今回は、眼瞼下垂の手…
逆さまつげに「まつげパーマ」は安全か?
当院はまぶたの手術と涙の治療に特化したクリニックです。開院初年度は約1,200件の手術を行い、最も多いのは眼瞼下垂、次に逆さまつげ(睫毛内反症・内眼角贅皮)でした。
「まつげが黒目に当たって痛い」「朝から充血する」「コンタクトがしみる」——こうした訴えは小学生のころから見られることもあります。診断には細隙灯顕微鏡(スリットランプ)で、本当に角膜・結膜にまつげが触れているかを確認する必要があります¹²。自己判断で“様子見”のまま年齢を重ね、手術適応があるのに長年放置されているケースも少なくありません。
その間の“しのぎ”としてまつげパーマやビューラーを続ける方が多いのも事実です。では、逆さまつげの方にまつげパーマは安全か?眼科の立場から、仕組み・リスク・根本治療をわかりやすく整理します。
まつ毛パーマとは?
まつげパーマ(ラッシュリフトを含む)は、薬剤で毛の結合をいったん緩め、曲げた形で再固定する美容施術です。一般的に
- 1剤(アルカリ性)で毛のジスルフィド結合を一時的に切り、曲げやすくする
- 2剤(酸化剤=酸性)でその形を固定する
という髪のパーマと同系統の原理を用います。目のすぐ近くでアルカリ剤や酸化剤、接着剤(グルー)を扱うため、眼表面(角膜・結膜)への刺激やアレルギーが起こり得ます³。レビューでもまつげ関連の美容処置でアレルギー性眼瞼炎、毒性角結膜炎、角膜上皮障害などの合併症が報告されています³ ¹³。
!ポイント
まつげパーマは見た目の角度を一時的に整える美容施術であり、逆さまつげの原因(まぶた側の構造)を直す医療ではありません¹²。
パーマ液は目に良くない
結論として、薬剤が絶対に眼に触れないことを保証できない限り、安全とは言い切れません。アルカリ・酸の薬剤が眼に入ると「化学眼外傷」となり、角膜や結膜が“やけど”(化学熱傷)を起こします。軽症でも痛み・流涙・かすみが出て、重症では角膜瘢痕が残り視力に影響することがあります⁴⁵⁶。これは眼科救急で、ただちに洗眼→専門的治療が必要です⁴⁵。
国内の消費者被害として、まつげ関連施術での薬液混入による角膜障害や強い刺激症状の相談が繰り返し報告されています⁷。エクステ接着剤や除去剤に関連した事例、施術時の薬液滴下による角膜びらんなどの報告もあります⁷。さらに器具による外傷(ロッド・ビューラー等)や、接着剤・染料によるアレルギーが背景となる症例報告も蓄積しています³⁸。(国民生活センター, canadianjournalofophthalmology.ca)
もし薬剤や異物が入ってしまったら(一般的な目安)
-
1こすらない
-
2コンタクトを外す
-
3流水で洗眼(10〜20分以上が目安)
-
4早めに眼科へ
ガイドでは“とにかく遅らせず洗う”ことが強調されています⁴⁹。ご家庭ではまず十分な流水で中和し、受診後にpH中性化の確認や適切な点眼・保護などを行います⁴⁶⁹。 -
5逆さまつげを“パーマで乗り切る”ことは非推奨:黒目に当たる毛先で小さな傷が反復しているところへ薬剤や器械刺激が加わると、治りにくさや症状悪化のリスクがあります。美容的な見た目の持ち上がりは得られても、根本解決にはなりません³。
唯一の根本的な解決法は、手術のみ
「逆さまつげ」は状態の呼び名で、実際には原因がいくつかあります。
代表例
- 睫毛内反・内眼角贅皮
- まつげだけが内向き(毛根処置や向きの矯正が中心)
- 眼瞼内反
- まぶた自体が内側へ反り返る(外科的矯正が基本)
治療は原因別に最適化します。目的はただひとつ、「まつげを角膜に当てないこと」。過不足のない矯正を行い、機能(角膜保護)と見た目の自然さの両立を目指します。
手術が不安な方へ
- ダウンタイム
- 内出血は数日〜1、2週間(個人差あり)腫れは1~3カ月程度続く場合があります。
- 合併症
- 左右差・再発・出血・感染等(ゼロにはできません)
- 期待できること
- 黒目への接触を断つ=ゴロゴロ・充血の再発を防ぎやすい。術式は原因に即して選択します¹²¹
受診の目安(セルフチェック)
朝から充血や涙目が続く | |
コンタクトがしみる/ゴロゴロする | |
下を見ると特につらい | |
鏡でまつげ先端が黒目側に触れているように見える | |
点眼をしても良くならない |
ひとつでも当てはまれば、角膜染色・スリットランプ検査をおすすめします。症状や生活背景に合わせ、当面のケア(保護用点眼・軟膏など)と根本治療の時期をご提案します¹⁰¹。
よくあるご質問(Q&A)
- 子どもの逆さまつげは自然に治りますか?
- 乳幼児では自然に軽くなることがあります。角膜の傷が続く/乱視が強いなどでは、学童期以降に手術を検討します¹²¹⁴。
- まつげパーマを続けながら様子を見てもいいですか?
- おすすめしません。薬剤・器具の刺激で角膜の傷が悪化する恐れがあります。原因に合った治療を第一選択にし、必要に応じ保護的な点眼・軟膏で症状を抑えつつ計画します³⁴⁵。
- もし薬剤が入ったら?
- こすらず、コンタクトを外し、流水で10〜20分以上洗眼→早めに眼科へ。“遅らせず洗う”ことが大切です⁴⁶⁹。
- 手術は痛い?仕事はどのくらい休む?
- 局所麻酔で行います。内出血は通常数日〜1、2週間で落ち着くことが多いですが、腫れは数カ月続くことがあります(個人差あり)。お仕事・ご予定に合わせた時期をご相談ください。
まとめ
- まつげパーマは美容施術で、逆さまつげの根本治療ではない。
- 目の際で薬剤や器具を使うため、結膜炎・角膜の傷・化学眼外傷などのトラブルが起こり得る³⁴⁵⁶⁷。
- 根本解決は、原因に合わせた手術(まぶたの矯正・毛根処置)¹⁰¹²¹⁴。
- 子どもは自然改善する例もあるが、角膜障害が続く/視機能への影響が懸念される場合は適切な時期に矯正¹²¹⁴¹⁵。
- 迷っている段階でも検査だけでOK。機能(角膜保護)と見た目のバランスを大切に、最適な方法をご提案します。
引用一覧
- 1. Ahn/AAPOS: Epiblepharon(米国小児眼科斜視学会・一般向け解説). 2025. 乳幼児で自然軽快すること、学童期以降に症状が続けば手術検討。(aapos.org)
- 2. EyeWiki: Congenital and Acquired Epiblepharon. 2025. エピブレファロンの病態・東アジアに多い・診断の要点。(eyewiki.org)
- 3. Masud M, et al. Eyelid cosmetic enhancements and their associated ocular adverse effects. Clin Ophthalmol 2019(PubMed Central). まつげ美容処置での毒性角結膜炎・アレルギー等。(PMC)
- 4. EyeWiki: Chemical (Alkali and Acid) Injury of the Conjunctiva and Cornea. 化学眼外傷は眼科救急、直ちに洗眼。(eyewiki.org)
- 5. AAO EyeNet: Treating Acute Chemical Injuries of the Cornea. 急性期の重症度と瘢痕・視機能への影響。(AAO)
- 6. Singh P, et al. Ocular chemical injuries and their management. Community Eye Health J 2013(PMC). 眼表面損傷・緊急性。(PMC)
- 7. 国民生活センター(NCAC): The never-ending safety hazards of eyelash extension treatments. 施術に伴う健康被害の注意喚起。(国民生活センター)
- 8. Ullrich K, et al. Semipermanent eyelash extensions causing bacterial keratitis: case report. Can J Ophthalmol 2013. 器具・接着剤関連の角膜感染例。(canadianjournalofophthalmology.ca)
- 9. Stevens S. How to irrigate the eye. Community Eye Health J 2017. 緊急洗眼は少なくとも15分以上、遅らせない。(PMC)
- 10. AAO: What is Trichiasis?(一般向け). 内向き睫毛の標準治療は毛抜きの一時対処に加え、毛根処置や向きの矯正。(AAO)
- 11. Texas Children’s Hospital: Epiblepharon(一般向け). 小児で自然軽快も、角膜障害例は手術。(Texas Children’s)
- 12. Kim JS, et al. The Clinical Characteristics and Surgical Outcomes of Epiblepharon. 2014(PMC). 東アジア小児に多い・診断・術式の概説。(PMC)
- 13. Moshirfar M, et al. Chemical conjunctivitis and DLK after eyelash extension removal. Am J Ophthalmol Case Rep 2018. 施術後の化学性結膜炎・角膜合併症。(サイエンスダイレクト)
- 14. Takeuchi M, et al. Scientific Reports 2023. 小児エピブレファロンの術後屈折(乱視)に関する研究。(Nature)
院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。