眼精疲労
眼精疲労
シンプルに言うと「一晩経っても改善しない目の疲れ」です。皆さんの中には、長時間の読書やパソコン操作で目が「ショボショボ」する。目の奥が「ジーンと痛む」といった経験はございませんか?大抵はこういった目の疲れ(疲れ目)は一晩経つと解消されます。目も手足同様に長時間使うと疲れが溜まり、だるさ・痛みといった「疲れ」が出てきます。
眼精疲労とは、このような状態が高じた病気です。症状が重くなり一晩眠っても症状が回復せず、日常生活に支障をきたします。明確な定義付けがあるわけではないので「疲れ目」と混同しがちですが、目の症状以外にも「頭痛」「肩こり」といった全身に疲れの症状が併せて見られる際は眼精疲労の状態に発展している可能性がございますので、眼科受診をお勧めいたします。
目の疲れに関する症状が多いので「疲れ目」と間違う方、同じ状態と勘違いする方が多いです。医学的には「疲れ目」と「眼精疲労」は違うものとされており、「疲れ目」は一時的な目の疲れを指し、睡眠や休息をとって解消されるものです。一方「眼精疲労」とは、「疲れ目」が高じた状態です。一晩経っても目の症状が改善されず、自律神経の乱れで頭痛・肩こり・イライラするといったメンタル面の症状など「全身症状」が見られます。このような全身症状が改善しないときは注意しましょう。
また、眼精疲労ではまぶたが「ピクピクする(痙攣)」「重く感じる」といった症状が見られ、眼瞼下垂や眼瞼痙攣と間違う人もいます。関連症状で主訴を見誤ることもありますので適正な治療をするためにも眼科受診をお勧めいたします。
見分け方は全身症状があること、一晩しっかり睡眠をとって安静にしても改善しない。
その場合は、眼科受診をお勧めいたします。
従来は、中高年(一般的に40〜59歳のかたを指す)の方に多く見られましたが、現代社会ではデスクワーク・リモートワークの増加、スマートフォンの普及や、社会人になり生活様式の変化が激しい20代の若年層にも見られる疾患となりました。
男女など性別的な要素は関連がございません。
余談ですが、眼精疲労患者様はパソコンやスマートフォンといった、世の中の環境・生活様式の変更のタイミングでも増加した背景がございます。皆さんも過度な集中を要する作業は適度な休憩を取り入れるよう注意しましょう。
「一晩経っても改善しない」以下のような症状が見られるときは「眼精疲労」の可能性があります。目の症状と全身症状に分けてお示しいたします。(※症状が重篤化(重くなる)すると全身症状が見られます。)
眼精疲労は、一晩安静にしても改善しないものです。スマホ(スマートフォン)・TV(テレビ)・読書を長時間続けると以下のような症状が見られます。
以下のような症状が見られる場合は眼科受診をお勧めいたします。
目の症状
全身症状(からだの症状)
眼精疲労の原因は、そのタイプごとに分類されます。
一般的には、目を長時間酷使する生活環境(長時間のPC・スマホ操作や読書・細かな作業すする方)や眼精疲労のきっかけとなる病気が原因となるケースが多いです。(以下の【眼精疲労の種類とは】にて、詳細へ続きます。)
眼精疲労は、長時間のパソコン・スマートフォンの操作やテレビの視聴、細かな作業や読書といった背景が主要因で起こるケースが多く見られますが、その他に「目の調節機能(光の屈折)の異常」や「目の疾患」により引き起こされることもあります。眼精疲労はこの要因により分類することができます。
調節性眼精疲労(屈折性眼精疲労)とは、屈折異常(近視・遠視・乱視・不同視、ピントが合わないなど、物の見え方)を要因とする眼精疲労です。ピントを合わせる仕組みは、目の水晶体を支える毛様体筋とチン小帯で支えられています。毛様体筋は伸縮することで水晶体の厚みを調整しピントを合わせています。長時間目を酷使する作業や読書はこの毛様体筋の疲労を招きます。また、加齢による調節機能の低下も要因として考えられます。
加えまして左右の視力の差が大きい場合、脳がうまく左右の身で見た映像の左右差の処理・ピント調整ができず目の疲れ・痛みを感じるようになります。これを不等像性疲労といいます。
目の表面は、通常涙の「質」と「量」が正常に保たれることで乾燥や異物の付着・感染症から保護されています。ドライアイでは、このバランスが崩れることで自覚症状が出てきます。ドライアイの状態では目に負担がかかりやすく疲れが溜まりやすい状態にあります。また、デスクワークでPCモニター画面など、長時間見ている方(集中状態)では「まばたき」の回数も減りドライアイと眼精疲労を併発している方もしばしば見られます。
オフィスワークで冷房や送風機が強い環境にいる方はドライアイになりやすい傾向にありますので適度な調整を意識しましょう。
緑内障は進行性の眼疾患で視野障害(視野欠損:視野が欠けて見える)を伴います。この欠損部分が視界の中心部などになると物が霞んで見えるために「目を凝らして物を見る」ようになります。このように無理に補正しようと目の周りの筋肉を無意識に使うことが続くと眼精疲労の原因に繋がっていきます。
白内障は、物も見るレンズの働きをする水晶体が白く濁り「物が見えづらい」「光が眩しく感じる」といった状態が続き目の疲労が蓄積すると眼精疲労を引き起こします。白内障においては、日帰り手術などでレンズの曇った部分を取り出し代わりのレンズを入れる手術を行いますが、術後は物の見え方が変わりますので、この見え方の差異の大きさを要因とした眼精疲労を引き起こすことがあります。この場合は、我慢せずに眼科医に相談すると良いでしょう。
左右の目が別々の方向を向いている斜視の状態では、正常な人に比べ左右の目線を合わせる労力を強いられるために目が疲れやすく、眼精疲労になりやすいとされます。
加齢に伴い水晶体は弾力を失い厚みが増していきます。目の筋肉(毛様体筋)がピントを合わせようと働きますが、弾力が失う分水晶体が可変しづらくなり、その分ピントを合わせる機能が低下していき、物が見えづらくなります。こうした状態が眼精疲労の要因となります。
屈折異常の状態では物を見るときにピントが合っておらず、それを補正しようとする動きが必要以上に目や周辺の筋肉に負荷をかけ眼精疲労の要因となります。
まぶたを開ける筋肉である挙筋腱膜とミュラー筋が何らかの理由でうまく働かず(加齢やコンタクトレンズの使いすぎで緩むなど)、まぶたが下がった状態を「眼瞼下垂」といいます。
この状態では、まぶたがかさばり視界が狭くしますので、無意識にまぶたを開こうとして力が入り、目の周辺の筋肉に負荷がかかり眼精疲労を引き起こす要因となります。
普段使用するメガネ・コンタクトレンズの度が合っていないことも考えらます。そのため、視力検査をはじめ、眼科疾患が隠れていないかも調べます。主だった検査は【視力検査・眼圧検査・眼底検査など】を行います。眼科医院によっては、ピント調整に重要な働きをする毛様体筋の疲労度を測定する検査を導入している施設もございます。
原因をできるだけ排除することが重要です。当院では検査を行った上で、しっかりお話を伺い原因に合わせた適切な治療を行っていきます。
この場合の眼精疲労は、新しく適正な度数に合わせ、眼鏡(メガネ)やコンタクトを作り直します。
生活習慣の改善や適度な休憩を取り入れることも効果が期待できます。パソコンやスマートフォン、タブレットなどを長時間使用する場合は、1時間に1回、5分程度の休憩を入れるよう心がけてください。モニターの角度など環境面のきめ細かいアドバイスもさし上げています。
さらに、ビタミンが配合された点眼薬や内服薬の処方を行うなど、必要に応じて対応しています。ピント調整に働く筋肉(毛様体筋)が疲労して緊張(硬くなっている)しているのをほぐす効果のある点眼薬の処方など。
正確な統計データはございませんが、厚生労働省が調査したデータの中に、VDT作業(パソコンやモニターなどのを使用する作業)労働者の約68%が身体の疲労や症状を感じており、その割合を見てみると、最多は約91%の「目の疲れ・痛み」を感じており、次いで「肩こり・首のこり」が約74%との結果が得られております。現代では、非常に身近に潜んだ疾患といえるでしょう。皆さんも十分な休憩を取り入れ目の酷使には注意すると良いでしょう。