屈折異常
屈折異常
眼に入ってきた光が網膜に映って、その情報が視神経を通じて脳に伝わります。網膜にピントが合うように光の屈折を変えるのが水晶体です。カメラに例えると網膜はフィルム、水晶体はレンズに該当します。水晶体は毛様体という筋肉によって厚みが変わり、さまざまな距離にあるものにピントを合わせることができます。近い距離にあるものを見る時には毛様体の緊張により水晶体が分厚くなって屈折力が強くなり、遠くの距離にあるものを見る時には毛様体の弛緩により水晶体が薄くなって屈折力が弱くなります。どこを見るでもなくリラックスしている状態でも毛様体が弛緩しているので屈折力は弱くなります。適切な屈折力にならないと網膜に映る像はピントが合っていない状態になり、ぼやけます。屈折異常は、近視、遠視、乱視があります。屈折異常がない状態は正視と呼ばれます。
近い距離にあるものはよく見えますが、遠い距離のものが見えにくい状態です。近視は遺伝や環境による影響などによって10~15歳くらいから始まる単純近視が一般的にはよく知られています。他に、失明原因になる病的近視もあり、矯正視力低下といった視機能障害を伴います。
水晶体の厚みを調節していない状態で、ピントが網膜の後ろで合ってしまう状態です。遠くは少しだけ調整すると比較的楽に見ることができますが、近くを見る際には強く調節しなければはっきりとは見えません。遠距離と近距離の両方で調節が必要であり、特に近距離では強い調節を要するため、疲れ目になりやすいと言えます。
屈折点によって屈折力が違っているため、焦点が結ばない状態です。角膜のひずみなどが原因で起こる正乱視と、ケガや炎症によって角膜表面に凹凸ができて生じる不正乱視があります。正乱視は、方向などによって異なる角膜や水晶体のカーブにより、縦横・斜めで屈折力が変わり、焦点をうまく結ぶことができず、一定の方向に伸びる線だけが明確で他の方向に伸びる線はぼやけます。ほとんどの正乱視は近視や遠視を伴います。
乱視には、正乱視と不正乱視があり下記のように分かれます。
目の水晶体や角膜がキレイな球体をしており、光の屈折度合いが正常に働き目の奥で焦点が一つに合う(ピントが合う)。
レンズの役割を果たす角膜や水晶体が変形している(上下・左右・斜めなどに傾き、ラグビーボールのような楕円状の変形がみられる)ため、正常な箇所と変形した箇所で屈折の程が異なり焦点が一つに結ばれないため目のピントが合わずぼやけて見えるのです。
最も多くみられる乱視のタイプです。角膜が縦に押しつぶされ「横長の楕円状」になった状態です。垂直な線ははっきりと見えるが水平なせんがぼやけて見えるなどの症状が見られます。
直乱視と違い、左右の横に押しつぶされ「縦長の楕円状」になった状態です。水平な線ははっきり見えますが、垂直な線が見えにくいです。
角膜・水晶体(レンズ)が斜めに押しつぶされ「斜めに縦長の楕円状」になった状態です。斜めの線は見えやすいですが、その線に対し直角に交わる線が見えづらくなります。
突発的な事故や物が目にぶつかるなど「外的要因」で引き起こるケースが多い乱視です。
上記のような要因で角膜の表面が傷つき「でこぼこ」した状態になる、また炎症が見られると光の屈折に異常が生じてピントが合わなくなります。
老眼は名前だけ見ると高齢期に始まるイメージがありますが、多くの方が40歳前後から老眼になりはじめます。老化現象のひとつで、視力に問題がない方、近視の方、遠視の方など、どなたでもなる可能性があります。水晶体の弾力性が衰えて調整力が低下することで近くが見えにくくなりますが、いつごろ症状がはじまって、どのように進行するかについては個人差が大きくなっています。近視の方は進行を遅く感じる傾向があります。老眼の度数変化にあわせた眼鏡にすることで、眼にかかる負担を少なくすることができます。
スマートフォンが普及してから、「夕方になると目がかすむ」「細かい文字が見えにくい」といった老眼のような症状を訴える若い方が増えており、ニュースなどでは『スマホ老眼』と呼ばれています。スマートフォンなど手元の画面を集中して見続けることで眼に疲れがたまり、眼のピント調節がうまくできなくなって起こります。一時的な症状で十分に休息や睡眠をとれば解消することが多いのですが、悪化すると休んでも十分に回復しなくなって、頭痛や吐き気などの症状を起こすこともあります。こまめに休憩を入れ、ホットタオルで温めるなど、できるだけ眼をいたわるよう心がけましょう。
屈折異常は日常生活にさまざまな支障を生じ、お仕事や学業に大きく関わります。そのため、適切な眼鏡やコンタクトレンズによる矯正が必要です。近年、パソコンやスマートフォンの普及により、眼を酷使して視力を低下させてしまうケースが増えています。また、合わない眼鏡を装用するなどによって視力が落ちてしまうこともあります。また、目の疲れを解消させる生活習慣や環境の改善も視力の維持には重要です。
視力が発達途中である子どもの場合、よく見えていないと神経回路が発達できず、8歳を超えてしまうと矯正も難しくなります。片目だけの斜視や弱視というケースもありますので、視力に不安がありましたらできるだけ早くご相談ください。適切な治療をいかに早く開始できるかが、その後の視力に大きく関わります。