疲れたように見える「…
眼瞼下垂や重瞼(二重)術など、上まぶたの手術の後遺症(合併症)とは?
まぶたの手術と涙の治療の専門クリニックである当院は、診療日は毎日午前が外来で午後が手術というスケジュールです。
スポーツは毎日練習した方が上達するように、毎日手術をしているので自分の手術技術がどんどん向上しているのがわかります。
開業前は、眼瞼下垂の手術時間は60分~80分かかっていましたが、開業5カ月が経過した今は50分~75分と短くなりました。
当たり前のことですが、手術のクオリティを一切下げることなく、時間短縮をしています。
いわゆる「後遺症(合併症)」なども起きないように注意して手術を行っています。
ということで、今回は「眼瞼下垂など、まぶたの手術の後遺症」についてお話しします。
まぶたの術後後遺症(合併症) データについて
後遺症(合併症)といっても、様々な種類やシチュエーションがあるため、しっかりとデータとして発表している論文はほとんどありません。
しかし、2018年に韓国のJi Sun Baek先生が発表した「Ophthalmologic Complications Associated With Oculofacial Plastic and Esthetic Surgeries」には、まぶたなどの手術後に後遺症(合併症)が出たケースをまとめています。
この論文によると、後遺症(合併症)は以下のようになります。
上まぶたの手術後に起こった合併症
① 角膜びらん(糸の露出による) | 38.1% |
② 眼瞼外反 | 28.6% |
③ 角膜炎(兎眼による) | 19.0% |
④ 結膜浮腫 | 4.8% |
① 角膜びらん とは、「黒目に傷がついた状態」。
「切らない重瞼(二重)術」として美容クリニックで流行っている「埋没法」ですが、この術式は必ず「まぶたの裏に糸が出るリスク」があります。
たとえ、どんな「~式重瞼(二重)術♡」であったとしても、です。
術後、糸の黒目への当たり方がひどくない場合はしばらく何ともないこともありますが、術後しばらくして糸がまぶたの裏にしっかりと出てくる場合があります。
このような場合に糸は黒目にしっかりと当たるようになり、眼球表面に傷がつき「目がゴロゴロする」「目に違和感がある」などの症状が出てきます。
これは眼科での診察で初めてわかることであり、抜糸が必要になります。
② 眼瞼外反 とは「まつ毛が過剰に外側に反り、まぶたの根元が露出してしまった状態」。
ひどい場合は「まぶたが外側に反り眼球から離れてしまう」のですが、重力の影響で、上まぶたがそこまで外反することはほとんどありません。
また、術直後は外反していても、重力により時間と共にまつ毛は下がることが多く、経過観察していればほとんどは改善します。
しかし、ある一定の割合で「外反」したままのこともあり、まつ毛の根元が露出した状態になります。
この場合は重瞼(二重)を作り直す必要があります。
③ 角膜炎 とは、「眼球表面の炎症」。
実際には、「眼球表面の細かな傷」として観察することができます。
眼瞼下垂などまぶたの開きを改善させる手術の場合にまぶたが閉じづらくなることがあり、まぶたが完全に閉じ切らない状態を「兎眼(とがん)」といいます。
眉毛の後ろにある「涙腺」で作られた涙はまばたきにより共に眼球表面に塗りつけられ、乾燥しないよう眼球を守ってくれています。
兎眼になると眼球表面の一部に涙が塗りつけられなくなるため、乾燥して眼球に細かな傷がつきます。
これが角膜炎(点状表層角膜炎:Superficial Punctate Keratopathy; SPK)です。
兎眼も一時的なものでしばらくすると自然軽快することがほとんどです。
兎眼にならないよう手術で調整すれば良いのですが、調整をしなかった未熟な手術後では、兎眼を改善させる追加手術が必要です。
④ 結膜浮腫 とは、「しろめのむくみ」
眼球の表面を覆っている半透明の膜を「結膜(けつまく)」といいます。
そして、結膜は奥で折り返り、まぶたの裏側をも覆っています。
そして、術後に結膜に水が溜まりむくむことを「結膜浮腫」といいます。
結膜浮腫は術後2日くらいで治癒することがほとんどです。
もし長引く場合はステロイドの点眼薬を使用します。
ステロイドの点眼薬は、副作用として「高眼圧」「緑内障」があります。
これらは眼科の診察ができないと診断をすることができません。
眼科の診察ができる医師を受診することをお勧めいたします。
おわりに
いかがでしょうか?
頻度は少ないものの、これらの後遺症は一定の頻度でおこります。
眼瞼下垂や重瞼(二重)術などの上まぶたの手術や治療は、これらをしっかりと診断、治療できる医師の下で受けることを強くお勧めいたします。
次回は、「クマ取りなど、下まぶたの手術の後遺症(合併症)」についてお話しします。
院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。