今回は、眼瞼下垂の手…
まつげの美容ケアは安全か?まつげパーマや「伸びる薬」のリスクと眼の健康
当院はまぶたの手術と涙の治療に特化したクリニックです。開院初年度は約1,200件の手術を行い、最も多いのは眼瞼下垂、次に逆さまつげ(睫毛内反症・内眼角贅皮)でした。女性の患者数が約8割くらいなのですが、「もっと魅力的な目もとにしたい」という患者さんの声が多いと実感します。まさに、当院のスローガン「機能も、見た目も。」です。
しかし、まつげパーマや「まつげが伸びる薬」など、巷にあふれる美容ケアには、眼科医の視点から見ると見過ごせないリスクも存在します。今回は、これらのケアが眼の健康(逆さまつげや眼瞼下垂など)に与える影響について詳しく整理します。

目次
まつげパーマとは?逆さまつげへの安全性
まつげパーマ(ラッシュリフトを含む)は、薬剤で毛の結合をいったん緩め、曲げた形で再固定する美容施術です。目のすぐ近くでアルカリ剤や酸化剤、接着剤(グルー)を扱うため、眼表面(角膜・結膜)への刺激やアレルギーが起こり得ます。2)
レビューでもまつげ関連の美容処置でアレルギー性眼瞼炎、毒性角結膜炎、角膜上皮障害などの合併症が報告されています。2)10)

パーマ液は目に良くない
結論として、薬剤が絶対に眼に触れないことを保証できない限り、安全とは言い切れません。アルカリ・酸の薬剤が眼に入ると「化学眼外傷」となり、角膜や結膜が”やけど”(化学熱傷)を起こします。
軽症でも痛み・流涙・かすみが出て、重症では角膜瘢痕が残り視力に影響することがあります。2)3)4)5)これは眼科救急で、ただちに洗眼→専門的治療が必要です。3)4)
国内の消費者被害として、まつげ関連施術での薬液混入による角膜障害や強い刺激症状の相談が繰り返し報告されています。6)エクステ接着剤や除去剤に関連した事例、施術時の薬液滴下による角膜びらんなどの報告もあります。6)さらに器具による外傷(ロッド・ビューラー等)や、接着剤・染料によるアレルギーが背景となる症例報告も蓄積しています。2)7)(国民生活センター、canadianjournalofophthalmology.ca)
特に、逆さまつげの方が症状を和らげるためにまつげパーマを利用することについては、以下の理由から推奨できません。
逆さまつげを”パーマで乗り切る”ことは非推奨
まつげパーマは見た目の角度を一時的に整える美容施術であり、逆さまつげの原因(まぶた側の構造)を直す医療ではありません。1)
黒目に当たる毛先で小さな傷が反復しているところへ薬剤や器械刺激が加わると、治りにくさや症状悪化のリスクがあります。美容的な見た目の持ち上がりは得られても、根本解決にはなりません。2)
一方で、まつげパーマのような施術ではなく、「自まつげそのものを伸ばしたい」と考える方も多いでしょう。その際によく使われる「まつげが伸びる薬」にも注意が必要です。
「まつげが伸びる薬」とは:その効果と意外な副作用
巷にはまつげに対する効果をうたった美容液などありますが、これらよりも「まつげが伸びる薬」の方が確実に伸びます。医療機関でしか購入できません。この「まつげが伸びる薬」は、そもそも視野が欠けていく病気「緑内障」治療の点眼薬(プロスタグランジン関連薬)として開発されました。

プロスタグランジン関連薬は眼圧を下げる効果が高く、緑内障の治療薬として良い結果を出しています。

まつげを「太く、多く、濃く」する効果
この薬は、まつげの毛周期(サイクル)の中で以下の働きをし、魅力的なまつげを作ります。12)
- 休止期のまつげを成長期へと促し、まつげを伸ばす。
- まつげの毛包を大きくし、まつげを太くする。
- まつげのメラニン量を増やし、まつげの色味を濃くする。
使用者の54%以上に効果があるという報告11)もあり、非常に良い薬ではありますが、当院ではおすすめはしておりません。なぜなら、見た目にも悪影響を及ぼす様々な副作用があるからです。
使うと眼瞼下垂になる?知っておくべき副作用
「まつげが伸びる薬」には、以下のような副作用が報告されています。
- 目が赤くなる(充血):眼球に付着すると、白目部分の血管が太くなり、いわゆる「充血」になります。割合的には4割以上です。13)
- 角膜上皮障害:防腐剤の影響で目の表面に傷がつく場合があります。
- まぶたが黒ずむ:割合的には約30%というデータも出ています。14)
- まぶたがくぼむ、下がる(眼瞼下垂):これらをまとめてDEUSやPAPと呼びます。割合的には60%となっており、まぶたが下がり、くぼみが生じる可能性があります。15)
以下の写真が、「まつげが伸びる薬」を付けた方のまぶたの変化です。

正常なまぶた

「まつげが伸びる薬」を付けているため、まぶたが下がり、黒ずみ、くぼみがある。
このように、まつげの美容ケアには常に眼へのリスクが伴います。万が一のトラブルに備えて、以下の対応を知っておくことが大切です。
受診の目安(セルフチェック)
まつげの美容ケアを検討されている方や、逆さまつげでお悩みの方は、以下の項目をチェックしてみてください。
- 朝から充血や涙目が続く
- コンタクトがしみる/ゴロゴロする
- 下を見ると特につらい
- 鏡でまつげ先端が黒目側に触れているように見える
- 点眼をしても良くならない
ひとつでも当てはまれば、角膜染色・スリットランプ検査をおすすめします。症状や生活背景に合わせ、当面のケア(保護用点眼・軟膏など)と根本治療の時期をご提案します。1)9)

もし薬剤や異物が入ってしまったら(一般的な目安)
- こすらない
- コンタクトを外す
- 流水で洗眼(10〜20分以上が目安)
- 早めに眼科へ
ガイドでは“とにかく遅らせず洗う”ことが強調されています。3)8)ご家庭ではまず十分な流水で中和し、受診後に専門的な治療を受けるようにしましょう。3)5)8)

まとめ
- まつげパーマは美容施術で、逆さまつげの根本治療ではない。薬剤による角膜の傷や化学眼外傷のリスクがある。
- 「まつげが伸びる薬」は効果が高い反面、充血やまぶたの黒ずみ、眼瞼下垂(まぶたの下がり・くぼみ)を引き起こす可能性がある。
- 「自まつげを伸ばす」ことは理論上安全に見えますが、医療用点眼薬を美容目的で使う際は、眼科医の指導のもとリスクを正しく理解することが不可欠。
まつげのケアで気になる症状や、まぶたの下がり・逆さまつげにお悩みの方は、迷っている段階でも検査だけで構いません。機能(眼の保護)と見た目のバランスを大切に、最適な方法をご提案します。
参考文献
- 1) Ahn/AAPOS: Epiblepharon(米国小児眼科斜視学会・一般向け解説). 2025. 乳幼児で自然軽快すること、学童期以降に症状が続けば手術検討。(aapos.org)
- 2) Masud M, et al. Eyelid cosmetic enhancements and their associated ocular adverse effects. Clin Ophthalmol 2019(PubMed Central). まつげ美容処置での毒性角結膜炎・アレルギー等。(PMC)
- 3) EyeWiki: Chemical (Alkali and Acid) Injury of the Conjunctiva and Cornea. 化学眼外傷は眼科救急、直ちに洗眼。(eyewiki.org)
- 4) AAO EyeNet: Treating Acute Chemical Injuries of the Cornea. 急性期の重症度と瘢痕・視機能への影響。(AAO)
- 5) Singh P, et al. Ocular chemical injuries and their management. Community Eye Health J 2013(PMC). 眼表面損傷・緊急性。(PMC)
- 6) 国民生活センター(NCAC): The never-ending safety hazards of eyelash extension treatments. 施術に伴う健康被害の注意喚起。(国民生活センター)
- 7) Ullrich K, et al. Semipermanent eyelash extensions causing bacterial keratitis: case report. Can J Ophthalmol 2013. 器具・接着剤関連の角膜感染例。(canadianjournalofophthalmology.ca)
- 8) Stevens S. How to irrigate the eye. Community Eye Health J 2017. 緊急洗眼は少なくとも15分以上、遅らせない。(PMC)
- 9) AAO: What is Trichiasis?(一般向け). 内向き睫毛の標準治療は毛抜きの一時対処に加え、毛根処置や向きの矯正。(AAO)
- 10) Moshirfar M, et al. Chemical conjunctivitis and DLK after eyelash extension removal. Am J Ophthalmol Case Rep 2018. 施術後の化学性結膜炎・角膜合併症。(サイエンスダイレクト)
- 11) Cheng JW et al. Meta-analysis of medical intervention for normal tension glaucoma. Ophthalmology. 116(7).2009.1243-9.
- 12) Laxman Subedi et al. Preparation of topical bimatoprost with enhanced skin infiltration and in vivo hair regrowth efficacy in androgenic alopecia. Drug Deliv. 29(1).2022.328-341.
- 13) Honrubia F, Garcia-Sánchez J, Polo V et al: Conjunctival hyperaemia with the use of latanoprost versus other prostaglandin analogues in patients with ocular hypertension or glaucoma: a metaanalysis of randomised clinical trials. Br J Ophthalmol 93.2009.316-
- 14) Birt CM, Buys YM, Ahmed IIK, Trope GE. The Toronto area glaucoma society. Prostaglandin efficacy and safety study undertaken by race (the pressure study). J Glaucoma 19. 460–467.
- 15) Aihara M, Shirato S, Sakata R: Incidence of deepening of the upper eyelid sulcus after switching from latanoprost to bimatoprost. Jpn J Ophthalmol 2011.600-4.
- 記事監修
- 院長 勝村宇博

院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。
