「眼瞼下垂」の手術を…
眼瞼下垂手術で「頭痛」は改善するのか?
- 2023年4月15日
- 院長コラム
浦和駅西口徒歩4分の、「まぶたの手術と涙の治療」を専門とした「かつむらアイプラストクリニック」。
当院でもっとも多い手術は眼瞼下垂手術です。
毎月100件前後行っておりますので、眼瞼下垂手術だけでも年間1000件以上行っている計算になります。
当院は、手術のクオリティを維持すべく私一人で外来および手術を担当しているため初診患者数を制限していますが、その約半数が眼瞼下垂の患者様です。
そして、眼瞼下垂の患者様の多くが原因不明の「頭痛」「肩こり」で悩まされており、手術で「頭痛」「肩こり」が改善するのかどうか、質問してくださる方が非常に多いと思います。
そういった質問に対し私が必ず答える内容は、「改善するとは思いますが、手術してみないとわかりません」、です。
眼瞼下垂とは
まぶたは、まぶたを上げるときに、まぶたの中に入っておりまぶたを上げる筋肉「上眼瞼挙筋」から枝分かれした「挙筋腱膜」と「ミュラー筋」がまぶたの縁にある固い板「瞼板」を引っ張っています。
眼瞼下垂とは、これらの筋肉がうまく働かなくなることでまぶたがうまく上がらなくなる病気です。
もっと詳しく知りたい方は、当院HPを参照してください。
なぜ眼瞼下垂で「頭痛」「肩こり」がおきるのか
まぶたが下がるのを補うためにおでこの筋肉(前頭筋)を使うようになるため、頭痛が起きるといわれています。
おでこの筋肉を使うようになると、おでこにシワが寄るようになります。下のようなお顔立ちの方は、街中でも見かけることがあると思います。
また、一部の先生方は、「眼瞼下垂によりミュラー筋が伸ばされると、ある神経(受容体)が刺激されることで頭痛や肩こりをおこす」とおっしゃっています。1)
あなたの頭痛は何点ですか?
頭痛がどれくらいの程度か計算するものとして、「HIT-6スコア」があります。
HIT-6とは、 Headache Impact Testの略で、 1.疼痛、 2.日常役割機能、 3.社会的役割機能、 4.活力/披露、 5. 認知機能、 6.精神的苦痛の6つの質問項目から構成されます。
そして、以下の項目に対し点数をつけ、合計の点数で「頭痛の重症度」を「見える化」します。
- 全くない➡6点
- めったにない➡ 8点
- ときどきある➡ 10点
- よくある➡ 11点
- 常にある➡ 13点
頭痛テストの項目
- 頭が痛い時、ひどい痛みが出るのはどれくらいの頻度ですか?
- 頭痛のせいで、日常生活に支障が出ることはありますか?(例えば、家事、仕事、学校生活、人付き合いなど)
- 頭が痛いとき、横になることがありますか?
- 直近4週間で、頭痛のせいで疲れてしまって、仕事やいつもの活動ができないことがありましたか?
- 直近4週間で、頭痛のせいで疲れてしまい、仕事やいつもの活動ができないことはありましたか?
- 直近4週間で、頭痛のせいで仕事や日常生活の場で集中できないことがありましたか?
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テストの結果による、頭痛の重症度
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36~49点 ほとんど、または全く日常生活に影響なし 50~55点 中程度の影響 56~59点 かなりの影響 60~78点 重大な影響
あなたはどのレベルでしたか?
眼瞼下垂手術で、「頭痛」や「肩こり」は治る?
結論から言いますと、眼瞼下垂手術で「頭痛」が改善した、というデータは出ています。
Bahceci Simsek Iが2017年に報告した論文によると、「術前の頭痛が、眼瞼下垂の手術により日常生活に重大な影響が出ているレベル(HIT6スコア60.0点)から日常生活にほとんど、もしくは全く影響が出てないレベル(HIT6スコア42.3点)まで改善した」とのことです。2)
また、「術前にまぶたが下がっている人ほど、手術後に頭痛が改善した」というデータも出ています。2)
つまり、「眼瞼下垂がひどい人ほど、術前の頭痛が手術により改善した」ということになります。
手術方法により症状の改善度合いは違う?
まぶたを上げる筋肉は「挙筋腱膜」「ミュラー筋」の2つがあり、「どの筋肉を手術するのかという視点から、大きく3つに分けることができます。
ミュラー筋を縫い縮める術式よりも挙筋腱膜を縫い縮める術式の方が頭痛が改善した、というデータが出ています。2)
手術時間が短いために昨今大流行しているミュラー筋タッキング(ミュラー筋のみ縫い縮める術式)は「頭痛改善効果が若干少ない」という結果になっています。
「眼瞼下垂手術により頭痛が必ず改善する」わけではない
といいましても、個人差があります。
私が手術した患者さんも、全員が「頭痛が術後に改善した」わけではありません。
当院では、そのようなことに関してもしっかりとお伝えした上で、「顕微鏡を使用した、機能も見た目も改善を図る手術」を行っております。
参考文献
1) Matsuo K et al.Desensitization of the Mechanoreceptors in Müller’s Muscle Reduces the Increased Reflex Contraction of the Orbicularis Oculi Slow-Twitch Fibers in Blepharospasm..M.Eplasty. 2014
2) Bahceci Simsek I ,Association of Upper Eyelid Ptosis Repair and Blepharoplasty With Headache-Related Quality of Life..JAMA Facial Plast Surg.19(4):2017.293-297.
3) Mokhtarzadeh A et al. The bleph and the brain: the effect of upper eyelid surgery on chronic headaches. Ophthal Plast Reconstr Surg..2016.
院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。