今回は、眼瞼下垂の手…
まぶたの手術、失敗とは? ~年間500件以上の手術と向き合う私が大事にしていること~
手術を生業とするようになってから一番変わったこと、それは「日々の生活リズム」です。
気力や体力、集中力が完璧な状態で手術に臨むため、早寝早起きの規則正しい生活を送るようになりました(この原稿を作成している現在も、朝5時半です)。
そのため、他業種の方と食事に行く機会はほとんど無くなりました。
しかし、ごく稀に機会をいただき他業種の方とお話しした時に必ず以下の質問をいただきます。
「手術で失敗することはありますか?」
検索ワードでも必ず上位になっていますので、今回は「手術の失敗」についてお話ししたいと思います。
手術の失敗とは?
「手術で失敗はなぜ起こる?」にも書きましたが、
いわゆる「失敗」は、医師側の問題、患者様側の問題、どちら側の問題でもない、の大きく3つに分けることができます。
「医師側の問題」とは、簡単に言うと「技術不足」と「診察不足」ですが、これらは術者の努力や工夫で防ぐことができます。
しかし、「術後の指示を守らない」「結果に過度の期待をしている」などの「患者様側の問題」を医師側でコントロールすることは難しいです。
また、まぶたの特徴として、以下のことが挙げられます。
- 一日2万回もまばたきをする、動きが非常に多い部位である。
- 人間の皮膚の中で一番薄く、たるみが非常に出やすい部位である。
そのため、「術後の左右差」や「術前でシュミレーションしていた二重幅と術後の二重幅の相違」を完全に無くすことはほぼ不可能であるということができます。
一番多い失敗とは?
しかし、一番多い「失敗」とは、先に挙げたいわゆる「失敗」ではなく、術者の理想が高いが故に起こる「失敗」です。
つまり、患者様は満足していても、術者の中で完璧なまぶたを想像しているために「もう少しこうすれば100点満点のまぶたにすることができたのに」と術者の心の中だけで反省している状態です。
この場合は自分の中で改善点を見つけ、次の手術に生かしていきます。
逆に言うと、これらのような「自分に厳しい目」を持っていない術者は、いつまでたっても成長しないといえます。
手術をするときに一番大事なこと
手術をし続ける以上、「失敗しない」ということはあり得ません。むしろ、自分の手術が完璧であると考えている、公言している医師の手術を受けることは避けた方が無難だと思います。
もし、「私、失敗しないので」と自分から発言している医師がいるとしたら、その医師は自分の手術の改善点を見つけられない、技術を向上させられない「残念な医師」です。
まぶたや涙道の手術を専門として8年、毎年500件以上の手術と向き合っている私が考える「手術をするときに一番大事なこと」とは、
患者さんが満足しなかった時に、改善させる知識や技術を持っている ことです。
医療は100%はあり得ません。
こちらがベストを尽くしても、「まさか」の事態が稀に起こります。
その時に
- 「時間がたてば落ち着いてくるかなあ」と期待半分に考え「様子を見て何もしない」医師
- 「今までの経験や知識から考えると、この状態であれば早いうちに再手術をした方が良い」としっかり状況判断をして「再手術をしましょう」と提案できる医師
どちらに自分の体を任せたいでしょうか?
そのために、私は起きている間は常に手術のことを考えて生活しています。
他クリニックの修正について
当院では、もちろん他クリニックでの手術後「結果に納得がいかない」という患者さんの修正手術も行っております。
他クリニックの修正手術は、以下のような点から手術が難しいのは事実です。
- 他クリニックでどのような手術を受けているか分からない。
- 手術部位で癒着(くっつき)が起きており、余計な「クセ」がついている。
①ですが、手術で「もともとの解剖」にメスを入れているため、術後のまぶたの中は「教科書で見るような解剖」ではありません。
手術前の「もともとの解剖」が自宅周辺の地図に載っている「見慣れた風景」なのに比べて、手術後の解剖は「工事が終わって新しくできた道」です。
誰も見たことがないし、地図(教科書)にも載っていません。
その中を自分で道を探しながら目的地にたどり着かなければいけません。
また、②ですが、術後は中が癒着してます。つまり、中が固くくっついています。
一度糊付けして封をした封筒をまた開ける時にどこかが破れてしわが寄るのと同じで、修正手術で癒着部分にメスを入れると余計なクセ、つまりしわがつくことが少なからずあります。
それを、新しい封筒のようにしわが無い状態を作らなければなりません。
これらの難しい状態に対し一つ一つ綿密に戦略を練り、その時点で持っている己の技術と知識をすべて注ぎ込み全ての手術を行っています。
終わりに
私は決して「神の手」を持っているわけではありません。
もともと器用なわけではありません。
しかし、8年以上の年月をかけて3000件以上の手術としっかりと向き合い、積み重ね向上させてきた技術と経験、知識があります。
保険、自費に関わらず、これらをすべての手術に注ぎ込み、全力で向き合っております。
今後も「くもりのない医療」に邁進してまいります。
院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。