今回は、眼瞼下垂の手…
眼瞼下垂の手術 費用はいくらかかる?──保険と自費の違いを徹底解説
「もしかしたら私は眼瞼下垂かもしれない……」
そう思って検索をはじめると、真っ先に気になるのが「手術費用」ではないでしょうか。
インターネットでは「眼瞼下垂は保険で治療できる」「自費のほうが仕上がりがきれい」といった情報があふれていますが、果たしてどれが本当なのでしょうか?
本記事では、眼科専門医として年間約1,800件前後ののまぶたの手術を行っている立場から、眼瞼下垂手術の保険・自費の違いについて、機能面・美容面・費用面の3つの視点でわかりやすく解説します。
眼瞼下垂とは?
眼瞼下垂とは、まぶたを引き上げる筋肉(眼瞼挙筋やミュラー筋)や腱膜が加齢や物理的刺激などで伸びてしまうことで、まぶたが正常な位置よりも垂れ下がる状態を指します¹。
ハードコンタクトレンズの長期使用やまぶたのこすり癖、アレルギー性疾患もリスク因子です。見た目の問題だけでなく、視野障害や頭痛、肩こりなどの機能的な問題を引き起こすケースも少なくありません。
眼瞼下垂の自覚症状
眼瞼下垂では、次のような症状がよく見られます。
- 視界の上半分がまぶたで遮られる
- まぶたが重く開けづらい
- 額にシワを寄せて眉を上げる癖がつき、肩こりや頭痛を引き起こす
- 「疲れてる?」と周囲に言われる
これらは、視野を確保するために無意識に頭を後ろに反らせたり、額の筋肉を使ってまぶたを持ち上げようとする代償姿勢によるものです。こうした症状は手術によって大幅に改善することが複数の研究で報告されています² ³。
眼瞼下垂の治療
現在のところ、眼瞼下垂を根本的に治すには外科的手術しかありません。注射や筋トレなどで改善するという科学的根拠は乏しく、効果は限定的です。
一般的な手術法は「眼瞼挙筋前転術」「眼瞼挙筋短縮術」「ミュラー筋タッキング」で、皮膚を切開し、ゆるんだ挙筋腱膜を瞼板に縫い直してしっかり持ち上げる方法です。必要に応じて余分な皮膚や脂肪も除去します。
軽度の下垂には切開を伴わない「埋没法」が用いられることもありますが、後戻りしやすく適応は限られます。また、先天性や重度の場合には「前頭筋吊り上げ術」が選択されることもあります。
当院では顕微鏡を使用して0.1mm単位で調整を行い、腫れや左右差を最小限に抑えつつ、機能と見た目の両方に配慮した手術を行っています。
大幅に改善することが複数の研究で報告されています² ³。
眼瞼下垂の手術で保険が適用されるのか?
保険診療の適用条件は、「日常生活に支障を来すかどうか」によって決まります。
次のような基準が用いられることが一般的です⁴:
判定指標 | 代表的な基準値 | 補足説明 |
---|---|---|
MRD-1 (瞳孔中心〜上まぶた縁) |
2mm以下 | 機能障害とみなされる閾値 |
上方視野狭窄 | ゴールドマン視野計で20°以内 | 健保審査で重視される客観的所見 |
自覚症状 | 視野障害・頭痛・肩こり | 問診・診療録への記載が求められる |
保険診療の費用モデル
手術点数は「K219 眼瞼挙筋前転法」で片眼7,200点(=72,000円)¹。自己負担3割なら約21,600円です。術前検査や処方薬を加えると、両眼で45,000~60,000円前後が一般的な目安です²。
自費診療の費用モデル
両眼:44万円(かつむらアイプラストクリニック)
保険での手術はきれいに仕上げてもらえないのか?
よくいただくご質問ですが、結論は「医師の技術と治療方針次第」です。
保険診療は「機能が障害されている」と判断で来た際に適用されます。他クリニックでは当然のことではありませんが、当院では顕微鏡を用い細かく調整を行い、見た目が美しい、左右差の少ない仕上がりを当然のこととして目指しています保険診療の患者さんでも美容的満足度が高いという研究報告もあります⁵。
ただし、術後の審美的な調整手術(左右差調整・二重の幅の調整など)は保険診療では対応できない場合があり、その場合は自費診療の選択が必要です。
自費診療の場合は。初回手術はもちろんこと、術後1年以内の審美的な調整手術も初回費用の中に含め、対応しています(かつむらアイプラストクリニックの場合)。
まとめ
- 費用面:保険診療なら両眼5~6万円、自費は30万~50万円前後
- 機能面:視野障害・頭痛・肩こりなどの症状があれば保険適用の可能性あり
- 美容面:医師の技量により、保険でも自然な仕上がりにできるが、美容的調整は自費が必要
当院では、保険・自費を問わず、患者様一人ひとりの状態とご希望をふまえて、機能と審美の両立を目指した治療を提供しています。まずはお気軽にご相談ください。
引用文献一覧
- ¹ 日本形成外科学会『眼瞼下垂症診療ガイドライン』(2017年)
- ² Bahceci I, Simsek I. Association of Upper Eyelid Ptosis Repair and Blepharoplasty With Headache-Related Quality of Life. JAMA Facial Plast Surg. 2017;19(4):293–297.
- ³ Nichols KK et al. An Update of Diagnostic and Management Algorithms for Acquired Blepharoptosis. Optom Vis Sci. 2022;99(3):230–240.
- ⁴ American Academy of Ophthalmology. Functional Indications for Upper Eyelid Ptosis and Blepharoplasty Surgery: Evidence Report. Ophthalmology. 2011;118:2510–2517.
- ⁵ Richards HS et al. Patient reported psychosocial functioning following successful ptosis surgery. Eye (Lond). 2022;36(8):1651–1655.
院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博
- 当院は、私の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)や目もとの審美手術を中心に診療を行っています。 様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。 また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。