私がまぶたや涙という…
眼瞼下垂の術後生活②【メイクはいつから?】——“薄く・短時間・こすらない”で段階的に
- 公開日:2025年10月21日
- 更新日:2025年10月21日
- まぶた(瞼)
目次

結論
ベースメイクは術後1週間から、アイメイクは術後3週間からが安全寄りの目安。コンタクトは術後2~3週間で2h→4h→6hと慣らします。どの場面でも合言葉は薄く・短時間・こすらない。これだけで腫れ・赤み・ゴワつきを最小限にできます。

1. ベースメイクは「1週間~」
- OK
- 日焼け止め/下地/リキッドorクッション/軽いパウダー。
→ 置くようにのせる、往復でこすらない。スポンジは毎日~隔日で洗浄。市販のスポンジやブラシは高率で細菌が付着しやすいと報告があります²³⁹。
- NG
(数週間は控える) - スクラブ、ピーリング酸、レチノールなど刺激の強いもの。炎症後の色素沈着やかゆみの原因になります。
隠したい赤みは、グリーン~イエロー系のコントロールカラーを薄く一度。重ね塗りより「薄く短時間」が回復を早めます。
2. アイメイクは「3週間~」
- シャドウ
- 粉飛びしにくいプレストタイプを“薄く”。
- マスカラ
- お湯オフ型を毛先中心に。
- アイライン
- 粘膜(まつ毛の内側)には引かない。粘膜側に塗った鉛筆アイライナーは涙の層へ移動して汚すことが実験で示されています¹¹。
早期はとくに“まつ毛の生え際を避ける”。ここは細菌が溜まりやすく、粒子や油分が涙の膜を不安定にします¹¹⁴。
3. クレンジングは“段階設計”

- 0~1週
- 泡だけ。36~37℃のぬるま湯で泡をのせて→手のひらで受けて流す。
- 1~3週
- ミルク/ジェル。30~40秒を目安に手早く。
- 3週~
- オイル可。短時間で乳化→ぬるま湯。
道具は清潔に。使い回した化粧品・ブラシ・スポンジは細菌・真菌で汚染している割合が高いという研究が複数あります²³¹⁷⁹。

4. なぜ“コンタクトとアイメイク”の同時スタートは避けるのか?
同時に始めると、以下のリスクが同時多発します。
-
1涙の汚れがレンズに乗る
粘膜側アイラインや粉が涙の層へ移動しやすく¹、コンタクトに付着→視界かすみ・不快感。 -
2涙の膜が不安定になりやすい
コンタクトは涙をレンズ前後の2層に分け、蒸発や摩擦を増やします⁴。そこに化粧粒子や油分が加わると乾き・充血が増幅。 -
3細菌負荷が上がる
アイメイク用品・アプリケータは汚染しやすい²³¹⁷。化粧→装用→落とす…という手順が重なると触れる回数が増え、角膜感染の土台になります。
したがってコンタクトは先に単独で慣らす(2h→4h→6h)。涙やまばたきが安定してからアイメイクを再開するのが合理的です¹⁴。

5. ドライアイ対策と「まばたき体操」
術後しばらくは“瞬きが浅くなる”ことがあり、涙の膜が壊れやすくなります。
まばたき体操(例)
① ゆっくり目を閉じて1秒、② さらにそっと力を入れて1秒(ギュッではなく“そっと”)、③ ゆっくり開く。10回1セット、PC作業の区切り(20-20-20の合図)で。
根拠
瞬目は涙を引き伸ばし、脂の層を整えることで涙の安定性を改善します(TFOS DEWS II)¹³。系統的レビューでも体操で症状や涙の指標が改善した報告があり⁶、最近の臨床研究でも不完全瞬目や涙安定性の改善が示されています¹⁸。
併せて人工涙液(防腐剤フリー)、加湿、20分ごとに20秒休むをセットで。
6. チェックリスト(ひとつでも当てはまれば中止→相談)
- アイメイク後に赤み・腫れ・しみるが増えた
- 異物感・充血・痛み・かすみでコンタクトが続かない
- にじむ出血/黄色い分泌が出る
→ メイク・装用・クレンジングをいったん中止し、写真が撮れれば添えてご連絡ください。
7. 今日からの“失敗しない”復帰順序
-
1ベース(1週~):薄く/短時間/置き塗り。
-
2コンタクト(2~3週~):2h→4h→6h。症状が出たらその日は中止。
-
3アイメイク(3週~):粘膜ラインは避けて外側に細く。お湯オフ型で“落としを短く”。
仕上がりは「技術×生活習慣」。薄く・短時間・こすらないを守るほど、回復は早く、長くきれいに落ち着きます。

参考文献
- 1. Ng A, et al. Migration of Cosmetic Products into the Tear Film. Cont Lens Anterior Eye. 2015.(粘膜側アイラインは涙の層を汚染) (PubMed)
- 2. Dadashi L, et al. Incidence of bacterial and fungal contamination in in-use cosmetics. Iran J Public Health. 2016.(使用中コスメの細菌・真菌汚染) (PMC)
- 3. Abdelaziz AA, et al. Microbial contamination of eye shadows, mascaras and face creams. J Clin Pharm Ther. 1989. (PubMed)
- 4. Markoulli M, et al. Contact lens wear and dry eyes: challenges and solutions. Clin Optom. 2017.(コンタクトは涙膜を二層化し不安定化) (PMC)
- 5. Attar RMS, et al. Makeup tools contamination awareness survey. J Epidemiol Glob Health. 2025.(ブラシ等の汚染意識) (PMC)
- 6. Kim AD, et al. Therapeutic benefits of blinking exercises in dry eye disease. Trends Neurosci. 2021.(瞬目体操で症状・客観指標の改善) (サイエンスダイレクト)
- 7. Arita R, et al. Effects of blinking exercises on dry eye parameters. Ocul Surf. 2025.(不完全瞬目や涙安定性の改善) (サイエンスダイレクト)
- 8. TFOS “Think Blink” campaign(瞬目の重要性の啓発資料) (tearfilm.org)
- 9. ACCC. Microbiological contamination of eye cosmetics — Survey report. 2015.(アイコスメの微生物リスク調査) (ACCC Product Safety)
※時期はあくまで安全側の一般目安です。術式・創の状態・涙の量で調整します。
院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。