当院は、まぶたの手術…
逆さまつげの手術 名医を選ぶ基準とは? ~一生に一度の手術を受ける前に調べること~
逆さまつ毛とは?
逆さまつげは、本来前方へ伸びるまつげが眼球側に倒れ、角膜をこする状態です。まばたきのたびに異物感や痛みを生じ、放置すると角膜に傷が付き視力が落ちることもあります¹。日本人は黒目が大きくまぶたと角膜の距離が近いため、西洋人より症状が出やすいといわれています。
加齢による逆さまつ毛(眼瞼内反症)
加齢で下まぶたの支持組織がゆるむと、まつげの根元が内側へ巻き込みます。朝起きた時の痛みやしみる感じが特徴で、高齢者に多くみられます²。ドライアイが合併すると痛みが強く、外出や運転に支障を来すこともあります。
生まれつきによる逆さまつ毛(睫毛内反症)
乳幼児や学童期に多く、目頭や頬の皮膚が厚いことなどが原因です。涙目や光をまぶしがるしぐさが続く場合は受診が必要³。小児の角膜は治癒が早い一方、慢性的な刺激で乱視が進む恐れも報告されています⁴。
原因
眼瞼内反症の原因
- 下眼瞼牽引筋腱膜(LERs)や靭帯のゆるみ
- コンタクトレンズの長期装用
- 花粉症やアレルギー性結膜炎で目をこする習慣⁵
睫毛内反症の原因
- まぶたの皮膚・皮下脂肪の厚み
- 目頭の皮膚の張り(内眼角贅皮)
近年、眼瞼の構造異常(特に皮膚と眼瞼牽引筋の付着不全)が逆さまつげの本質的原因とされており⁶、手術ではこの構造を修正することが重要です。
治療のタイミング
乳幼児の逆さまつげは成長とともに自然軽快することもありますが、以下の場合には年齢にかかわらず手術を検討します。
- 角膜に傷がある
- 視力が低下している
- 痛みや充血が続く
特に視力発達期に角膜障害が持続すると弱視の原因になるため、乱視や角膜上皮障害がある場合は早期手術が推奨されます⁷。
治療方法
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Hotz変法
最も広く用いられる術式で、下まぶたの皮膚を横方向に切開し、まつげの向きを外側に矯正する方法です。局所麻酔で日帰り手術が可能で、術後1週間で抜糸します。国内外の研究では、Hotz変法による成功率高いものの⁸、目頭側の逆さまつげに対する効果は少ない場合もあります。
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内眥形成術(目頭切開)
内眼角贅皮が強い場合、目頭の皮膚を三日月状に切除し、筋層を整えることで、内側の逆さまつげの向きをしっかり修正します。しかし、審美性と機能性を両立させる必要があり、審美面のトレーニングを積んでいる専門の医師が望ましいです。
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近年の改良手技
近年では、下眼瞼牽引筋の前層・後層構造を理解したうえでの修正手術が注目されており、Kakizakiらは前層を確実に視認・再固定する改良Hotz法により、再発率が低く効果的な手術成績を報告しています⁹。
手術の名医を見極めるポイント
顕微鏡下での診察・手術が可能
眼科での細隙灯顕微鏡を用いた診察で、角膜傷やまつげの角度を詳細に評価できます。診断だけでなく、術後のフォローにも不可欠です。
また、手術顕微鏡を使い、2mm以下の組織を丁寧に扱っている医師であるかどうかも重要です。
形成・美容の知識を持つ
傷跡の位置や切開の長さによって術後の見た目に差が出ます。とくに内眥形成を伴う手術では、美容的なバランスも考慮した縫合ができるかがポイントです。
症例数と再発率の提示がある
年間の手術件数や再発率、術後合併症について具体的な数字を提示できるクリニックは信頼性が高いといえるでしょう。
術前・術後の注意点
タイミング | 注意点 |
---|---|
術前 | 血液をサラサラにする薬は申告。 (当院では、アイメイクをパウダールームで落とすことができます。) |
術後2日間 | 飲酒を控えて安静にし、まぶたを冷却(当院では、術後用の冷却アイマスクを扱っております)。 ウォーキング程度の運動は術後3日目から。 |
術後1週間 | 抜糸後は、、メイクや軽い運動が可能に。 |
術後3週間 | 激しい運動やサウナの再開目安。 |
術後は細隙灯で角膜状態を確認し、必要に応じて保湿点眼や抗アレルギー点眼を追加します。
よくある質問(Q&A)
- 何歳から手術できますか?
- 成長を待って10歳前後が目安ですが、角膜障害があれば年齢に関係なく手術します。
- 入院は必要ですか?
- 日帰り手術が基本で、片眼20~40分程度です。
- 傷跡は目立ちますか?
- 下まつげ直下や目頭のシワに沿って切開するため、半年でかなり目立たなくなります。
- 保険は使えますか?
- 医学的に「眼瞼内反症」「睫毛内反症」と診断されれば保険適用となります。美容目的の場合は自費にはなりますが、美容目的の逆さまつげの手術は、そもそも治療対象とはなりません。つまり、「逆さまつげ」はすべて保険適用であるべきであると私は考えております。
まとめ
逆さまつげは、見た目の問題だけでなく角膜障害や視力低下を引き起こす可能性のある疾患です。当院では顕微鏡を使用した精密な診断と、症状・年齢・まぶたの構造に応じた手術法の選択により、再発の少ない治療を提供しています。
「目がゴロゴロする」「子どもがまぶしがる」「コンタクトがしみる」などの症状がある方は、お早めに専門医へご相談ください。
引用文献
- ¹ 日本眼科学会. 眼瞼内反症診療ガイドライン
- ² Cassel MJ, et al. Congenital Entropion. Orbit. 2014.
- ³ Noda S, et al. Epiblepharon in Japanese children I. Br J Ophthalmol. 1989.
- ⁴ Zhuo D, et al. The prevalence of lower eyelid epiblepharon. BMC Ophthalmol. 2021.
- ⁵ Woo KI, et al. Surgical correction for lower lid epiblepharon in Asians. Br J Ophthalmol. 2000.
- ⁶ Woo KI, Kim YD. Management of Epiblepharon: State of the Art. Curr Opin Ophthalmol. 2016.
- ⁷ Sundar G, et al. Epiblepharon in East Asian Patients: Singapore Experience. Ophthalmology. 2010.
- ⁸ Hayasaka S, et al. Epiblepharon in Japanese children II. Br J Ophthalmol. 1989.
- ⁹ Kakizaki H, et al. Cilial Entropion: Surgical Outcome with Modified Hotz. Ophthalmology. 2009.
- ¹⁰ Ni J, et al. Modified Hotz + Z-Epicanthoplasty vs Hotz alone. OPRS. 2017.
院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。