まぶたの手術と涙の…
「眼瞼下垂の手術時間は、○○分がベスト」 ~「手術時間が短い」「手術件数が多い」 =手術が上手い???~
=「まぶたと涙の専門クリニック」として開院した当院も、開院以降右肩上がりで手術件数が増えています。
おそらく年間約1000件近くになると思われます。
今後、もう少し手術件数は増えていくと考えています。
手術件数の増加に伴い自分の経験値は加速度的に増え、自分の手術が上達していることを日々実感します。
しかしどんなに今後頑張っても、当院のキャパシティーで現在の2倍「年間2000件」になることはないと思います。
それは、「手術時間」には「適正な時間」が存在すると考えているためです。
当院で手術件数が一番多い「眼瞼下垂」を例にお話ししていこうと思います。
眼瞼下垂手術の適正な時間は?
いろいろなHPを見ていると、眼瞼下垂の手術時間に関しても言及されているものがあります。
「20分くらいであっという間に終わります」のように
「お手軽感」「早い」ことをアピールしているものもありますし、
「1時間半くらいかけてしっかりと丁寧に行います」のように
「時間はかかるけど仕上がりは綺麗ですよ」とアピールしているものもあります。
眼瞼下垂の手術時間は何分がベストなのでしょうか?
私の経験や他の医師の手術などを参考にし、導き出した自分の答えは
「眼瞼下垂の手術時間は40分〜70分がベスト」です。
手術時間から見た眼瞼下垂手術の比較
あくまで個人的な経験からですが、手術時間による眼瞼下垂手術のメリットとデメリットを表にしました。
手術時間 | メリット | デメリット |
短時間(30分以内) | ・術後の腫れが少ない |
・重瞼が取れやすい ・再発しやすい(?) |
40~70分 |
・再発しづらい ・術後の腫れが少ない ・重瞼が取れづらい |
|
長時間(80分以上) |
・再発しづらい ・重瞼が取れづらい |
・術後の腫れが強い |
理由など、詳細をこれから述べていきます。
短時間手術のメリットとデメリット
審美的にも気を配った眼瞼下垂手術では、最低でも以下の9つの手順を踏まなければなりません。
- 皮膚を切る
- まぶたを挙上する筋肉をむき出しにする
- 筋肉を縫い縮めてまぶたの高さ、左右差を合わせる(座位で)
- 「内縫い」で重瞼(二重)を作成する
- まぶたの脂肪(ROOFや眼窩脂肪)が多い場合は切除する
- 皮膚を仮縫いする
- 再度座位にして二重幅も確認する
- 二重の幅を調整する
- 皮膚を縫合する
術者の手の速さには限界がありますから、これらの工程をきちんと行う場合は、私の経験上どんなに早く手を動かしても最低35分は必要です。
これ以上の短い時間で眼瞼下垂手術を行っている場合は、①〜⑨の工程どこかを省いている、ということになります。
メリット
短時間の手術のメリットは、何といっても「術後の腫れが少ない」ということです。
術後の腫れが少ないということは、元に戻るまでの時間いわゆる「ダウンタイム」が少ないということになります。
見栄えの問題もありますが、腫れが少ないと術後左右差が出る頻度が少ないことを実感します。
デメリット ① 早期再発の可能性
短時間の手術では、時間を短縮するために必ず手術の内容に工夫を加えています。
例えば、私が行っている「挙筋前転術」や「挙筋短縮術」はいわゆる「短時間の手術」ではありませんが、まぶたを上げる筋肉を周囲からしっかりとはがして縫い縮めるために術後周囲との癒着(くっつき)面積が多く、早期の再発はほとんどありません。
それに対しいわゆる「タッキング」と呼ばれる「短時間の手術」では、時間短縮を図るために周囲からはがす量を少なくしています。しかしその分周囲の組織とのくっつき(癒着量)は少なく、理論上は再発の可能性が若干高まると思います。
デメリット ② 重瞼(二重)がとれやすい
また、「短時間の手術」にありがちなのが、重瞼を「外縫い」で作成することです。
当院のまぶたの手術に対する考え方を述べたページ「まぶたの手術へのこだわり」にも記載しましたが、重瞼(二重)の作成方法は「内縫い」と「外縫い」の2つに分けられます。
そして、時間短縮のためにいわゆる「外縫い」で重瞼(二重)をする医師が多いのが現状です。
長時間手術のメリットとデメリット
今からお話しする内容は、前提として「医師の技術が成熟している」場合のお話です。
そもそも「手術に慣れていない初心者」の場合は「長時間だけどデメリットばかりの手術」になります。
メリット ① 早期再発しづらい
時間をしっかりとかけて手術を行う場合の術式は「挙筋前転術」や「挙筋短縮術」のことが多く、周囲との癒着をしっかりとさせて再発を防ぎます。
メリット ② 重瞼(二重)が取れづらい
先ほどの「短時間の手術は重瞼を外縫いで作成することが多い」というお話とは逆に、長時間の手術では重瞼を「内縫い」で作成することが多いです。
当院のまぶたの手術に対する考え方を述べたページ「まぶたの手術へのこだわり」にも記載しましたが、「内縫い」で重瞼作成をすると重瞼(二重)が長持ちします。
「内縫い」をしない医師の意見として、「内縫いで作成した重瞼はまつ毛が外反(眼瞼外反)する」というものがあります。
しかし、これは間違っています。
しっかりとした技術を用いれば、内縫いでも眼瞼外反することはありません。
デメリット
短時間手術のメリットが「術後の腫れが少ない」ということは、長時間手術のデメリットは「術後の腫れが強い」ということになります。
術後の腫れが強いということは、以下のことにつながります。
- ダウンタイムが長い
- 術後の左右差が出やすい
- 再手術しやすい
手術時間は40~70分、一日3~4件が限界です
いかがでしたでしょうか?
以上の理由により手術時間が40~70分の場合に最も完成度の高いまぶたができると私は考えています。
そのため当院では、
「一人の医師で一日10件も手術しています!」
「じっくり丁寧に手術しますので、一人当たりの手術時間は90~120分くらいです。」
というスタンスではありません。
ネットでの口コミだけでなく本当の「口コミ」によっても患者さんにお越しいただくことが多くなってきており、毎日手術をしておりますが「手術が2か月待ち」という場合も出てきております。
しかし当院では、デメリットに目をつぶり手術時間を短縮する工夫をすることは絶対にありませんので、眼瞼下垂の手術は半日で3~4件が限界です。
今までも、これからも「100点満点のまぶた」を目指して日々精進してまいりますので、「手術日が大分先になってしまう」というご不満もあろうかと思いますがご理解のほどよろしくお願いいたします。