埋没法は、まぶたを切…
眼瞼下垂やクマ取りなど、まぶたの手術と年間約2,000件向き合ってきて思うこと ~開院5年で変わったもの、変わらないもの~
- 公開日:2026年8月25日
- 院長コラム

2021年9月1日、まぶたの手術と涙の治療を専門とする「かつむらアイプラストクリニック」は、JR浦和駅西口に開院しました。
開院を決めたのは2020年9月頃。まさにコロナウイルスが猛威を振るっていた時期です。建物の入り口では必ず消毒をし、マスクを外すことに誰もが神経質になり、「どんな未来が待っているかわからない」と感じていた頃でした。そんな時期に、私は開業を決めました。
あれから5年が経ちました。1年目は1,000件前後だった手術件数は増え続け、現在ではまぶたの手術が年間約2,000件、涙道の手術を合わせると年間2,000件以上を執刀するようになりました。医師は私一人ですので、限界に近い件数だと思います。
この節目に、まぶたの手術と向き合い続けてきた一人の医師として、いま感じていることを率直に書いてみようと思います。いつもの解説記事とは少し違い、私自身の考えを綴った記事です。少し長くなりますが、お付き合いいただければ幸いです。
なぜ開業したのか――「まぶたの専門家」になるまで

開業の理由はいろいろありますが、ひとつは、自分の経験値が指数関数的に上がってきたことでした。
修行していた浜松の病院では、手術件数は2年間で200件程度でした。手術日が決まっており、執刀できる件数に制限があったことと、慣れていないため1件の手術に非常に長い時間がかかっていたことが原因です。決して天才肌ではない私に、指導してくださった先生方が根気強く手術の基礎を叩き込んでくださいました。これは私の一生の財産です。
その後、縁あって埼玉県北部の「あだち眼科」に勤めることになりました。基本は白内障や緑内障、網膜疾患などを診る、いわゆる「眼科の先生」としての勤務でしたが、それまで専門の医師がいなかったこともあり、まぶたの病気で困っている患者さんがたくさんいらっしゃいました。一つ一つの手術と全力で向き合ううちに、年間500件くらいの手術を執刀するようになりました。足立院長をはじめ、スタッフの皆さんが遅くなる手術に毎回最後まで付き合ってくださったおかげで、この時期に手術の技術が大きく向上しました。
途中からは、大宮の眼科でも専門外来を担当するようになりました。そこでは完全に専門分野のみを診る、いわば「助っ人」の立場です。毎回100%の結果を求められる環境で、手術に対する準備や心構えを学び、良い意味で手術というものへのプレッシャーを感じるようになりました。「プロフェッショナルでいることの大事さ」を学ばせていただいた時期です。
ここまでの手術は、すべて病気を治す「保険診療」でした。
しかし手術件数が増えるにつれ、様々な症例を経験するようになります。自費手術後の修正、二重切開、そして機能的には問題がなく「美容目的の手術を保険で受けたい」とご希望される方々。眼瞼下垂手術は二重切開とほぼ同じ手術といって差し支えありませんし、保険手術後の修正もかなり数多く行っていましたから、技術的にはこれらの自費手術を執刀することは十分にできるようになっていました。
ただ、これらは保険診療で受けることができません。「保険の手術しか執刀しない」という理由だけで断れば、患者さんは他の施設で手術を受けることになります。当時、自費手術を行う施設はほぼ美容外科に限られていました。多くの施設が正しい診療をしている一方で、機能的に問題のある手術が行われているケースも耳にしていました。
その現状を知っていた私は、「保険でも自費でも、機能的にも審美的にも正しい手術を提供できる存在になりたい」と強く思い、群馬や銀座の美容クリニックでも勤務し、手術に加えてレーザーやボツリヌス毒素注射、ヒアルロン酸注入など美容の施術を学びました。この頃には年間700件程度の手術と向き合うようになり、自分が理想としていた「まぶたの専門家」に近づいていました。
こうして徐々に知識と技術が上がってきたので、自分の理想通りの環境を整えるために開業したのです。
20年前に言われた言葉と、いま業界に感じていること

研修医の頃、私は銀行でアナリストをしていた知人に「美容外科医になりたい、美容の手術をしたい」と話したことがあります。「美容の医師が増えているらしい」という話の流れで、その知人はこう言いました。
「世間からあまり良く思われない職業は、そんなに増えないと思うよ」
20年ほど前のことです。いまでもはっきり覚えています。
そのとき私が感じたのは、「真面目な美容医療をやりたいのに」という悔しさでした。美容医療というだけで、お金目的のいい加減なものと見られているのだと感じたからです。
現実には、初期研修を終えてすぐに美容医療へ進む、いわゆる「直美(ちょくび)」と呼ばれる医師が増え、美容の施設も増えました。知人の予想は外れたわけです。
ただ、実際に業界に入ってみると、あのとき悔しく感じた「そういう要素」が多分にあることも、残念ながら事実でした。安い価格で広告を出しておいて、実際に受診すると高額な施術を勧める。すぐに元に戻ってしまうような、いい加減な術式を平気で勧める。明らかにまぶたを持ち上げる筋肉が弱り、眼瞼下垂になっているのに、なぜか埋没法の二重を勧められる――眼瞼下垂は埋没法では上がりません。勧めた医師がそれを分かっているのかいないのかは分かりませんが、明らかにおかしいことをはっきり勧め、しかも高額な費用を請求する、という流れは確かに存在します。
▶ 当院が埋没法を行わない理由は、埋没法や目尻切開での二重整形を行わない理由|後悔しないクリニック選びのポイントで詳しく解説しています。
一方で、保険診療と自費診療の線引きにも違和感を覚えることがあります。当院を受診された患者さんから、他院で「保険診療だから見た目の希望は聞けないと言われた」「自費だからこそ丁寧に手術ができると言われた」という話をしばしば耳にします。何かトラブルがあったときに「これは自費の手術ではありませんから」と言われた、という話も聞きます。
つまり、保険であることを、手術の仕上がりや技術の差に対する「言い訳」として使ってしまう風潮があるのです。私はそれがとても嫌です。
もうひとつ、この5年で強く感じるのはSNSの過剰さです。技術的にそれほど高いレベルを必要としないヒアルロン酸注入やボトックスなどを中心に、SNSでの発信を軸に患者さんを集める流れが、以前よりずっと増えたと思います。発信そのものが悪いわけではありません。ただ、手術の技術や結果よりも見せ方が先に立つ空気には、危うさを感じています。
保険でも自費でも、すべての症例でベストを尽くす

こうした業界の中で、私が誇りにしているのは「保険でも自費でも、すべての症例で自分のベストを尽くしている」ことです。
保険か自費かの適用は適切に見分けたうえで、どちらであってもベストを尽くす。保険の手術で積み重ねた経験を審美の手術に活かし、審美の手術で磨いたセンスを保険の手術に戻す。この双方向の循環によって、自分の技術を高めることができていると思います。
「きれいに直したい」という気持ちに、保険と自費で一切の差はありません。手術に臨むメンタリティを使い分けることはない。これは開院から5年間、まったく変わっていない部分です。
この5年で変わったこと――自費手術の割合と、術前の説明

では、1年目と比べて何が変わったのでしょうか。最も大きいのは、自費手術の割合です。
開院1年目は他のクリニックからのご紹介が多かったこともあり、患者さんの中心はご年配の方で、そのほとんどが保険適用の手術でした。それが症例数を重ねるにつれ、自費の件数も少しずつ増えていきました。
その増え方には、はっきりとした流れがあります。たとえば保険で眼瞼下垂の手術を受けられたご年配の方が、結果に満足してくださり、「実は目の下のクマも気になっていた」とあらためてクマ取りの手術をご希望される。そうした形で自費の手術につながっていくケースです。
▶ クマ取り(表ハムラ・裏ハムラ・脱脂)の術式の選び方については、目の下のたるみ・クマ取り手術の解説記事をご覧ください。
もうひとつの要因は、経験値の蓄積です。以前よりも、手術のリスクや得られる効果を術前の段階で的確にお話しできるようになりました。その結果、次の手術を希望される方が増え、現在の自費手術の増加につながっています。
ただし、これは決して「儲けたい」ということではありません。保険が適用できないもの、あるいは審美的な要素が強いものを求める患者さんが増えてきたから、自費の手術も増えている。それだけのことです。保険が適用できるはずなのに自費しか勧めない、ということはしていません。実際、いまでも件数としては保険の手術のほうが多い状態です。
変わらないこと――「切る手術」を選ぶ理由

一方で、5年間まったく変わっていないものもあります。先ほど述べたメンタリティに加えて、もうひとつは「切る手術を選ぶ」という判断です。
いまは「切らない手術」が流行しています。眼瞼下垂にしろ、クマ取りにしろ、切らない術式が広がっており、「切らない方法はできませんか」とご相談を受けることもよくあります。一部の症例ではそれも良い選択だと思いますし、良い手術であれば当院でもご提案することがあります。たとえばクマ取りの手術をまぶたの裏側から行う裏ハムラ(経結膜的下眼瞼形成術)がそうです。ただし裏ハムラの場合、皮膚を切る表ハムラ(経皮的下眼瞼形成術)と比べて、どうしてもクマが残る可能性、特に内側のクマが残る可能性がありますので、そこは必ずリスクとしてお話ししています。
総じて言えば、再発率の低さと完成度の高さという点では、切る手術のほうが勝っていることが多いのが実際です。二重切開、眼瞼下垂、逆さまつげ、クマ取り、前額リフト(おでこリフト)、いずれについても、私が「切ったほうが良い」と考えるものについては切開を選びます。埋没法のように、そもそも術式として良くないと私個人は感じているものをお勧めすることはありません。
一見すると時代遅れに見えるかもしれません。しかし、完成形が100点に近いものを出しやすい、長期的に後戻りしにくい、そうしたことを総合的に考えたうえでの選択です。これは古いのではなく、自分の中では絶対的な軸として持っているものです。
そのため、当院の手術は、切らない術式と比べると腫れが強く出る可能性があります。けれども、腫れを抑えるために手術の工程を端折るのではなく、自分の技術を高めることで、きちんとした手術をしながら腫れを抑えていく。そちらのほうが最終的に患者さんのためになると考えています。当院で全手術を手術用顕微鏡下で行っているのも、この考えに基づいています。
6年目に向けて

開院から5年。自分の手術件数は増え、自費手術の割合も変わり、スタッフも増え、業界の空気も変わりました。
それでも変わらないのは、保険でも自費でも一件一件にベストを尽くすこと、そして自分が良いと信じる術式を選ぶこと。この2つは、6年目も、その先も変えるつもりはありません。
患者さんからよく聞かれる「ダウンタイムはどれくらいか」「なぜ待ち時間が長いのか」「手術が失敗することはあるのか」という3つの質問については、続きの記事で正直にお答えしています。
▶ 患者さんからよく聞かれる3つの質問に、正直にお答えします
まぶたのことでお悩みの方は、どうぞご相談ください。
かつむらアイプラストクリニック 院長 勝村宇博
- 記事監修
- 院長 勝村宇博

院長 勝村宇博
- この記事は、日本眼科学会認定の眼科専門医である勝村宇博院長が執筆・監修しています。当院は、勝村院長の専門分野であるまぶた(目もと)の手術や涙(ドライアイ、涙道閉塞)の治療を専門とした眼瞼下垂(がんけんかすい)やクマ(目の下のたるみ)、目もとの審美手術を中心に診療を行っています。様々な学会に所属し、機能面と審美面両面とも妥協せずに治療を行っております。また、レーザー治療など新しい治療も取り入れております。


