私がまぶたや涙という…
【セルフチェック付き】あなたは眼瞼下垂?それとも眼瞼皮膚弛緩?まぶたの専門医師が解説します
- 2025年5月27日
- まぶた(瞼)
はじめに
「目が開けにくくなった気がする」「まぶたの皮が重たい」「なんだか表情が疲れて見える」
――そう感じたことはありませんか?
実は、40代以降の多くの方が、加齢によるまぶたの変化を自覚し始めます。特に「眼瞼下垂(がんけんかすい)」や「眼瞼皮膚弛緩(がんけんひふしかん)」といったまぶたの下垂・たるみは、美容だけでなく日常生活や視界にも影響を及ぼすことがあります。
今回は、見た目は似ていても原因や対処法が異なるこれらの状態について、最新情報をデータを交えて、年間約1800件のまぶたの手術と向き合っている私、かつむらアイプラストクリニックの勝村宇博が解説します。セルフチェックもご用意しましたので、ぜひご自身のまぶたと向き合ってみてください。
眼瞼下垂・眼瞼皮膚弛緩とは?その違いと原因
「まぶたが下がる」という状態の裏には、大きく2つの原因があります。
- 眼瞼下垂
まぶたを引き上げる筋肉(眼瞼挙筋)やその腱膜が加齢やコンタクトレンズの長期使用などでゆるむことで、筋力的にまぶたが上がらなくなる状態¹⁻²。 - 眼瞼皮膚弛緩
皮膚そのものの老化や弾力低下により、上まぶたに余った皮膚が垂れ下がってくる状態²⁻³。筋肉には異常がない。
両者は見た目が似ていますが、原因が異なるため治療法も異なります。また、両方が同時に起こることも多くあります。
まぶたのたるみはなぜ起こる?(疫学と原因)
有病率(年齢による頻度の違い)
眼瞼下垂(がんけんかすい)
年齢とともに増加する代表的な加齢性まぶた疾患です。
国際的な調査では、40代で約5%、70代以降で30%以上が眼瞼下垂を有するとされています⁴⁻⁵。
たとえば韓国の17,000人規模の調査では、40代で5.4%、50代で11.6%、60代で19.8%、70代以上で32.8%と、年齢とともに急増していました⁵。
日本と類似したアジア人のデータでも、60代以降に急増する傾向が確認されています⁵。
眼瞼皮膚弛緩(がんけんひふしかん)
より広く見られる「皮膚のたるみ」で、45歳以上で約16%が“上まぶたのたるみ”を有するとの報告もあります⁷。
香港の調査では60歳未満で約25%、60〜80歳で72%、80歳以上で78%と、加齢とともに急激に増加しています¹⁰。
欧米の研究でも、高齢男性の20%弱、高齢女性の14%前後が上まぶたの皮膚弛緩を有しているとされます⁷。
リスク因子(原因とその背景)
要因 | 解説 |
---|---|
加齢 | 挙筋腱膜が緩み、まぶたを引き上げる筋力が低下する「腱膜性眼瞼下垂」が最多¹²。 |
ハードコンタクトレンズの長期使用 | 特に20年以上使用していた人ではリスクが約20倍になるという報告もあります⁵。 |
眼科手術歴 | 白内障、緑内障、角膜移植など、術後に10%前後で眼瞼下垂を合併する例があるとされています⁶。 |
糖尿病・高血圧などの全身疾患 | 末梢神経障害や筋機能低下を介して関与する可能性があります⁵。 |
神経・筋疾患 | 重症筋無力症や動眼神経麻痺、Horner症候群なども原因となりえます¹。 |
※生活習慣(喫煙、睡眠不足など)は明確な関連性が確認されていませんが、加齢と相まって悪化する可能性は否定できません。
眼瞼皮膚弛緩の主なリスク因子
要因 | 解説 |
---|---|
加齢 | 弾力繊維(コラーゲン・エラスチン)の減少による皮膚のたるみ⁷⁻⁸。 |
紫外線・喫煙・飲酒 | 紫外線による光老化、喫煙による皮膚のコラーゲン分解促進が関与しています⁷。 |
遺伝・体質 | 一卵性双生児研究で60%以上の遺伝率と報告されています⁷。 |
高BMI(肥満) | 皮膚のたるみに加え、脂肪の突出(眼窩脂肪のヘルニア)も目立ちやすくなります⁷。 |
男性であること | 欧州の調査では男性に有意に多く、紫外線対策やスキンケア習慣の差が関与している可能性があります⁷。 |
男女差
眼瞼下垂の男女差
韓国・イランなどの大規模調査では「女性にやや多い」とする報告が多く、日本でも女性の受診率は高い傾向にあります⁴⁻⁵。
一方、男性は女性よりも発症年齢が早いという報告もあり、60代前半での受診が多い傾向があります⁵。
男性の眉の位置や眼瞼構造の違いが、より顕著に見える原因のひとつかもしれません。
眼瞼皮膚弛緩の男女差
欧州(イギリス・オランダなど)の複数の研究では、男性の有病率は女性よりも高い(男性19%、女性14%)とされています⁷。
男性はスキンケア・UVケア習慣が少ないことや、皮膚の厚さ・脂肪の分布に違いがあることが原因と考えられています⁷。
ただし、美容的悩みを感じやすく、治療を受けるのは女性の方が多いという傾向があります。
まぶたは顔の中でも最も薄く、外的刺激を受けやすい部位のひとつ。日々の習慣がそのまま将来の目元に表れます。
セルフチェック:あなたはどのタイプ?
見た目は似ていても、「眼瞼下垂」と「眼瞼皮膚弛緩」は原因も対応も異なります。以下のA・Bリストを用いて、それぞれの特徴にどのくらい当てはまるかチェックしてみましょう。
【A】眼瞼下垂のセルフチェックリスト(筋肉の機能低下)
項目 | 内容 | |
---|---|---|
A-1 | 黒目の上にまぶたの縁がかぶっていて、黒目の半分以上が隠れる | |
A-2 | おでこに力を入れずに目を開けようとすると、まぶたがほとんど上がらない | |
A-3 | 夕方になるとまぶたが重く感じる、肩こりや頭痛が悪化する | |
A-4 | 視界の上のほうが狭く、眉を上げないと物が見えにくい | |
A-5 | 手術やコンタクトレンズ使用の既往がある(特にハードレンズ) |
Aのうち3項目以上当てはまる方は、「眼瞼下垂」の可能性があります。
【B】眼瞼皮膚弛緩のセルフチェックリスト(皮膚の余剰)
項目 | 内容 | |
---|---|---|
B-1 | 上まぶたに皮膚がたるんでかぶさっている感じがある | |
B-2 | 二重のラインが深くなった、または複数に分かれてきた | |
B-3 | まぶたの皮膚が重く、まぶたにしわが目立つようになった | |
B-4 | 眉の位置が下がってきたと感じる(写真で比較するとわかる) | |
B-5 | 顔全体が「疲れている」「老けて見える」と言われたことがある |
Bのうち3項目以上当てはまる方は、「眼瞼皮膚弛緩」の可能性があります。
両方に複数項目当てはまる場合、「眼瞼下垂+皮膚弛緩」が併存している可能性が高くなります。気になる方は、専門医の診察をおすすめします。
治療法の選択肢:手術か保存的治療か
まぶたのたるみに対する治療には、「保存的治療」と「手術療法」があります。
保存的治療
- オキシメタゾリン点眼
ミュラー筋を収縮させて一時的に開きを改善。軽度の下垂に使用されます¹²。 - アイプチ・テープ
見た目の補正に使われますが、皮膚刺激やかぶれなどの注意点があります。 - マッサージ・筋トレ
進行した下垂には効果が限定的で、予防的手段としては一部有効かもしれません。
※これらは(効果があったとしても)一時的なもので、根本治療にはなりません。
手術療法
- 眼瞼下垂
挙筋前転術やミュラー筋短縮術などで、まぶたの開きを改善します¹。 - 皮膚弛緩
皮膚切除や眉下切開、重瞼形成術などで、すっきりとした目元に整えます²。 - 複合手術
両方に対する処置を組み合わせることが多く、審美性も機能性も重視したアプローチが可能です。
機能的な障害があれば、保険適用される場合があります。
手術で改善が期待できることとQOLへの影響
「手術を受けるほどでもない」と思われがちですが、実際には見た目だけでなく、生活機能や心理面にも影響があります。
機能的な改善
- 視野の拡大
まぶたが上がることで上方視野が広がり、運転や歩行の安全性が向上¹³。 - 頭痛・肩こりの軽減
前頭筋や肩の筋緊張による慢性症状が改善されることも¹³。
見た目・印象の改善
- 若返り効果
「眠そう」「疲れて見える」印象が改善され、顔全体が明るく見える。 - 対人関係の改善
目が自然に開くことで自信が増し、人と接する場面でも前向きになれます。
アンケートでは、手術後の患者の85%以上が「生活の質(QOL)が向上した」と回答しています¹³。
まとめ
40代以降のまぶたのたるみは、多くの方が経験する自然な変化です。 しかし、それが「眼瞼下垂」なのか「皮膚のたるみ」なのかを見極めることが、適切な治療につながります。
見た目だけでなく、視界や生活の質にも関わるまぶたのトラブル。 まずはセルフチェックを試してみて、気になる症状があればお気軽にご相談ください。
参考文献
- ¹ Bacharach J, et al. A review of acquired blepharoptosis: prevalence, diagnosis, and current treatment options. Eye. 2021;35:2468–2481.
- ² Silva KRS, et al. A New Classification of the Lateral Dermatochalasis of Upper Eyelids. PRS Glob Open. 2021;9:e3711.
- ³ Pelton RW. Evaluation and Management of Blepharoptosis. Facial Plast Surg. 2022;38:375–386.
- ⁴ Forman WM, et al. Epidemiology of ptosis in an elderly population. Gerontol. 1995.
- ⁵ Kim JH, et al. Prevalence and risk factors of ptosis in a Korean population. Jpn J Ophthalmol. 2017;61(4):280–287.
- ⁶ Shah M, et al. Postoperative ptosis: incidence, etiology, and prevention. Curr Opin Ophthalmol. 2020;31(5):386–392.
- ⁷ Jacobs LC, et al. Intrinsic and extrinsic risk factors for sagging eyelids. JAMA Dermatol. 2014;150(8):836–843.
- ⁸ Damasceno RW, et al. Eyelid aging: pathophysiology and clinical management. Arq Bras Oftalmol. 2015;78(5):328–331.
- ⁹ Redmon SN, et al. Prevalence of ophthalmic findings in adults attending a medical survey. Int Ophthalmol. 2023;43:1245–1256.
- ¹⁰ Ho M, et al. Prevalence of eyelid diseases among adults in Hong Kong. Hong Kong Med J. 2019;25(1):31–36.
- ¹¹ Hashemi H, et al. Prevalence of ptosis in an Iranian adult population. J Curr Ophthalmol. 2016;28(3):142–145.
- ¹² Nichols KK, et al. An Update of Diagnostic and Management Algorithms for Acquired Ptosis. Optom Vis Sci. 2022;99(3):230–240.
- ¹³ Jacobs DA, et al. Impact of upper eyelid surgery on visual function and quality of life. Am J Ophthalmol. 2014;157(2):267–272.e1.
院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。