どんな病気・眼瞼皮膚弛緩症の特徴とは?
たるみのない「まぶた」と比べ、加齢によりたるんだまぶたは皮膚がまつ毛の上にかぶさる重みを感じ、また、上方の視野を妨げます。
そして、この加齢による「まぶた」のたるみが原因で不具合を生じている状態を眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふしかんしょう)といいます。
眼瞼皮膚弛緩症
眼瞼皮膚弛緩症とは?
病気についての説明動画です。
たるみのない「まぶた」と比べ、加齢によりたるんだまぶたは皮膚がまつ毛の上にかぶさる重みを感じ、また、上方の視野を妨げます。
そして、この加齢による「まぶた」のたるみが原因で不具合を生じている状態を眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふしかんしょう)といいます。
まぶたを上げる2種類の筋肉が弱まりまぶたをうまく上げられなくなるため、まぶたが下がる病気を眼瞼下垂といい、下がったまぶたが黒目(瞳孔)にかぶさると上方の視野が狭くなります。
一方、眼瞼皮膚弛緩症はまぶたを上げる筋肉の力は問題なく、たるんだ皮膚が黒目(瞳孔)にかぶさることで視野が狭くなります。
細い針金などで皮膚を上に持ち上げると、「眼瞼下垂」はまぶたの縦幅は変わりませんが「眼瞼皮膚弛緩症」はまぶたの縦幅が大きくなり、黒目がしっかりと見えるようになります。
一般的には、50代に差し掛かる前後で、原因は「加齢」と「紫外線」です。
「加齢」と「紫外線」によりコラーゲンなどが変化して「たるみ」ができます。
また、重力によりまぶたの中の脂肪が下がることでも皮膚のたるみが生まれます。1)
ですから、眼瞼皮膚弛緩症は加齢だけでなく紫外線の浴びやすさなど、生活パターンによっても変わります。
眼瞼皮膚弛緩症の原因は「加齢」と「紫外線」です。
「加齢」と「紫外線」によりコラーゲンなどが変化して「たるみ」ができます。
また、重力によりまぶたの中の脂肪が下がることでも皮膚のたるみが生まれます。
余談ですが、皮膚のたるみ、シミなどいわゆる「加齢性変化」の8割は紫外線が原因といわれていますので、いわゆるUVケアはとても大事です。
こちらの写真は、25年間長距離トラックのドライバーをされていた方です。
左ハンドルで常に左側から日光を浴びていたため左側だけたるみやシワが多く、皮膚の加齢性変化が強いことが分かります。
紫外線は、肌の老化とこれだけ深い関係があります。
「たるんだ皮膚がまつ毛にかぶさり重みを感じる」「たるんだ皮膚のために上が見づらい」場合は「見る」という機能が損なわれていますので、専門の医師への早めの受診をお勧めします。
「まぶたのたるみが見た目に気になる」場合でも、たるんだ皮膚は審美面に大きな影響を与えますので専門の医師への受診をお勧めいたします。
まぶた自体が下がる「眼瞼下垂」なのか、皮膚のたるみ「眼瞼皮膚弛緩症」なのかそれとも両方が混在しているのかを見分ける必要がありますが。細い針金などで皮膚だけを持ち上げると実際のまぶたの幅を確認することができます。
しかし、まぶたのたるみで視機能が損なわれているかどうかは眼科的な検査をしないと分かりませんし、ドライアイや結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)など、他の病気によりまぶたの重みを感じていることもあります。まぶたは眼球と密接していますので、正しい診断と治療を受けるためにも専門の眼科医への受診をお勧めします。
眼瞼皮膚弛緩症は皮膚のたるみですから、たるみを取ることが治療になります。
治療法は大きく分けるとレーザーと手術があります。
当院では、まぶたのたるみに対しfotona社のSP Dynamis PROを導入しております。SP Dynamis PROは世界の医療用レーザーメーカーの中でも最も歴史の長いFOTONA社の2波長レーザー最上位機種で、日本国内の眼科クリニックでは当院が最初に導入しました。
最大の特徴は組織を焼くこと無くレーザーのエネルギーを深部に入れられることで、
皮膚に傷をつけることなくまぶたのたるみへアプローチすることができます。
レーザーよりも効果をしっかりと出したい場合は手術になります。
手術方法は3つに分けることができ、以下の選択肢があります。
皮膚に小さな穴を開け、まぶたに糸を刺入し糸で皮膚固定して重瞼(じゅうけん)を作成する方法です。
高い位置に重瞼(じゅうけん)を作成することで固定部より上の皮膚がせき止められるため、皮膚を切除することなく見た目のたるみを改善できます。しかし、埋没法(まいぼつほう)は固定力が弱く「仮固定」の状態ですから、埋没法(まいぼつほう)は当院ではお勧めしておりません。
まぶたの皮膚は、眉毛側が厚くまつ毛に近くなるほど薄くなります。瞼縁皮膚切除術は、まつ毛側の薄い皮膚を切除し糸で固定して重瞼を作成して皮膚を縫い合わせます。
この手術法の場合、薄い皮膚を取り厚い皮膚が残るために厚ぼったい瞼になる場合もありますが、上からかぶさる皮膚で傷あとがかくれるというメリットがあります。
先ほどもお話しいたしましたが、まぶたの皮膚は眉毛側が厚く、まつ毛側が薄くなっています。眉毛下皮膚切除術の場合は眉毛側の厚い皮膚を眉毛のラインに沿って切除し、皮膚を縫い合わせます。
この手術法の場合、厚い皮膚を取り薄い皮膚が残るために自然な見た目になりやすいというメリットがありますが、傷あとが隠れず目立ちやすいというデメリットがあります。
眼瞼皮膚弛緩症の治療方法の比較について
まぶたのたるみである眼瞼皮膚弛緩症に対する治療方法をまとめます。
レーザーによる治療は施術後の腫れなど、いわゆるダウンタイムが短いというメリットがありますが、手術に比べると効果が小さいというデメリットもあります。
まつ毛に近い薄い皮膚を切除する瞼縁皮膚切除術(けんえんひふせつじょじゅつ)は、傷あとが隠れるというメリットがありますが、場合によってはまぶたが厚ぼったく見えることもあります。
眉毛側の厚い皮膚を切除する眉毛下皮膚切除術(びもうかひふせつじょじゅつ)ですが、見た目が自然であるというメリットもあるものの眉毛の下に傷跡が残ったり眉毛の形が崩れる場合があります。
あるデータではシニアの方の罹患率は、白内障で男性32~33%、女性28~31%で眼瞼皮膚弛緩症は男性25~26%、女性31%となっています。2)
つまり、シニアの方の3~4人に1人は眼瞼皮膚弛緩症ということになります。
術式 | 眉毛下皮膚切除術(眉下切開) |
手術時間 | 約60分 |
金額 | 約44,000円(保険適用、3割負担時) |
リスク・副作用 | 再発、術後出血、再手術、腫脹 |
術式 |
眼瞼下垂手術(挙筋短縮術) +眉毛下皮膚切除術(眉下切開) |
手術時間 |
70分(眼瞼下垂手術) 80分(眉毛下皮膚切除術) |
金額 |
眼瞼下垂手術 約15,000円 眉毛下皮膚切除術 約13,000円 (保険適用、1割負担時) |
リスク・副作用 | 再発、術後出血、再手術 |
術式 |
眉毛下皮膚切除術 (眉下切開) |
手術時間 | 約60分 |
金額 |
約44,000円 (保険適用、3割負担時) |
リスク・副作用 | 再発、術後出血、再手術 |
術式 |
眉毛下皮膚切除術 (眉下切開) |
手術時間 | 約60分 |
金額 |
約44,000円 (保険適用、3割負担時) |
リスク・副作用 | 再発、術後出血、再手術 |
① 手術時間は60~80分です。眉毛の下の厚い皮膚を切除し、たるみを解消させます。
② 術翌日から洗顔、洗髪、シャワー浴が可能です。
顔は血流が豊富なので感染に強く、データ上も消毒液を使用するより水道水で洗い流す方が傷をきれいに保てるということが分かっています。翌日からは通常通り泡立ててやさしく洗顔して下さい。
③ 2日間は患部をしっかり冷やしてください。
まぶたの皮膚は体の中で一番薄く術後は傷を治そうと様々な変化が起きるため、術後2日間は一番腫れる時期になります。
しっかりと患部をしっかりと冷やし、腫れないよう努めてください。またこの間は、激しい運動や湯船につかるなど体を温める様なことをすると腫れが強くなりますので控えてください。
眉下切開は眉毛の下を切開しますが、重力により出血が下に降りて傷口よりもまぶたの縁が腫れます。
術後の腫れは1週間で7割、2週間で9割以上元に戻り、残りの1割は2カ月かけて徐々に落ち着いていきます。
④ この手術は例えていうならば、「パンツの裾上げをする時に、裾を詰めるのではなくベルトを上に引っ張りベルトの位置を高くする」のと同じなので、ミリ単位で細かく二重幅をコントロールすることはできません。
⑤ 術後、眉毛の下に細い線状の傷が残る場合があります。
当院では、なるべく傷跡が残らないよう、顕微鏡を使用した上で髪の毛よりも細い糸で極限まで細かく丁寧に縫い合わせています。
しかし、体質的に傷あとが残りやすい方はどうしても傷あとが目立つ場合があります。
⑥ コンタクトレンズやアイライン、アイシャドー、アイブロウなど目もとのメイクに関してです。
術後約1週間での抜糸以降は可能ですが、傷が完全にくっつく術後3週間までは、激しくこすることは控えてください。
⑦ 術後1週間での抜糸以降は、術後1,3,6か月での受診をお願いいたします。
まぶたの皮膚は他の部位に比べ薄く伸びやすいため、思ったよりたるみが解消されない場合があります。また、傷は約6か月かけて赤みが消え通常の状態に戻ります。
これらの理由から、術後6カ月はしっかりとフォローする必要があります。ずれる分には構いませんので、術後1,3,6カ月での外来受診をお願いいたします。
① 手術時間は30~40分です。
当院は、長期間二重を維持できる「中縫い法」で適度な位置に二重を作成します。この際、皮膚のたるみが強い場合はまぶたの縁の薄い皮膚を一部切除します。
② 術翌日から洗顔、洗髪、シャワー浴が可能です。
顔は血流が豊富なので感染に強く、データ上も消毒液を使用するより水道水で洗い流す方が傷をきれいに保てるということが分かっています。
翌日から通常通り泡立ててやさしく洗顔して下さい。
③ 術後2日間は患部をしっかり冷やしてください。
まぶたの皮膚は体の中で一番薄く術後は傷を治そうと様々な変化が起きるため、術後2日間は一番腫れる時期になります。
しっかりと患部をしっかりと冷やし、腫れないよう努めてください。
またこの間は、激しい運動や湯船につかるなど体を温める様なことをすると腫れが強くなりますので控えてください。
術後はまぶたの縁が腫れますが、術後の腫れは1週間で7割、2週間で9割以上元に戻り、残りの1割は2カ月かけて徐々に落ち着いていきます。
術後4日目くらいからカモフラージュ用のメガネをかけて外出されている方が多い印象です。
④ コンタクトレンズやアイライン、アイシャドーなど目もとのメイクに関しては傷がくっつく術後3週間以降から使用してください。
傷がくっつく前に目もとをこすると、糸が緩んで二重が取れる場合があります。
⑤ 術後1週間での抜糸以降は、術後1,3,6か月での受診をお願いいたします。
まぶたの皮膚は他の部位に比べて薄く伸びやすいのが特徴で、二重の幅はシュミレーション通りにはいかないことがあります。
また、傷が完全に落ち着くまで約6か月かかるため、その間はしっかりとフォローする必要があります。
術後約1,3,6カ月での外来受診をお願いいたします。
01) Dermatochalasis. DeAngelis DD et al.Int Ophthalmol Clin. 2002 Spring;42(2):89-101.
02) Occurrence of eye disorders and need for treatment in the elderly in special dwellings and nursing homes [corrected].Rifaat R et al. Ophthalmol (Copenh). 1989 Dec;67(6):657-63.