私がまぶたや涙という…
安易な選択が招く後悔。二重埋没法で眼瞼下垂が悪化する理由と、それを避けるための賢明な選択
- 公開日:2025年12月16日
- 更新日:2025年12月16日
- まぶた(瞼)

かつむらアイプラストクリニック院長、勝村宇博です。
当院は、まぶたの手術と涙の治療を専門としたクリニックで、私がすべて執刀し、年間約2000件の手術と向き合っています。
日々の診療現場で患者様のお悩みと向き合っていると、「手軽にパッチリとした二重にしたい」「切るのは怖いから、まずは埋没法で」という声を数多く耳にします。
SNSや広告では「腫れない」「一生モノ」「やり直しがきく」といった甘い言葉が並び、まるでメイクの延長のような感覚で手術を検討されている方も少なくありません。
しかし、まぶたの機能と構造を熟知した眼科専門医としての立場から、はっきりと申し上げます。
安易な埋没法は、かえって「眼瞼下垂」を悪化させ、目の開きを悪くしてしまうだけでなく、将来にわたって大切な目元の健康を損なうリスクを孕んでいます。
今回は、なぜ「手軽」とされる埋没法で眼瞼下垂が悪化してしまうのか。
その医学的なメカニズムと、当院があえて「埋没法を行わない」と決めている確固たる理由、そして本当に美しい目元を手に入れるために必要な選択肢について、詳しく解説します。
1. 二重埋没法で眼瞼下垂は悪化する
結論から申し上げますと、二重埋没法によって眼瞼下垂が悪化し、目が開きにくくなるケースは医学的に見て明らかに存在します。

埋没法が筋肉の動きを阻害するメカニズム
埋没法は、まぶたの皮膚と、その奥にある瞼板(けんばん)や挙筋(きょきん)を糸で縛り付けることで二重のライン(ひだ)を作る手術です。
私たちがまぶたを開ける際には、「眼瞼挙筋」やその補助をする「ミュラー筋」が収縮し、瞼板を持ち上げます。しかし、埋没法の糸を強く結びすぎたり、解剖学的に無理な位置(筋肉の走行を妨げる位置)に糸を通したりすると、これらの筋肉が機械的に締め付けられ、スムーズな動きが阻害されてしまいます¹。
結果として、二重の線はついたものの、目の開き自体は悪くなってしまうのです。
「隠れ眼瞼下垂」が顕在化するリスク
特に注意が必要なのが、もともと軽度の眼瞼下垂(潜伏性眼瞼下垂)がある方です。自覚症状がなくても、普段から無意識に眉毛を上げて目を開けている方は多くいらっしゃいます。
このようなギリギリの状態のまぶたに、埋没法の糸による重みや組織への圧迫といった負担が加わると、それが「最後の一押し」となってしまいます。
術後に「二重のラインはできたけれど、黒目が隠れて眠そうな目になった」「まぶたが以前より重く感じる」という症状が出現するのはこのためです。
これは、糸による物理的な重みや、不自然な固定による抵抗が眼瞼挙筋の負担となり、まぶたを持ち上げる力を弱めてしまうことで生じる、いわば「医原性(手術が原因)の眼瞼下垂」と言える状態です¹。
2. 眼瞼下垂が悪化する以外の二重埋没法のデメリット
眼瞼下垂の悪化リスクに加え、埋没法には構造上避けられない重大なデメリットが存在します。
多くのクリニックが「手軽さ」というメリットばかりを強調する中、当院では患者様の長期的な利益と目の健康を守るため、以下の「4つの理由」から埋没法をおすすめしておりません。
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1「腫れない」とは限らない

「〇〇式埋没法なら腫れません」「直後からメイク可能」といった広告をよく見かけますが、これは医学的に誠実な表現ではありません。
埋没法は、まぶたの裏側から針を通す際、内部の血管を直接見て確認することができない「盲目的操作(ブラインド操作)」の手術です。どんなに熟練した医師であっても、皮膚の下にある血管を100%避けて針を通すことは不可能です。
運悪く針が太い血管に当たれば、強い内出血や腫れが生じます。実際、ある研究データでは、埋没法を受けた患者様の約半数(48.6%)に中等度以上の腫れが見られたという報告もあります³。
「埋没法=腫れない」というのは、あくまで運が良かった場合の結果論に過ぎないのです。
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2長持ちしない可能性が少なくない(ラインの消失)

埋没法で作った二重ラインは、一生モノではありません。
人間のまばたきは1日に約2万回も行われます。埋没法の糸は、点で組織を留めているだけですので、日々のまばたきによって糸に力が集中し続けます。
その結果、徐々に糸が組織を切り裂くように緩んだり(チーズワイヤリング現象)、糸そのものが切れたりして、数年以内に二重のラインが薄くなる、あるいは完全に消失してしまう可能性が高いのです²。二重が永続的に維持されるためには、組織同士の面での「癒着(瘢痕)」が必要ですが、埋没法ではこの癒着がわずかしか形成されないため、構造的に後戻りしやすい宿命にあります。
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3「元に戻せる」は期間限定の幻想
「気に入らなければ糸を取れば元に戻せる」という点(可逆性)が埋没法の最大のメリットとして語られますが、これには重大な注釈がつきます。
手術から時間が経過すると、糸の周りに癒着やしこり(肉芽腫)が形成されたり、糸自体が組織の奥深くに埋まり込んでしまったりします。こうなると、抜糸をしようとしても糸が見つからない、あるいは糸を取り除くために周囲の組織を大きく傷つけなければならないという事態に陥ります。
無理な抜糸操作はまぶたの組織を破壊し、新たな癒着や引きつれを作る原因になります。「いつでも簡単に元通り」というのは幻想であり、一度入れた糸の影響は、少なからずまぶたに残るとお考えください。
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4眼球を傷つけるリスクがある(最も重大な懸念)

眼科専門医として、私が最も危惧し、埋没法を行わない最大の理由がこれです。
埋没法は、まぶたの裏側(結膜側)に糸を通し、結び目を埋め込む手術です。術直後は糸が粘膜の中に隠れていても、長年のまばたきによる摩擦や経年変化によって、糸が徐々に表面に露出してくることがあります。

露出した糸は、まばたきのたびに硬い釣り糸のような状態で角膜(黒目)をこすり続けます。これにより、角膜に無数の傷が(角膜上皮障害)ついたり、痛みやゴロゴロ感、充血、最悪の場合は角膜潰瘍による視力低下を引き起こしたりするリスクがあります。

美容のために行った手術で、一生の視機能に関わる角膜を傷つけてしまっては本末転倒です。このリスクは、糸がまぶたの中にある限り、術後10年、20年経ってから突然発症することもあるのです³。
3. 眼瞼下垂の悪化を避けるなら、根本的な「眼瞼下垂手術」を
もしあなたが、「眠そうな目をパッチリさせたい」「黒目を大きく見せたい」「おでこのシワをなくしたい」と望んでいるなら、単なる二重埋没法ではなく、根本的な解決策である「眼瞼下垂手術(挙筋前転法など)」を検討すべきです。

眼瞼下垂手術は、伸びたり薄くなったりして力が伝わらなくなった筋肉(挙筋腱膜)を、直視下で解剖学的に正しい位置(瞼板)に固定し直すことで、目の開きそのものを改善し、最後は二重を作成する手術です¹。
目の開きが良くなると、これまで無意識に行っていた「額の筋肉を使って目を開ける癖(眉毛挙上)」がなくなり、おでこのシワが改善したり、頭痛や肩こりが軽減されたりといった、機能面・整容面双方での大きなメリットが期待できます。

切らない眼瞼下垂手術は再発する
最近では「切らない眼瞼下垂手術(埋没法による挙筋短縮)」を謳うクリニックも見受けられます。まぶたの裏側から糸で筋肉を縛って短縮する方法ですが、私はこの術式には極めて慎重、というより否定的です。

糸だけで筋肉をタッキング(折り畳む)する方法は、一時的に目の開きが良くなったように見えても、まばたきという数万回の強力な運動エネルギーに耐えられず、糸が緩んだり組織が裂けたりして、高い確率で後戻り(再発)します。長期的な安定性を考えるならば、やはり切開を伴う確実な処置が推奨されます¹。
4. 二重埋没法で眼瞼下垂になったときの対処法
万が一、他院での埋没法後に眼瞼下垂の症状(目の重さ、開きにくさ、頭痛など)が現れてしまった場合は、どう対処すべきでしょうか。
まず第一選択となるのは、原因となっている「埋没糸の抜糸」です。糸による筋肉への拘束を解くことで、機能が回復する可能性があります。
しかし、前述の通り、長期間放置して組織が癒着してしまった場合や、もともとの潜伏性眼瞼下垂が顕在化しただけの場合は、抜糸だけでは症状は改善しません。
しっかり切開して眼瞼下垂手術を行う
最も確実で推奨される対処法は、抜糸と同時に、あるいは時期を改めて、切開による眼瞼下垂手術を行うことです。

切開を行い、内部で絡みついた糸や癒着を丁寧に解除した上で、挙筋腱膜を正しい位置に再固定します。これにより、医原性の要素を取り除きつつ、本来の目の開きを取り戻すことができます。
修正手術は初回手術よりも難易度が高くなりますが、まぶたの構造を熟知した眼科専門医であれば、機能的にも審美的にも満足のいく結果を得られる可能性が高まります。
5. そもそも二重埋没法は行わない方が良い
私は、以下の特徴を持つ方に関しては、そもそも(万が一他院で受けるとしても)埋没法は適応ではないと考えています。
- まぶたが厚い方(脂肪や皮膚が厚い)
- 皮膚のたるみが多い方
- 眼瞼下垂の症状がある方
厚いまぶたに無理やり糸をかけても、強い反発力ですぐに取れてしまったり、不自然な食い込み(ハム目)の原因になったりします。また、眼瞼下垂がある方の挙筋にさらなる負担をかけることは、症状の進行を早めることになります。
そして何より強調しておきたいのは、埋没法は構造上、まぶたの裏側に糸が露出するリスクを常に抱えており、それが大切な角膜を傷つける可能性があるという事実です。

「手軽さ」「安さ」と引き換えに、大切な眼球を傷つけ、まぶたの機能を損なうリスクを冒すべきではありません。

目元の機能と安全を守る眼科専門医の立場として、私はこれらのケースにおいて埋没法を絶対にお勧めしません。
6. 二重手術をするなら眼瞼下垂手術がおすすめ
「美しさ(整容)」と「機能(見やすさ)」は表裏一体です。二重手術を検討する際は、単に皮膚を折りたたむだけでなく、目の開きを整える眼瞼下垂手術を第一選択肢に入れることを強くおすすめします(眼瞼下垂でなければ、自費での手術になります)。後悔のない手術のために、以下の4つのポイントを意識して医師を選んでみてください。

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1手術のリスクや副作用をしっかり把握する
どのような手術にもメリットとデメリットがあります。良いことばかりでなく、術後の腫れ、内出血、左右差、過矯正、低矯正、ドライアイなどのリスクについても包み隠さず説明してくれる誠実な医師を選びましょう。
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2手術後の仕上がりイメージを共有する
「パッチリさせてください」という言葉一つでも、患者様と医師の間で描いているイメージは異なることが多々あります。写真やシミュレーションを用いて、二重の幅、形、黒目の露出度などを具体的にすり合わせることが成功の鍵です。
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3患者様の希望を尊重し、さらに提案を行う医師に依頼する
「患者様の言う通りにする」のが必ずしも良い医師ではありません。医学的に無理がある場合や将来的にリスクがある場合には、「それはやめた方がいい」とはっきり伝え、より安全で効果的な代替案を提案できる医師こそが、真に患者様の利益を考えていると言えます。
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4信頼できる医師に依頼する
医師選びの一つの基準として、「同業関係者(医師・看護師)からの評価が高い医師」を探してみてください。実際に手術の結果や技術を間近で見ているプロたちが、「自分の家族の手術を頼みたい」「自分も受けたい」と思う医師であれば、信頼に足ると言えるでしょう。
7. 眼瞼下垂手術をするならかつむらアイプラストクリニックへ
当院、かつむらアイプラストクリニックでは、眼科専門医としての「機能の診断」と、目元の手術に特化した「デザインの技術」を高度に融合させた手術を行っています。
私は眼科専門医としてのバックグラウンドを持ち、「機能も、見た目も。」をスローガンに年間1800件前後のまぶたの手術を執刀しております。「まぶた」は単なる皮膚ではなく、眼球を守る大切な器官です。ただ二重にするだけでなく、角膜への影響や涙の量、瞬きの機能までトータルで考慮した上で、お一人おひとりに最適な術式(主に切開法や眼瞼下垂手術)を提案させていただきます。
当院が埋没法を行わないのは、技術がないからではありません。
「患者様の10年後、20年後の目の健康まで責任を持ちたい」という強い信念があるからです。

8. まとめ
二重埋没法は手軽な反面、眼瞼下垂を悪化させるリスク、ライン消失の可能性、そして角膜損傷という重大なリスクを含んでいます。
まぶたの手術は、一生のお付き合いになる大切な顔の一部を扱うものです。「安さ」や「手軽さ」という目先のメリットだけで選ばず、長期的な視点で、機能と美しさを両立できる安全な手術を選んでいただければと思います。
まぶたの重さ、眠そうな目、二重の悩みがあれば、ぜひ一度、まぶたの専門医である私にご相談ください。あなたの目の健康を守りながら、理想の目元を叶えるお手伝いをさせていただきます。

参考文献
- 1. Finsterer, J. (2003). Ptosis: causes, presentation, and management. Aesthetic Plastic Surgery, 27(3), 193-204.
- 2. Shirakabe, Y., et al. (1985). The double-eyelid operation in Japan: its evolution as related to cultural changes. Annals of Plastic Surgery, 15(3), 224-241.
- 3. Watanabe, A., et al. (2013). Complications of the buried suture double-eyelid procedure. Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery, 66(9), 1288-1292.

院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。
