疲れたように見える「…
眼瞼下垂や重瞼(二重)術など、上まぶたの手術の後遺症(合併症)とは?
まぶたの術後後遺症(合併症)データについて
上まぶたの手術――眼瞼下垂や重瞼(埋没法・切開法)など――は、視機能と外観を同時に改善できる反面、ごくまれに合併症が起こります。当院を含む眼科系クリニックでは、術前診察・術中操作・術後フォローの“三段階安全管理”を徹底し、重篤事例はほぼ未然に防げています。それでも統計上は全体の合併症率が約9.5%と報告されており、その多くは軽微または一時的です⁵。
上まぶたの手術後に起こった主な合併症
合併症 | 発生頻度 (参考) |
症状と対処の要点 |
---|---|---|
角膜びらん (糸の露出) |
発生頻度(参考):38.1% | 埋没糸が裏側に出ると黒目に傷を作り、「ゴロゴロ感」「痛み」が出現。糸抜去+点眼(治療用コンタクトレンズ)で改善³。眼球の診察、診断は、眼科での診察が必須。 |
眼瞼外反 | 発生頻度(参考):28.6% | まつげが過度に反り、根元が露出。多くは数週間~数カ月で軽快するが、残存例は再調整が必要。 |
角膜炎 (兎眼による) |
発生頻度(参考):19.0% | まぶたが完全に閉じない(兎眼)と、眼球が傷つき炎症を起こす。一時的なものがほとんどで、人工涙液や軟膏、(ひどい場合は)就寝時アイパッチで治ることが多い⁴。診断には眼科での診察が必須。 |
結膜浮腫 | 発生頻度(参考):4.8% | 白目の膜(結膜)がむくむ。通常48時間以内に自然消退する。長引く場合は低濃度ステロイド点眼を短期使用。ステロイド点眼は、副作用が出る場合があるため、眼科でのフォローアップが必須。 |
まれだが注意すべき重篤合併症
- 球後出血
- 術後0~3時間以内に強い腫脹と視力低下を来すことがあり、報告頻度は0.055%(約1/2,000例)¹。緊急減圧処置で視力を守ります。
- 術後感染
- 外来での上まぶた手術における感染率は0.04%²と極めて低いものの、発赤やズキズキする痛みが強い場合は早期受診が必須。
各合併症の詳しい解説
1. 角膜びらん(黒目の傷)
近年人気の「切らない二重術(埋没法)」は、どの方式でもまぶた裏への糸露出リスクがゼロではありません。術直後は問題がなくても、数年後に糸が移動して角膜をこする“晩発性露出”も報告されています³。傷が浅いうちに抜糸すれば視力への影響は残りません 。

色に染まっている部分は全て傷。

裏側に露出していた例
2. 眼瞼外反(まつげが反り返る)

術直後の腫れや重力の影響で一時的に起こりやすく、多くは数週間で自然矯正されます。まつげの根元が見え続ける場合や、目が乾きやすい場合は再手術を検討します 。


3. 角膜炎・ドライアイ悪化
上まぶたを引き上げる眼瞼下垂手術では、閉瞼不全(兎眼)による乾燥が起点となり、眼球表面に点状の傷(SPK)ができることがあります。ドライアイ素因があるとリスクが上がるため、術前からの点眼治療を継続します⁴。ほとんどの方は1カ月くらいで改善します。

眼球の傷(SPK)は、眼科で診察しないと分かりません
4. 結膜浮腫
白目とまぶたの裏を覆う結膜に一過性の水分貯留が起こり、ゼリー状にふくれる状態。見た目のインパクトに比べ痛みは少なく、48時間ほどで自然に平坦化するのがほとんどです。もし長引く場合はステロイドの点眼薬を使用します。
ステロイドの点眼薬は、副作用として「高眼圧」「緑内障」があります。
これらは眼科の診察ができないと診断をすることができません。
眼科の診察ができる医師を受診することをお勧めします。
術後セルフチェック&フォローアップ
- 片眼ずつ視力を確認し、“視界が白っぽい”“急に見えにくい”と感じたらすぐご連絡ください。
- 強い眼痛・急激な腫脹・発熱がある場合は時間外でも受診を。
- 当院標準フォロー:術後1週間 → 2週間 → 2カ月 → 6カ月。合併症の早期発見のため必ずご来院ください。
よくあるご質問(FAQ)
- コンタクトレンズはいつから再開できますか?
- 切開した部分がしっかりくっつく術後3週間以降を推奨しています。
- 仕事は何日休めばいい?
- デスクワークであれば2~3日、力仕事や長時間の屋外作業は1週間程度余裕をみてください。
- 元に戻る/二重幅が変わることは?
- 腫れの経過や体質で微調整が必要になるケースがあります。気になる形の変化は早めにご相談ください。
おわりに
合併症の頻度は決して高くありませんが、“ゼロ”ではありません。上まぶたの手術を検討される際は、眼科的診断と手術後の対応まで一括して行える医師のもとで受けることが、ご自身の目を守る最良の方法です。当院では毎日午前外来・午後手術の体制で経験を積み、手術時間の短縮と安全性の両立を追求しています。気になる症状やご不安があれば、いつでもお気軽にご相談ください。
参考文献
- ¹ Baillif O et al. Incidence of post blepharoplasty orbital hemorrhage. Ophthalmic Plast Reconstr Surg. 2004.(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- ² Yen MT et al. Infection rates in outpatient eyelid surgery. Ophthalmic Plast Reconstr Surg. 2009. (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
- ³ Chen Y et al. Recurrent corneal erosion after buried suture double eyelid blepharoplasty. Eye Vis. 2024. (pmc.ncbi.nlm.nih.gov)
- ⁴ Chen X et al. Cosmetic blepharoplasty and dry eye disease: a review. Int J Ophthalmol. 2020. (pmc.ncbi.nlm.nih.gov)
- ⁵ García‐Guilarte RF et al. Complications in blepharoplasty: How to avoid and manage them. Plast Reconstr Surg. 2011. (researchgate.net)
院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。