぶさりは手術のあとも加齢とともに進みます。ふたつ目は眉毛の位置です。眼瞼下垂があると無意識におでこの筋肉で眉を持ち上げており、手術でまぶたが軽くなるとこの力が抜けて眉が本来の位置に下がります。3つ目は筋肉そのものの力です。腱膜性の眼瞼下垂では筋肉の力は保たれているため問題ありませんが、先天性や筋肉の病気による眼瞼下垂では、腱膜を固定し直しても筋肉の力が弱いままなので、長期的に再び下がりやすい傾向があります¹。
眼瞼下垂の手術は「腱膜の問題」を解決する手術であり、その後の「皮膚」「眉毛」「筋肉」の変化は別の問題として考える、というのが基本的な考え方です。
「また下がってきた」と感じる5つの理由

術後数年〜十数年経って「また下がってきた」と感じる場合、その理由は大きく5つに分けられます。それぞれ原因が違えば、対処法も異なります。
① 皮膚のたるみが進んだ(偽眼瞼下垂)
もっとも多いのがこのパターンです。腱膜の固定は保たれていてまぶたの開き自体は変わっていないのに、上から皮膚がかぶさってきて視界が狭く見える状態で、「偽眼瞼下垂(ぎがんけんかすい)」と呼ばれます。鏡の前で眉毛を指で軽く持ち上げたときに目がはっきり開くなら、腱膜ではなく皮膚の問題が疑われます。この場合は眼瞼下垂手術のやり直しではなく、眉下切開など皮膚のたるみを取る手術が適しています。
▶ 眼瞼下垂と眉下切開のどちらを選ぶべきかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
② 反対側のまぶたが下がった
片側だけ手術を受けた方に起こりやすい変化です。両目のまぶたは同じ神経の信号で動いており、片方の眼瞼下垂を手術で直すと、それまで頑張って開いていた反対側のまぶたが「力を抜いて」下がってくることがあります。これはヘリングの法則と呼ばれる現象で、両側の眼瞼下垂を片側ずつ手術した場合、同時に手術した場合に比べて術後の左右差が有意に多かったという報告があります³。手術した側は保たれているのに「左右差が出てきた」と感じるときは、このパターンを考えます。
③ 腱膜が再びゆるんだ
眼瞼下垂の原因となった生活習慣が続いていると、固定し直した腱膜に再び負担がかかります。代表的なのはハードコンタクトレンズの長期装用と目をこする習慣です。コンタクトレンズによる眼瞼下垂は、通常の眼瞼下垂に比べて手術の成功率が低く(72%対89%)、再手術が必要になる割合が高かったという報告があります⁴。術後もハードコンタクトレンズを使い続ける場合は、長期的に再び下がってくる可能性があることを知っておく必要があります。
④ 新たな原因が加わった
手術とは関係なく、別の原因で眼瞼下垂が起こることもあります。たとえば白内障手術のあとに眼瞼下垂が生じることは以前から知られており、最近の総説でも、手術中の開瞼器(まぶたを開いておく器具)や麻酔などが原因と考えられています⁵。眼瞼下垂の手術を受けたあとに白内障手術を受けた方が「また下がってきた」と感じる場合、この可能性を確認します。
⑤ 眉毛が下がった
眼瞼下垂手術のあとは、眉を持ち上げていたおでこの力が抜けるため、眉毛の位置がやや下がります。これは手術直後から数ヶ月の間に起こる変化で、その後どんどん下がり続けるわけではありませんが、加齢で眉毛の位置がさらに低くなると、まぶたの皮膚が押し下げられてかぶさりが強く見えます。眉毛の位置が主な原因であれば、眼瞼下垂手術のやり直しではなく、前額リフト(おでこリフト)で眉毛の位置を上げることを検討します。
眼瞼下垂の手術が長持ちしやすい人・再発しやすい人

研究と当院の経験から、持続性に関わる要因を整理します。
| 要因 | 持続しやすい | 再発・再手術が多い傾向 |
|---|---|---|
| 眼瞼下垂の原因 | 加齢による腱膜性¹ | 先天性・筋肉の病気によるもの¹ |
| コンタクトレンズ | 使用なし/ソフト | ハードコンタクトレンズの長期装用⁴ |
| 生活習慣 | 目をこすらない | 目をこする習慣(アレルギー・花粉症) |
| 睡眠 | — | 睡眠時無呼吸症候群がある方は術後1年以内の修正が多い(20.5%対13.1%)² |
| 手術の範囲 | 両側同時 | 片側のみ(反対側の変化が出やすい)³ |
この表のなかで、ご自身で変えられるのは「コンタクトレンズ」と「生活習慣」です。術後にハードコンタクトレンズから眼鏡やソフトコンタクトレンズへ切り替えること、目をこすらないことは、手術の効果を長く保つうえで意味のある対策です。
長く持たせるために、手術でできること

眼瞼下垂の手術の持続性は、術後のケアだけでなく、手術そのものの計画と技術に大きく左右されます。当院では、次の点を重視しています。
腱膜を確実に固定する
挙筋腱膜前転法では、ゆるんだ腱膜を瞼板に縫い付けて固定します。この固定が甘いと、術後に再び腱膜がずれて下がってきます。挙筋腱膜前転法は、加齢による眼瞼下垂に対する標準的な術式として、系統的レビューでも有効性と合併症の少なさが確認されています⁶。当院では全例を手術用顕微鏡下で行い、腱膜と瞼板の位置関係を拡大して確認しながら縫合しています。
挙筋腱膜のみの操作ではまぶたの開きが不十分な場合は、まぶたを上げるもう一つの筋肉であるミュラー筋もあわせて短縮します(挙筋短縮)。それでも開きが不十分な場合は、ゴアテックスという人工のシートで瞼板とおでこの筋肉(前頭筋)をつなげる手術(前頭筋つり上げ)を行うことがありますが、まれです。術中にまぶたの開きを確認しながら、必要な範囲で術式を組み合わせることが、長期的に安定した開きにつながります。
術後2週間で過矯正を確認する
眼瞼下垂手術では、術後の腫れが引く過程で、まぶたが上がりすぎている(過矯正)ことが分かる場合があります。当院では術後2週間の診察でこれを確認し、必要があれば当日に調整します。修正はその日の一番最後の時間帯の手術になり、午後7時を過ぎる可能性がありますので、予定の調整をお願いいたします。
皮膚のたるみが強い場合は、眉下切開を先に行う
まぶたが厚く皮膚のかぶさりも強い方では、眼瞼下垂手術だけでは数年後に皮膚のたるみで「また下がってきた」と感じやすくなります。当院では、両方が必要な場合は眉下切開を先に行い、2ヶ月以上あけて眼瞼下垂手術を行う計画を立てます。眼瞼下垂手術は「あとで眉下切開をする前提か、しない前提か」でデザインがまったく異なるためです。
両側の眼瞼下垂は両側同時に手術する
前述のヘリングの法則による左右差を避けるため、両側に眼瞼下垂がある方は原則として両側を同時に手術します。片側だけの手術をご希望の場合は、術後に反対側が下がって見える可能性を事前にお伝えしています。
▶ 眼瞼下垂手術の全体像については、眼瞼下垂の治療ページをご覧ください。
10年後・20年後に再手術は必要?

眼瞼下垂の手術のあと、10年、20年と経って再び手術が必要になるかどうかは、「何が変わったか」によって決まります。多くの方は、そのまま追加の手術を受けずに過ごされます。
腱膜が再びゆるんだ場合は、同じ二重のラインからもう一度腱膜を固定し直す手術ができます。傷あとは前回と同じ位置に重なります。ただし、時間が経っても前回の瘢痕(はんこん)そのものは残っているため、初回に比べて手術の難易度は上がります。
皮膚のたるみが主な原因の場合は、眼瞼下垂手術のやり直しではなく、眉下切開や二重ラインからの皮膚切除が適しています。眉毛が下がってきた場合は、前額リフト(おでこリフト)を検討します。
再手術の費用は、2回目も原則として初回と同じ考え方です。まぶたが下がって視野が狭いなど機能的な障害がある場合は、保険適用で受けられる場合があります。見た目の調整が目的の場合は自費診療となります。保険適用になるかどうかは、症状の程度を診察で確認して判断します。
▶ 眼瞼下垂手術の費用については、こちらのページで詳しく解説しています。
当院の眼瞼下垂手術に対する考え方

かつむらアイプラストクリニックは、眼形成を専門とし、まぶたの手術を年間2000件前後行っています。眼瞼下垂の手術を「何年持つか」という視点で考えるとき、当院が大切にしているのは、原因の正確な診断と、長期の経過を見届ける体制です。
院長は眼科専門医として、まぶたの下がりの原因が腱膜のゆるみなのか、皮膚のたるみなのか、眉毛の位置なのか、あるいは筋肉や神経の病気が隠れていないかを診察のうえで判断します。原因を取り違えると、手術をしても「思ったほど変わらない」「すぐに戻った」という結果につながるためです。
術後は1週間・2週間・2ヶ月・6ヶ月の節目で診察を行い、デジタル一眼レフカメラでの写真撮影で経過を記録します。10年後、20年後に「また下がってきた」と感じたときも、術前・術後の写真が残っているため、何が変わったのかを客観的に比較して次の治療を計画することができます。
▶ ご自身の症状が眼瞼下垂かどうか気になる方は、セルフチェックの記事もご覧ください。
術後の過ごし方と、持続性に関わる生活習慣

眼瞼下垂手術の効果を長く保つために、術後の過ごし方と、その後の生活習慣で気をつけたいことをまとめます。
術後の過ごし方(目安)
腫れや内出血は2〜3週間で落ち着くことが多いですが、非常に個人差の大きい部分です。傷あとの赤みはおよそ6ヶ月で落ち着くことが多く、1年ほど続く場合もあります。最終的な仕上がりは術後3〜6ヶ月が目安です。
長期的に気をつけたい生活習慣
- ハードコンタクトレンズの使い方を見直す。ハードコンタクトレンズの長期装用は眼瞼下垂の代表的な原因のひとつで、術後も使い続けると再び腱膜に負担がかかります⁴。眼鏡やソフトコンタクトレンズへの切り替えが可能かどうか、眼科でご相談ください。やむを得ず続ける場合も、レンズの着脱時にまぶたを強く引っ張らないことが大切です。
- 目をこすらない。まぶたの皮膚は体の中でもっとも薄く、こするたびに皮膚が引っ張られて伸びるだけでなく、その奥の腱膜にも負担がかかります。花粉症やアレルギーで目がかゆい方は、点眼薬で症状を抑えることが、手術の効果を守ることにもつながります。
- 眉を上げるクセに気づく。手術でまぶたが軽くなったあとも、長年のクセでおでこの筋肉に力が入り続ける方がいます。前頭筋の緊張が強い方は術後もおでこのシワが変わらないことがあり、鏡を見るときに眉を上げていないか意識してみるとよいでしょう。
よくある質問(FAQ)

- 眼瞼下垂の手術の効果は一生続きますか?
- 腱膜の固定そのものは長期にわたって維持されますが、「一生変わらない」わけではありません。まぶたの皮膚のたるみや眉毛の位置の変化は加齢とともに続きますし、ハードコンタクトレンズや目をこする習慣が続けば、腱膜に再び負担がかかります。研究では、加齢による腱膜性の眼瞼下垂は、先天性などに比べて再発が有意に少ないことが示されています¹。
- 再発する確率はどのくらいですか?
- 研究によって定義が異なるため一概にはいえませんが、大人の眼瞼下垂全体で約3年の追跡期間中に23%、そのうち腱膜性のものは有意に少なかったという報告があります¹。術後1年以内の調整(修正)は13%程度という報告もありますが²、これは再発ではなく、腫れが引いたあとの高さの微調整です。
- 片目だけ手術したら、反対側も下がってきました。失敗ですか?
- 失敗ではなく、ヘリングの法則と呼ばれる現象です。両目のまぶたは同じ神経の信号で動くため、片側を手術すると反対側が力を抜いて下がることがあります³。反対側にも眼瞼下垂があれば、その側の手術を検討します。当院では、両側に眼瞼下垂がある方には原則として両側同時の手術をおすすめしています。
- 術後もハードコンタクトレンズを使い続けてよいですか?
- 術後3週間からコンタクトレンズの装用は可能です。ただし、ハードコンタクトレンズの長期装用は眼瞼下垂の原因のひとつであり、使い続けると再び下がってくる可能性があります⁴。眼鏡やソフトコンタクトレンズへの切り替えが可能かどうか、眼科でご相談されることをおすすめします。
- 再手術は保険が使えますか?
- 2回目も原則として初回と同じ考え方です。まぶたが下がって視野が狭いなど機能的な障害がある場合は保険適用で受けられる場合があり、見た目の調整が目的の場合は自費診療となります。保険適用になるかどうかは、症状の程度を診察で確認して判断します。
- 再手術は初回より難しくなりますか?
- 同じ二重のラインから腱膜を固定し直すことはできますが、時間が経っても前回の瘢痕そのものは残っているため、初回に比べて手術の難易度は上がります。また、「また下がってきた」原因が皮膚のたるみや眉毛の位置の場合は、眼瞼下垂手術のやり直しではなく別の手術が適しています。
- 「また下がってきた」と感じたら、まず何をすればよいですか?
- まず、手術を受けた医療機関で診察を受け、何が変わったのかを確認してください。腱膜なのか、皮膚なのか、眉毛なのか、反対側なのかで対処法がまったく異なります。当院で手術を受けた方は、術前・術後の写真と比較しながら原因を判断します。
まとめ

眼瞼下垂の手術で固定し直した腱膜は、多くの方で長期にわたって維持されます。研究でも、加齢による腱膜性の眼瞼下垂は再発が有意に少ないことが示されています¹。
一方で、術後に「また下がってきた」と感じる場合、その理由は多くの場合、①皮膚のたるみの進行、②反対側のまぶたの変化、③生活習慣による腱膜の再びのゆるみ、④白内障手術などの新たな原因、⑤眉毛の位置の変化、のいずれかです。それぞれ対処法が異なるため、「眼瞼下垂手術のやり直し」が正解とは限りません。
効果を長く保つために大切なのは、術前に原因を正しく診断すること、手術で腱膜を確実に固定すること、そして術後にハードコンタクトレンズや目をこする習慣を見直すことです。眼瞼下垂の手術が何年持つのか、ご自身の場合はどうなのかが気になる方は、かつむらアイプラストクリニックへお気軽にご相談ください。
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