顔面神経とは?
脳からは12本の神経が出ていますが、その中で以下に関係するのが「顔面神経」です。
- おでこ(前頭筋(ぜんとうきん))
- 目の周り(眼輪筋(がんりんきん))
- 頬、口まわり(大頬骨筋(だいきょうこつきん)や笑筋(しょうきん)など)
- 涙(涙腺(るいせん))
- つば(耳下腺(じかせん))
顔面神経麻痺
脳からは12本の神経が出ていますが、その中で以下に関係するのが「顔面神経」です。
何らかの理由により顔面神経が麻痺した状態を「顔面神経麻痺」といい、以下のような症状が出てきます。
・眉毛が下がる(眉毛下垂(びもうかすい)) → 上の視界が狭くなる
・まぶたが閉じなくなる(兎眼(とがん)) → 眼球に傷がつく、涙が排泄されづらくなる
一部の脳梗塞、脳腫瘍でも顔面神経麻痺のような症状(顔の痺れ)が出ます。脳梗塞の場合は一刻も早い入院治療が必要になりますので、注意が必要です。
脳梗塞など、脳の病気が原因の顔面神経麻痺を見分けるポイントとして、以下のポイントがあります。
脳が原因の顔面神経麻痺(中枢性(ちゅうすうせい))の場合、おでこにシワを寄せられます。
反対に、それ以外(末梢性(まっしょうせい))の場合、麻痺した側のおでこにシワを寄せることができません。
突然発症する顔面神経麻痺の多くはBell麻痺(べるまひ)(66.7%)、Ramsay Hunt症候群(らむぜいはんとしょうこうぐん)(20.6%)です。1)
Bell麻痺の場合は人口10万人のうち11~40人がかかり、15~45歳が多く、
Ramsay Hunt症候群は人口10万人当たり3~5人がかかり、20歳代と50歳代が多いというデータが出ています。
また、顔面神経麻痺と糖尿病や高血圧の関連性が指摘されているため、これらを持っている場合はリスクが高いといえるでしょう。
突然発症する顔面神経麻痺の多くはBell麻痺(66.7%)、Ramsay Hunt症候群(20.6%)です。1)
Bell麻痺の原因はまだ分かっていませんが、単純ヘルペスウイルスが関係しているのではないかといわれています。
Ramsay Hunt症候群は帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスが原因で、顔の麻痺と耳の発疹、聞こえづらさが特徴です。
残りの10%は耳の炎症や腫瘍、顔の手術後などです。
後遺症を残さないよう、症状が出てから72時間以内でのステロイドや抗ウイルス薬による治療を開始しなければなりません。ですから、顔面神経麻痺の症状が出たら早急に耳鼻科や脳神経外科を受診することが必要です。
Bell麻痺は約半年で70%が治癒し後遺症も残りませんが、Ramsay Hunt症候群は70%が何らかの後遺症を残すと報告されています。3)
内服や点滴による早期の治療を終えた後、1年以上経過しても以下のよう麻痺の症状が残っている場合は、これらを改善させる手術を検討していただいた方が良いと思います。
・眉毛が下がる(眉毛下垂) → 上の視界が狭くなる
・まぶたが閉じなくなる(兎眼) → 眼球に傷がつく、涙が排泄されづらくなる
早期の治療時には採血検査や画像検査が必要になりますが、以下のような後遺症の影響を調べるには、眼科での視野検査や細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)での眼球表面の検査が必要になります。
・眉毛が下がる(眉毛下垂) → 上の視界が狭くなる
・まぶたが閉じなくなる(兎眼) → 眼球に傷がつく、涙が排泄されづらくなる
※兎眼がひどい場合は眼球表面に傷(点状表層角膜炎(てんじょうひょうそうかくまくえん))がついています。
以下のような「機能的面で問題が見られる」状態の場合は保険が適用されます。
・眉毛が下がる(眉毛下垂) → 上の視界が狭くなる
・まぶたが閉じなくなる(兎眼) → 眼球に傷がつく、涙が排泄されづらくなる
※機能面は問題ないものの審美面が気になる場合は自費での治療になります。
こちらに対する手術は「眉毛挙上術(びもうきょじょうじゅつ)」になります。
これは、眉毛の上もしくは髪の毛の生え際を切開して眉毛の位置を上げる手術です。
眉毛の上を切開する方法は、傷が目立つ場合があるものの効果が高いです。
一方、髪の毛の生え際を切開する方法は、傷が目立ちづらいものの効果が限定的です。
小さな穴を開けて手術する、いわゆる「切らない手術」もありますが、長期的な効果でいうと疑問符がつきます。
こちらは、原因により手術を選択します。
上まぶたを下げる手術を行います。下げる方法はいくつかありますが、患者様にとって一番良いと考えられる手術をオーダーメイドで行います。
下まぶたを上げる手術を行います。
軽症の場合はLateral Tarsal Strip(LTS)を施行しますが、重症の場合は耳の軟骨を移植します。
Bell麻痺の場合は人口10万人のうち11~40人、Ramsay Hunt症候群は人口10万人当たり3~5人がかかるというデータが出ています。
今現在(2,020年)の日本の人口が125,708,382人ですから、Bell麻痺は14,000~50,000人が、Ramsay Hunt症候群は3,800~6,000人がかかっている、ということになります。
01) 顔面神経麻痺の診断(解説/特集)江崎真一ら 耳鼻咽喉科・頭頚部外科88(7) 456-460、2016.
02) Causes and management of facial nerve palsy. Spencer et al.Br J Hosp Med (Lond). 2016 Dec 2;77(12):686-691.
03) Ramsay Hunt症候群-過去・現在・未来- 村上信五 耳鼻頭頸92(4):348-359,2020
04) FacialNerveParalysis.Owusu JA, Stewart CM, Boahene K.Med Clin North Am. 2018 Nov;102(6):1135-1143.