眼瞼内反(がんけんないはん)｜大人の【逆さまつげ】｜原因・症状・治療について

どんな病気・眼瞼内反の特徴とは？

眼瞼内反になると、まつ毛が眼球に当たり「目が痛い」「ゴロゴロする」という自覚症状が出ます。それだけでなく、眼瞼内反を放置しておくと当たるまつ毛で眼球が傷つき(点状表層角膜炎)、ひどい場合は眼球に穴が開くこともあります。
また、まぶたの炎症や結膜炎、ドライアイなどと関連しているというデータが出ています。

(参考文献：Involutional Entropion and Ectropion of the Lower Eyelid: Prevalence and Associated Risk Factors in the Elderly Population: Renato et al. Ophthal Plast Reconstr Surg 2011;27:317–320)

よく間違われる疾患

眼瞼内反になった時の自覚症状は「目が痛い」「ゴロゴロする」ですが、似たような病気として以下のような疾患が挙がります。これらとの違いを見分けるには、眼科での診察が必要になります。気になる方はご相談ください。

• ドライアイ

  眼球が乾いてむき出しになることで傷つきやすくなり、痛みを感じるようになります。

  

• 結膜弛緩症

  たるんだしろめの皮(結膜)がまぶたと眼球の間に挟まり、まばたきをした時に眼球とこすれることで眼球に違和感を感じるようになります。

  

• 睫毛乱生

  まぶたの位置は変わりませんが、炎症により一部のまつ毛の方向が変わることで眼球に当たり違和感や痛みを感じるようになります。

  

なりやすい年齢

眼瞼内反の疑いがあり当院を受診された場合、眼瞼内反の原因であるまぶたのゆるみに対していくつか検査をいたします。

• Snap Back Test
  (引っぱる検査)

  まぶたを手で下に引っ張った後に手を放すという検査です。

  正常な場合はまぶたが正常な位置に戻りますが、まぶたにゆるみがある場合は、元に戻るまでのスピードが遅い、もしくは正常な位置まで戻りません。

• Pinch test
  (つまむ検査)

  下まぶたを前に引っ張り、眼球から下まぶたがどれくらい離れるかを測定する検査です。
  正常なら5mmくらい。8mm以上離れる場合はまぶたのゆるみが疑われます。

• Lateral distraction test
  (外側に引っ張る検査)

  下まぶたを外側に引っ張り、内側の黒目のラインと半月ひだ(目頭に見えるピンクの粘膜部分)の中間地点よりも黒目側に涙点が移動する場合はまぶたのゆるみが疑われます。

• Medial distraction test
  (内側に引っ張る検査)

  下まぶたを内側に引っ張り涙点が涙丘の中心線より内側に移動する場合は、まぶたのゆるみが疑われます。

眼瞼内反は、放置しておくと眼球を傷つけて最悪の場合失明することもあります。
ですから、眼瞼内反の治療はすべて保険適用されます。
そして、眼瞼内反の原因は筋肉や靭帯・瞼板の緩みなので、ゴム紐の緩みを取るように「筋肉や靭帯を切って縫い縮める」手術が治療になります。

眼瞼内反の治療

眼瞼内反は自力(トレーニング)で治るか？

巷では、まぶたのたるみを解消するためのマッサージやトレーニングが紹介されております。
これらは効果があるのでしょうか？
眼瞼内反は瞼板を支えている筋肉や靭帯のゆるみが原因です。
ゆるんだゴム紐をトレーニングで短くすることはできません。
それと同じで、眼瞼内反はマッサージやトレーニングでは治りません。

眼瞼内反の治療は手術が必要

眼瞼内反ですが、手術で緩んだ部分を治療します。様々な術式がありますが、解剖学的に正しいJones変法とLTSのみについて記載します。

• Jones変法

  下まぶたを2cmほど切開し、緩んだ縦方向の筋肉(LER)を縫い縮める術式です。手術時間は20分ほどです。
  皮膚のシワに沿って縫えば傷あとも全く目立ちません。
  眼瞼内反は瞼板を縦方向に引っ張っている筋肉(LER)のゆるみを矯正しますが、横方向に引っ張っている靭帯(内眥靭帯、外眥靭帯)のゆるみは残りますので、約10%の方が再発します。

  

  再発した場合は横(内眥靭帯、外眥靭帯)のゆるみを治療するLateral Tarsal Strip(LTS)が必要になります。

• Lateral Tarsal Strip(LTS)

  LTSは横(内眥靭帯、外眥靭帯)の弛緩を矯正する術式です。目尻側を15mm程度シワに沿って切開し、外眥靭帯を切断した後に瞼板と骨(正確には骨膜)を縫合します。約20分の手術です。

  

  Jones変法とLTSの両方を手術することで、再発は2%程度に抑えることができます。
  こちらもシワに沿って顕微鏡で丁寧に手術することで傷あともほとんど分かりません。