今回は、眼瞼下垂の手…
眼瞼下垂の治療、どこに行くべき?眼科?形成外科?美容外科? 〜後悔しない選び方〜
まぶたが重くて目が開けにくい。視界が狭くなって運転しづらい——
そんな症状が続くと、「眼瞼下垂(がんけんかすい)」という病気が疑われます。
では、治療や手術を受ける場合、どの診療科を受診すればよいのでしょうか?
「眼科」「形成外科」「美容外科」……と選択肢が多く、インターネットで調べれば調べるほど迷ってしまう方も多いようです。
今回は、各診療科の特徴とメリット・注意点をわかりやすくご紹介します。年間1200件前後の眼瞼下垂手術を手がける眼形成外科医の立場から、偏りなくご説明します。
眼科の特徴
目のプロフェッショナル
眼科の一番の強みは、まぶたと眼球を同時に診られることです。
眼瞼下垂の手術は「見た目」だけでなく、「視野の確保」や「目の保護」など機能的な改善が重要です。
術後のリスクにもすばやく対応
手術直後は一時的にまぶたが閉じにくくなり、目がゴロゴロしたり、角膜に傷がついたりすることがあります。これを「兎眼」と呼びますが、多くは数日から数週間で自然に改善します。とはいえ、その間は点眼治療や保護が必要なので、眼科での診察ができると安心です。
埋没法のトラブルにも強い
以前に受けた「埋没法(二重まぶたの糸留め)」の糸が、年数を経て裏側に出てきてしまい、角膜に傷をつけてしまうケースも少なくありません。実際に、痛みや視力低下で来院された方の中には、10年以上前の糸が眼球を傷つけていたという例もあります。眼科では専用のスコープ(細隙灯顕微鏡)で糸を確認・除去できるため、こうしたトラブルにも対応可能です。
他の病気が隠れていることも
「手術を受けたのにまぶたが上がらない」とご相談いただいた方の中には、眼瞼けいれんや重度のドライアイなど、別の病気が原因だったケースもあります。こうした病気は眼科でないと見逃されやすいので、やはり最初は眼科的評価があると安心です。
!眼科の弱み
一方で、見た目(審美性)については、必ずしも専門教育を受けているわけではなく、仕上がりの美しさに対するこだわりは医師によって差があります。
形成外科の特徴
傷あとをきれいに治す
形成外科は「傷あとを目立たせずに治す」専門家です。顔のケガや手術の再建を多数手がけており、皮膚の縫い方やデザインの美しさに定評があります。
- 傷あとを目立ちにくくしたい
- 他の部位の形成手術と合わせて相談したい
こういった場合には良い選択肢になります。
!形成外科の注意点
ただし、眼球を診察するための細隙灯顕微鏡を常備していない施設が多く、目のトラブルには眼科との連携が必要になります。また、まぶたは「体のパーツのひとつ」という位置づけであり、専門的にまぶたを診ている医師はごく一部です。
美容外科の特徴
見た目を重視する自由診療のプロ
美容外科の魅力は、審美性をとことん追求できるところです。二重まぶた、たるみ取り、眉下切開など自由診療の施術を数多く扱っており、見た目の改善に特化した手術の選択肢が豊富です。
!美容外科の注意点
美容外科では、他の科からいきなり転職してくる医師も多く、技術レベルに大きな差があるのが現実です。
日本美容外科学会(JSAPS)には約460名の医師が所属していますが、美容外科を名乗る医師は全国に数千人いると言われており、専門的トレーニングを受けていないケースも少なくありません。
また、眼球の診察機器を備えている施設は少なく、術後のトラブルには他院への受診が必要になることもあります。
眼形成外科の特徴
眼科+形成外科の“いいとこどり”
眼形成外科(Oculoplastic Surgery)は、まぶた・涙道・眼窩など、目のまわりを専門とする眼科の中の形成系サブスペシャリティです。
眼球をしっかり診察しつつ、形成外科的な縫合法や審美的配慮を持って手術を行います。
いわば、「眼科+形成外科」のいいとこ取りです。
科目 | 眼球診察 | 見た目のこだわり | 埋没糸対応 | 顕微鏡手術 |
---|---|---|---|---|
眼科 | ◎ | ○ | ◎ | ◎ |
形成外科 | ○ | ◎ | ○ | ○ |
美容外科 | ○ | ◎ | ○ | ○ |
眼形成 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
クリニックを選ぶときのポイント
- 1
その医師が年間何件の眼瞼下垂手術をしているか
- 2
保険診療か自由診療かの説明が明確か
- 3
トラブル時にすぐ対応できる体制があるか
- 4
費用と手術内容が分かりやすく提示されているか
- 5
“名医”“最安値”などの誇大広告に頼っていないか
医療広告ガイドラインでは、「比較して優れている」といった表現は原則として禁止されています。誠実なクリニックは、あえてそのような表現を避けています。
再手術についての正しい理解を
眼瞼下垂の手術後、ごくまれに再手術が必要となることがあります。原因としては「まぶたの戻り(再発)」や「左右差の残存」などが挙げられます。
一般的な再手術率は10~20%と言われていますが、当院では約2%程度と比較的低く抑えられています。
ただし、再手術は初回手術より腫れやすい傾向があるため、しっかりと術前説明を行った上で対応しています。
費用の目安と流れ
眼瞼下垂手術は、機能的な障害(視野が狭い、目が開きにくいなど)があれば、健康保険が適用されます。
- 保険診療の場合
(両側・日帰り) -
- 自己負担額(3割):約47,000円
- 自己負担額(1割):約15,000円
- 自費診療の場合
(両眼) -
- 約20万~50万円前後(クリニックにより大きく異なります)
まとめ
診療科 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|
眼科 | 機能改善・術後ケアに強い | 審美目的には向かないことも |
形成外科 | 傷あとに強い | 眼球のトラブルに非対応な場合が多い |
美容外科 | 見た目に特化 | 医師の技量に差が大きい |
眼形成 | 見た目+機能の両立 | 専門の医師が限られている |
「どの診療科を受けるか」ではなく、「信頼できる医師と出会えるか」がもっとも大切です。まずは一度ご相談ください。医師の説明に納得できるか、話しやすいと感じられるか。それが、治療成功の第一歩です。
- 1. Ophthalmic Plastic and Reconstructive Surgery. “Incidence of lagophthalmos after ptosis repair.” 2002.
- 2. 日本形成外科学会 眼瞼下垂ガイドライン(2022年版)
- 3. 日本美容外科学会(JSAPS) 公式ウェブサイト(2024年4月時点 会員情報)
- 4. 厚生労働省 医療広告ガイドライン(2024年改訂版)
院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。